はじめて物語を書いたのは、幼稚園の年長組の頃だった。主人公はウサギで、読者はわたしとお母さんだけだった。
次に記憶しているのは小学校四年生のとき。国語の授業で「物語を作る」という課題があった。体が小さくなってしまった主人公と近所の家で飼われていた犬のリリーが冒険をする話だった。担任の先生が、ものすごく褒めてくれて大きな花丸をくれた。思えば、それがはじめて他者に「物語を読んでもらった」という経験だったかもしれない。
小学校高学年になると、友達と漫画を描きはじめた。当時、『だれでも書ける漫画入門』みたいな本が流行っていたのだ。しかしわたしはあんまり絵が上手くなかった。
中学三年のときに作曲が趣味の友達が出来て、その子に歌詞を書いてくれと頼まれた。それで詩を書くようになった。作詞は文字数が決まっていて難しくて、書いていてあんまり楽しくなかった。それで、散文詩みたいな、長さの制限のない物語性のある詩を書くようになった。
高校三年生のとき、ラジオ局主催のショートストーリーコンテストがあるということを知った。規定は、原稿用紙三十枚以内、それだけだった。それまでに書いていた散文詩を三つまとめてみた。原稿用紙九枚になった。送ってみた。そうしたら、佳作を貰った。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。