昨秋発売になり、発売即重版となった『女は、髪と、生きていく』。本書はヘアライターとして20年近く活躍してきたNo.1ヘアライター・佐藤友美(さとゆみ/Twitter:@SATOYUMI_0225)さんの最新刊になります。髪の本であるにも関わらず、「泣きました」「人生のスイッチが入りました」「美容師として全同業者とお客さんに読んで欲しい!」と発売直後から反響続々の本書。テレビや雑誌、新聞、ウェブで紹介され続けています。今回は髪色について。ビリー・アイリッシュの鮮やかな緑色など、最近はより選択肢が広がっている髪色ですが、果たしてどのように印象を左右するのでしょうか。
なぜ就活で黒髪にするのか
ヘアカラーの話をしましょう。髪色にも、「性格」があります。髪色で感じる性格は、多分に文化的な背景があります。
就職活動のときに、(残念ながら)黒髪にしなくてはならない空気があるのは、黒髪に真面目そう、誠実そうという古くから刷り込まれたキャラ設定があり、金髪に遊んでいそう、チャラチャラしていそうというキャラ設定があるからです。
昔、今ほどカラーリングが一般的じゃなかった時代、オキシドールやコーラを使って髪を脱色するのは、ちょっと不良っぽい子たちでした。今でも、この感覚が残っていて「黒髪はスレていない証」「金髪は遊び人」のようなキャラ設定が残っているのです。
私は、ヘアスタイルにもカラーにも、多様性が広がってほしいと思っています。
昔はデニムをはくと「作業着で人前に出るなんて失礼な」と言われました。ピアスをすると「親が産んだ体に穴をあけるなんて」と言われました。髪色に関しても「信じられないかもしれないけれど、昔は校則で髪色が決められていたんだよ」という時代がくると願っています。
と、話が脱線しましたが、その願いは願いとして、今現在、特定の髪色が人に与える印象があることは、否めません。それを踏まえた上で、髪色が持つ性格について話をします。
SATCの4人の髪色が持つ意味
世界的なベストセラー『ヘア・カルチャー もうひとつの女性文化論』には、「女性の髪色は、その人の印象をコントロールする記号である」と書かれています。
たとえば、アメリカではマリリン・モンローやマドンナに象徴されるブロンドヘアはセクシーな女性を示す記号、ブルネット(黒髪に近い茶色)の髪は保守的で良妻賢母の記号、赤毛は変わり者を表す記号なのだそうです。
『赤毛のアン』という有名な本がありますが、あのタイトルは、アメリカの人にとっては「変わり者の女の子のお話」という意味を感じるタイトルなのだとか。
なるほど、そう思って海外のドラマを見ると、たしかに、髪色が記号的な役割を果たしていることがよくわかります。
たとえば、ニューヨークの女性の恋愛と仕事について描かれたドラマ、「Sex and the City」に出てきた4人の女性は、ブロンドが2人(キャリーとサマンサ)、ブルネットが1人(シャーロット)、赤毛が1人(ミランダ)でした。
ブロンドの2人は、まさにセクシー担当。キャリーは恋愛コラムニストだし、サマンサはセックス依存症ともいえるほどの男性好きとして登場します。ブルネットのシャーロットは「結婚するまでバージンでいなくちゃ」という保守的な女性として描かれていますし、赤毛のミランダは男性と肩を並べてバリバリに活躍する弁護士で、個性的な役柄です。
まさに、髪が記号的な役割を果たしていることがわかります。
ここでポイントなのが、実は、マリリン・モンローも、マドンナも、「Sex and the City」のブロンドの2人も、全員地毛の色ではないということです。彼女たちは、「髪色が持つ記号性=性格」をうまく使って、自分の立ち位置や、キャラをわかりやすくしていたのです。
もとはといえば、髪色が持つ記号性は、人種の違いからスタートしていたのではないかと想像されます。でも髪色を自分で好きに選べる今の時代は、髪色の持っていた「記号性=性格」は、戦略的に使いこなすものになっています。
欧米ではとにかく髪の持つ第一印象を大切にします。ヘアカラーに関しては、自分専用のレシピを持っている人もたくさんいます。引っ越しても、サロンを変えても、そのレシピを渡して施術してもらうのです。このように、ヘアカラーを戦略的に使いこなすやり方は、ぜひ、お手本にしたいものです。
そして、ヘアカラーには、まずは、明度(明るさ)の差があります。
美容院にある、ヘアカラーチャートを見たことがある人もいると思いますが、数字レベルが大きいほど、明度が高く明るくなります。一般的に、明度が高くなるほど華やかで明るい印象になります。明度が下がるほど、落ち着いた印象になります。金髪レベルまで明るくなると、奔放で常識にとらわれない印象になるでしょう。
まずは、明度の差で印象が変わると覚えておいてください。
「外国人風カラー」には赤みがない
色みでいうと、大きく分けると寒色系と暖色系があります。寒色系は、アッシュ、グリーン(マット)など。暖色系は、ピンク、オレンジ、レッドなど。
だいたいの場合は、こういった色味が、ブラウンと混ぜられて、アッシュブラウン、ピンクブラウンなどといった色で処方されます。
美容院で「外国人風カラー」などと打ち出されている色は、ほとんどが寒色系のカラーを指します。欧米人の髪色には赤みが少ないので、赤みを取り除いた寒色系のカラーをすると、それっぽい色になるのです。寒色系のカラーは、クールな雰囲気や、涼しげな雰囲気が出やすくなります。
一方、暖色系のカラーは、あたたかみや、やわらかさが出やすくなります。ピンクブラウンやオレンジブラウンといっても、ピンクやオレンジはほんのり感じる程度です。
グレイヘア=白髪のまま染めないヘア
ほんの数年前まで、シワやたるみや入れ歯などのように、白髪は加齢を表す記号でした。
「白髪がある=年齢を重ねている」ことであり、それを隠したいなら白髪を染める、諦めるならそのままにするというのが、一般的な選択肢でした。
ですが、この数年、白髪に対する価値観は大きく変わりつつあります。
ありのままの髪色で過ごしていいじゃないかという「グレイヘアブーム」が起こり、白髪の持つ「性格」が大きく変化しはじめました。
これまでは、「染めるのを諦めたから白髪」というネガティブな存在だったのが「あえてありのままの自分を見せる白髪」というポジティブな存在にも捉えられるようになったのです。
このように、時代や文化の変化によって、髪型や髪色の持つ「性格」は少しずつ変わっていくことがあります。
本書『女は、髪と、生きていく』を参考に、春に向けて新しい髪色にチャレンジしてみてるのはいかがでしょう?
女は、髪と、生きていく
NO.1ヘアライター・佐藤友美さんの最新刊『女は、髪と、生きていく』試し読み。
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