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大便革命 腐敗から発酵へ

2020.03.10 公開 ポスト

9つ超えたら要注意!自分でできる「腸年齢」チェック辨野義己

理想の大便は、理想の腸から。

まだトイレットペーパーの品薄状態が続いているところがあるようですが、この機会に「良い大便」について考えてみませんか?

うんち一筋45年の「うんち博士」、辨野(べんの)先生(本名です!)による幻冬舎新書『大便革命』から、「腸年齢」についてをお届けします。

※「腸年齢」チェック項目は本記事の3つめの小見出し「自分の『腸年齢』の調べ方」内にあります

(写真:iStock.com/Andranik Hakobyan)

「腸年齢」と実年齢のズレ

ヒトは赤ちゃんから成長して大人になり、やがて老いていくにつれ、腸内環境も変わっていきます。その変化をわかりやすく示す指標が「腸年齢」です。

実際の年齢と腸年齢は一致するのが普通ですが、じつは日本人の腸年齢はいま、実年齢に比べてとても高くなっています。まだ若いにもかかわらず、腸内は「老人」という人が多いのです。以前、あるテレビ番組のために私たちが調査をしたところ、実年齢20代の人の腸年齢が平均45・7歳、30代では51・3歳でした

私はこれまでにたくさんの方の「腸年齢」を調べてきました。そのなかには、実年齢は20歳なのに「腸年齢」が70歳以上に達していた女性もいました。

その方は、いつもお菓子やペットボトル飲料で食事を済ませており、ご飯類をほとんど摂らずにいました。「腸年齢」の測定のために提供してもらった便も、2週間も便秘が続いたあとに、下剤でやっと出したという、筋金入りのウンチでした。

この女性の例からもわかるように、「腸年齢」が実年齢以上に老いる最大の原因は食生活にあります。

 

食べ物は小腸で消化・吸収され、大腸へと送られますが、その間に消化しきれない食べカスなどを腸内細菌がエサにするので、食べ物は腸内細菌のバランスに大きな影響を与えているのです。胃で分解された食べ物は、小腸でほぼ消化・吸収され、さらにその残りが大腸へ行き、大便となります。

大腸の腸内細菌のバランスが崩れると、さまざまな病気を引き起こすことが知られています。日本人の食生活はこの50年ですっかり欧米化し、肉類の消費量は10倍以上に増えました。またファストフードやスナック菓子などの摂取も日常的になっています。高脂質・高タンパク質の食生活が普及したことが、日本人の腸を急速に老化させる原因となっています。

(写真:iStock.com/frantic00)

こうした食生活の変化により、この50年間で大腸がんによる死亡率も年々増加し、男性が約7倍、女性は約6倍増えました。大腸がんのほかにも、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群など、さまざまな大腸の病気が増えています。

農林水産省の調査では、1960年における日本人の食肉消費量は年間で3キロ程度でしたが、35年後の1995年には15倍以上に増加していたそうです。穀物、野菜、魚を中心とする日本の伝統的な食事から、肉食中心の食事に変化したことは、日本人の腸内環境にも大きな影響を与えずにはいません。

 

腸内の悪玉菌の大好物は、タンパク質や脂肪を多く含む食品です。これらが腸内細菌によって利用され、アミン類や脂肪を分解するために必要な胆汁酸を分解し、発がんを促進する物質に変えてしまいます。

最近の若い人々の大好物であるハンバーガーなどのファストフードは、悪玉菌が好む典型的な食事といえるでしょう。他方、長寿菌の好物は食物繊維を豊富に含む野菜、海藻、穀類などです。

食物繊維は腸にとって非常に重要なもので、不足すると腸内に便が長時間とどまり、悪玉菌の増殖を招くことになります。

中高年男性のウンチが臭いわけ

「腸年齢」が高齢化しているのは、若い女性ばかりではありません。中高年男性の場合もまったく同様です。毎日コンピュータの前に座っての仕事で運動不足となり、ストレスがたまればタバコを吸ってしまう。食事といえば、高カロリーのスタミナ食ばかり。しかも食事の時間は短く済ませ、食べる時間は一定していない……。そんな生活に心あたりがあれば要注意です。

