体内速度はものすごいのに丸山裕子（イラストレーター）

友人は古いFIAT500という車に乗っています。ルパン三世の車と言えば、わかる方も多いかもしれません。外見も内装もクラシックでスタイリッシュでとても素敵な車です。

しかし、古い車なので、ウィンカーもシートベルトもありません。ドアは前開きで、鍵も窓も当然手動です。もちろんエアコンなんてありません。トトトトト……とかわいらしい音をたてて一生懸命走ります。最高時速は70～80キロだそうです（これはエンジンの仕様によるようです）。

出かけるときにまず考えなければならないのは、車の能力です。このコはあの山を登れるのか、このコでその距離を往復できるのか。「ムリ」となれば、近所のカーシェアで車を借りて出かけるというのですから、車好きの人の心理というのはわからないものです。

一方で、このコラムを書くために調べたところ、現在最速のスポーツカーは時速490キロまで出るそうです。

車の速度にこんなにも違いがあるように、人にもそれぞれ速度の限界があるように思います。走る速さではなく、動作の素早さという意味で。体内時計ならぬ体内速度とでもいうのでしょうか。そして、私は古いFIAT500です。