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美しい暮らし

2020.03.05 公開 ポスト

イカレポンチの回顧録#5

性の目覚め矢吹透

中学校に入学した時、僕はクラスの男子の中で一番背が低かった。

当時の身長は、155センチくらいだったと思う(ちなみに、現在の僕の身長は175センチである)。

体の成熟が遅かったのだろう。

第二次性徴を迎えたのがいつ頃だったのか定かな記憶がないが、中学の音楽の授業の混声合唱の際、男子の中で僕ひとりがずっと、ソプラノのパートで歌っていたことを思い出す。

それは、僕のボーイ・ソプラノの歌声を評価した音楽教師の判断で、ソプラノ・パートのソロの部分まで任され、その特別扱いは、僕にどこか誇らしさを感じさせたのも確かだが、恥ずかしさもあった。

体が小さいこと、成長が遅いことは、僕にとってコンプレックスだった。

周囲の男子生徒と比べて、男らしさにおいて劣る、自分自身が嫌だった。

中学に入る前後には、僕は自分の性的指向を、明確に把握し始めていた。

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矢吹透『美しい暮らし』

味覚の記憶は、いつも大切な人たちと結びつく——。 冬の午後に訪ねてきた後輩のために作る冬のほうれんそうの一品。苦味に春を感じる、ふきのとうのピッツア。少年の心細い気持ちを救った香港のキュウリのサンドイッチ。海の家のようなレストランで出会った白いサングリア。仕事と恋の思い出が詰まったベーカリーの閉店……。 人生の喜びも哀しみもたっぷり味わせてくれる、繊細で胸にしみいる文章とレシピ。

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美しい暮らし

 日々を丁寧に慈しみながら暮らすこと。食事がおいしくいただけること、友人と楽しく語らうこと、その貴重さ、ありがたさを見つめ直すために。

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矢吹透

東京生まれ。 慶應義塾大学在学中に第47回小説現代新人賞(講談社主催)を受賞。 大学を卒業後、テレビ局に勤務するが、早期退職制度に応募し、退社。 第二の人生を模索する日々。

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