ある製薬会社の調査によると、家族のなかでもっともトイレのあとのにおいが臭いのは、「中高年の男性」である、との結果が出ています。またそうした中高年世代の80%の男性が、家族から「トイレのあとが臭い」と言われたことがある、とも答えています。

(写真:iStock.com/Koldunova_Anna)

私自身の食生活も、20年前までは肉食を中心としていました。野菜の多い食事に変えるまでは、家族から「トイレのあとが臭い」と言われ、私が便をしたすぐあとには誰も入ろうとしませんでした。とくにお酒の入った食事のあとは、食べた肉料理にニンニクでも入っていようものなら、自分でも我慢しきれないほど臭かったのです。

ウンチの臭さのもとは、腸内のクロストリジウムやウェルシュ菌など、「悪玉菌」と呼ばれている細菌です。こうした細菌は、腸内に滞留する食物などに作用してアンモニアやインドール、スカトールといった有害物質を発生させ、これがウンチの臭いの原因になるのです。

おならの臭さも同様で、腸内で悪玉菌が優勢になり、有害物質を作り出しているからです。

おならとは、腸内細菌が食物を分解する際に発生するガスが外部に出たもので、その成分の90%は窒素や水素ガス、メタンガス、二酸化炭素など、無臭性のものです。ところが残り10%がウンチと同じ臭気ガスのため、ひどく臭うことがあるのです。

 

年齢を重ねることで、当然ながら腸も老化します。老化すると腸の動きが鈍くなるのは、腹圧や腹筋が弱くなるからです。それが腸管運動にも大きな影響を与え、悪玉菌の増加とビフィズス菌の減少をもたらし、結果として「臭い」のもととなる腐敗物質の腸内の産生が増えてしまうのです。年をとると、若いときに比べてウンチの臭いがきつくなったり、出る量が少なくなったりするのはそのせいです。

ところが、このような加齢による腸の老化だけでなく、若い男性においても腸の老化が深刻化しています。

私は自分自身の体を実験台にして、そのことを証明したことがあります。30代の頃、1日あたり1.5キロの牛肉を、40日の間食べ続ける実験をしたのです。肉を食べ続けるうちに、私の体には明らかな変化が現れました。まず体臭がどんどんきつくなり、皮膚も脂ぎってきました。そして便にも顕著な変化が認められたのです。

それまでは黄褐色だった私の便は次第に褐色から黒ずむようになり、肉を食べ続けた40日目では、タールのような黒褐色になっていたのです。その臭いはきつく、腐ったような強烈な臭いでした。そのときの私の「腸年齢」は、おそらく70代に達していたに違いありません。

(写真:iStock.com/Helios8)

私の肉食実験は、やや極端な例だったかもしれません。しかし、野菜をほとんど食べずにインスタント食品やお菓子などばかりを摂り、栄養がきわめて偏った状態の食生活を続けている人はたくさんおられるでしょう。

また、ストレスを感じている男性は下痢の回数が多いとされます。いわゆる過敏性腸症候群です。毎日感じる厳しいストレスにより大腸粘膜がヘトヘトに疲れ、傷つき、下痢が止まらなくなることで起きる症状で、体全体のリズムが崩れるとともに、水分吸収がうまくいかなくなるのです。

こういった現代人の生活状況を一言でいえば、「女はたまる。男はくだる」とでもいえるでしょう。これは生活習慣病そのものですから、いますぐ改善しなければとんでもないことになってしまいます。

こうした偏った食生活が引き起こす腸の老化にストップをかけ、「腸年齢」を実年齢にふさわしいところまで若返らせるためにも、バランスのよい食生活を送るように心がけることが必要です。

自分の「腸年齢」の調べ方

食生活の乱れや運動不足によって腸内環境が悪化すると、腸の老化も早まります。腸の老化は大腸がんや大腸ポリープ、過敏性腸症候群といった、大腸に由来するより深刻な病気を引き起こす危険もあります。大腸がんは実年齢とは関係なく、むしろ腸年齢によって発症の危険性が決まります。年をとった人がかかる病気だろうと思って腸内環境に無関心なまま、腸年齢を上昇させるのは危険です。

自分の腸年齢は、生活習慣や食事、トイレのなかで観察できたことについて、簡単な質問に答えることでわかります(以下の項目のうち、当てはまるものの数を数えてみてください)。

◎生活習慣に関する質問

◎食事に関する質問

◎トイレに関する質問

  1.  

