ブランドプロデューサー柴田陽子さんの新刊が2月20日に発売しました。
彼女の人生に迫り、成功の秘訣や仕事術を、ひも解いたのが、『勝者の思考回路 成功率100%のブランドプロデューサーの秘密』。
柴田さんは、名だたる企業のトップから指名されるブランドプロデューサーです。
その活躍は非常に華やかで、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)でも話題になりました。驚くことに、柴田さんは、独立して以来、「仕事をとるための営業をしたことがない」そうなのです!
それでも仕事の依頼が次々と寄せられています。そして着実に実績を残してきました。その秘訣を明かした本書より、試し読みをお届けいたします。
第1章 「勝者の思考回路」の基本より
「何をもって『結果』とするのか」に、徹底的にこだわる。
□ 一度も“営業”をしたことがないのに、依頼が絶えない理由。
□ 仕事のたびに、「『結果』をどう定義するか」について、徹底的にこだわる。
□ クライアントの満足度を上げる近道は、プロジェクトの最初に、「結果」を丁寧に、そして具体的に共有すること。
□ 結果にこだわると、評価のポイントが増えて、人材育成がしやすくなる。
□「結果にこだわる」人は、思いやりのある人だ。
□ 本当のリーダーは、数字ではないところで「結果」にこだわっている。
□ 結果が出なくて落ち込んだときは、それが失敗でなく、学びだと考える。
私は、プロジェクトに取り組むとき、非常に細かいところまでこだわり抜いて「結果」を設定するのですが、そのおかげでクライアントから高く評価されていると思えることが多々あります。どうもほかの人は、たいていそこまではせず、「結果をどこに設定するか」についてちゃんと考えていないようなのです。
シバジム創業以来、一度も“営業”をしていないのに、私のもとに仕事が絶えず入ってくるのは、私が「結果」に徹底的にこだわっていることも、ひとつの要因だと思っています。
といっても、ここで述べている「結果」というのは、単なる「売り上げ」や「数字」のことだけではありません。依頼をくれたクライアントが、どんな結果を求めているのかを、できるだけ細かく設定・定義し、そこまでにたどりつくための道筋を考えるということです。
たとえば、健康食品のメーカーから、「『このサプリで3キロ痩せる』という売り込みをしたいので、そのためのストーリー作りをしてほしい」というオーダーがあったとしましょう。
さっそくモニターを集めて体験してもらい、成功例を集めればいいのだ、というのは、誰でも思いつくことでしょう。しかしその前に、クライアントがどんな「結果」を求めているのかのヒアリングが必須です。
同じ「3キロ痩せる」という結果に向かっていても、
1)「10日で必ず痩せる」を売りにしたいのか、
2)「リバウンドしない体を作りたい」人のためのサプリなのか、
によって、私たちのやるべきことはまったく違ってくるからです。
前者であれば、絶食に近い生活をして、体重計に乗る前にはサウナに入り(サウナで体重を落としても、一時的なもので、翌日には戻っていますが)、とにかく「3キロ減らす」という結果に執着する、という方法をモニターにやってもらうのがいいのかもしれません。
後者であれば、3か月かけて生活習慣を変え、食事のとり方も変えて、3キロ痩せた体を定着させるという取り組み方をしてもらうほうがいいでしょう。
ただ実際は、クライアント自身が、どちらのアプローチで商品を展開したらいいのか迷っているからこそ仕事の依頼をしてくる、ということが多いものです。その答えを見つけるお手伝いをするのが、ブランドプロデューサーの仕事でもあります。
また、依頼した時点では「これで行く」と決めているように見えても、実際にリサーチした後で、そのアプローチは好ましくなかったので変えたい、ということもよくあります。
ですから、できるだけ細かく、具体的に、複数の「結果」を想定・定義して、クライアントが一番ハッピーになれる方法を見つけ出してあげたい、と私は考えるのです。
先の依頼の場合、私だったら、2つのパターンを最初から「結果」として設定して、モニターを二手に分けて指示を出し、それぞれのストーリーを作って、クライアントに見せます。そして、どちらのストーリーで行くのがベストなのか、どちらのストーリーのほうが商品のためになるのか、導いていきます。
街づくりのような大きなプロジェクトでも同様です。「お金をたくさん落としてもらえる商業施設を作る」ことが第一目的なのか、「住んでいる人たちの交流の場を作る」ことが第一目的なのか、それによって、力を入れるべきところ、見るべきところはまったく変わってきます。また、売り上げ〇〇億の商業施設を作りたいのか、坪効率で測りたいのか、はたまた周辺住宅の土地の値段でその施設の価値を測るというやり方もあるかもしれません。