チェックの数: 0 項目

※環境によって、チェックできないまたはチェック数が0のままの場合があります。その場合はお手数ですがご自分でカウントをお願いします

 

以上の24項目のうち、チェックしたものが3個以下であれば、あなたの「腸年齢」は実年齢どおり、もしくは実年齢より若く、腸内環境は理想的といえます。

チェックが4~9個ついた方は、実年齢プラス10歳が「腸年齢」です。やや腸が老けている傾向にあるので、食習慣をはじめとする生活習慣を改善する必要があります。

チェックが10~14個の方は要注意です。あなたの腸は老化が進んでおり、腸内環境に黄色信号が灯っています。「腸年齢」は実年齢プラス20歳なので、いますぐチェックした項目を改善しなければなりません。

もしチェックが15個以上もついた方がいれば、あなたの「腸年齢」は実年齢プラス30歳で、腸内環境は高齢者と同じ状態にあります。いますぐ食事や生活習慣を改善しないと、がんになる危険があります。

「腸年齢」は年齢とともに上がっていくのが自然ですが、食事や生活習慣からも大きな影響を受けます。「腸年齢」が実年齢に比べて高い人は食生活に問題があることが多く、ファストフードやスナック菓子ばかりを食べている人や、動物性脂肪の多い食事を好む傾向にある人は、実年齢の2倍も3倍も腸が老けていることがあります。

*   *   *

腸と健康の関係についてもっと詳しく知りたい方は、幻冬舎新書『大便革命』をお求めください。

関連書籍

辨野義己『大便革命 腐敗から発酵へ』

大腸は膨大な嫌気性細菌の住む、まさに酸素なき暗黒世界。この腸内細菌が病気の多様性に直結する。腸内で起こる腐敗現象が、肥満やがん、免疫不全など多くの疾病に関わり、腐敗の原因「悪玉菌」の多い腸はそのまま病気の温床となる。だが、小さな努力で腸内環境は病気から健康長寿の発信源へすぐに変わる。つまり腸内で、腐敗ではなく発酵を起こすのだ。では、よき発酵のために毎日、何を食べればよいのか。これからは食への知恵をめぐらし大便を通じて自分の腸を徹底管理するのだ――。知的かつ、これ以上ない簡単な食と生活の改善方法を伝授。

辨野義己『大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌』

日本人は一生に約8.8トンの大便をする。が、ふつうはそれから目を背けて生活している。しかし、便とは自らの健康状態を知らせる体からの「便り」である。では、そもそも大便とは何でできているのか。大便の3分の1を占め、大腸内の環境に多大な影響を及ぼす「善玉」「悪玉」と呼ばれる腸内細菌は、それぞれどんな働きや悪さをするのか? 大腸と腸内細菌の最前線を読み解き「大便通」になることで「大便通」が訪れる、すぐに始められる健康の科学。

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辨野義己

1948年大阪府生まれ。国立研究開発法人理化学研究所イノベーション推進センター特別招聘研究員。農学博士。専門領域は腸内環境学、微生物分類学。酪農学園大学獣医学科卒。東京農工大学大学院を経て、2009年より現職。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気の関係を掘り下げて研究し、文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門・2009年)ほか数々の学会賞を受賞。ビフィズス菌・乳酸菌の高い健康効果を訴える「うんち博士」としてテレビ、雑誌などのマスコミに広く取り上げられており、講演活動も多い。『自力で腸を強くする30の法則』(宝島社)、『腸内細菌の驚愕パワーとしくみ』(C&R研究所)、『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)、『大便革命』(幻冬舎新書)など著書多数。

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