ちなみに、「結果」として定義できるものが、5つあれば5つ、10あれば10、徹底的に考えて、私は提示します。
私の経験上、「結果」の設定を細かく丁寧にすればするほど、クライアントからの感謝も得られます。プロジェクトの目的が整理され、無駄がなくなり、そして何より、現段階でどの程度まで目的を達成しているのかが、よくわかるからでしょう。
「この結果は、求めていたものじゃなかった」
「この結果に向かうのには、予算がかかりすぎる」
「この結果は好ましいが、まだ道半ば、50点しかつけられない」
など、「明確な評価」ができるので、次に向かうための目標も立てやすいのだと思います。また、人を褒めるポイントも見つかりやすいので、人材育成にも効果的なのかもしれません。
これは、“逆の立場”=“自分が依頼する側”になっても言えること。
「結果」をきちんと共有できると物事がうまくいく、ということがわかっているのであれば、自分がスタッフに仕事をお願いするときも、「結果」を見やすくしたほうがいいのは当然です。
ある業務について、「これやっておいて」とだけ言う上司のAさんと、「これを夜の8時までにやって、できた時点でメールして」と言う上司のBさん。
当然、Bさんのほうが、人を育てるのが上手です。Bさんは、評価ポイントの数を、明確に増やしているからです。
Aさんの部下も、Bさんの部下も、同じくその業務をこなしたとしましょう。Aさんは、「できたかどうか」という1点についてのみ、部下を褒めることができますが、Bさんは「できたかどうか」「8時までにできたのか」「メールで報告ができたか」と、褒めるポイントが3点あります。
さらにBさんの場合は、できたけど10時を過ぎてしまった。できたはずなのに、メールの報告の内容がわかりにくかった。といったことがあれば、具体的に注意したり教えたりすることもできます。
私はプロジェクトのリーダーとして、また会社の社長として、
「どうやったら人を褒めることができるか」
「どうやったら次の改善につなげることができるコミュニケーションになるか」
ということを常に意識しています。いいチームワークで、仕事を気持ちよく前に進め、いい結果を出すには、人材が何より大切だからです。
その人材を見るときに、私が最重要視しているのが「結果にこだわる人」か否か。
とにかく結果にこだわる人であってほしいのです。
もっとも、私の考える「結果にこだわる人」は、単純に売り上げの数字に執着するタイプではありません。優しい人であり、部下思いでもあり、リーダーとして正しい人。要するに、そこでやるべき大切なことがわかっている人のことです。
人はみな、それぞれ違う価値観で生きています。だからこそ、やるべきことをひとつずつ丁寧にメンバーに説明し、「結果」を定義することで、前に進みやすくなるのです。
ちなみに、どんなに準備し、完璧にしたつもりでも、結果が出ないということもあります。
そんなときは誰でも落ち込んで「もう駄目だ」と思うでしょう。しかし、きちんと「結果」に向き合った上でのことなら、それは「失敗」でなく「学び」です。
しばらく暗い気持ちで時間を送らねばならないかもしれませんが、「次につながる感想」が、自分の中で出てくるまで頑張ってみましょう。
私は以前、結果が出なくて落ち込んでいたとき、「あれ? イチローだって打率は3割だ」ということに思い至りました。そして、今回の結果がすべてではなく、今回の失敗を学びとして、次に頑張ろうという気持ちになれました。
「落ち込んでいる時間はもったいない。失敗してしまったときのことを振り返り、改善点を見つければ、次に成功する可能性が高まる」と。
どんな苦境に立たされても、必ず次に向かえるようになるまで考え続けるというのが、私の思考の特徴です。
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「結果」にこだわることでクライアントも評価しやすくなり、さらに次にも生かせます。結果が伴わなかった時のことまで柴田さんは教えてくれていて、とても心強いですね。
次の更新は3月5日(木)。お楽しみに。
勝者の思考回路
柴田陽子さんの『勝者の思考回路 成功率100%のブランドプロデューサーの秘密』が刊行されました。
柴田さんは、名だたる企業のトップから指名されるブランドプロデューサー。
その業績は非常に華やかで、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)でも話題になりました。
なんといっても驚くべきは、柴田さんは「独立して以来、仕事をとるための営業をしたことがない」ということ。
それでも仕事の依頼が次々と寄せられています。そして着実に実績を残してきました。
そんな彼女の人生に迫り、成功の秘訣を、ひも解きます!