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悶々しても猫がいる。

2020.03.08 公開 ポスト

愚痴を共有することと、心を許すことは違うペヤンヌマキ

ネガティブな自分に悶々

猫は日向ぼっこが大好きで、家の中で一番陽当たりのいい場所をすぐに見つけて気持ちよさそうにゴロンと寝転がります。暑い夏は一番涼しいところ、寒い冬は一番暖かい場所をいち早く見つけて、キープします。猫と一緒に暮らしていると、猫は自分にとって心地よいこと、心地よい場所が本能的にわかっていて、それに忠実に行動しているんだな、と感心してしまいます。

私も、そんなふうに生きれたらいいなと、いつも思います。
 
年齢を重ねるにつれ、好きな人、気が合う人、一緒にいて心地いい人としか付き合わなくなりました。学生時代や会社員時代は、気が合わない人や苦手なタイプの人とも必然的に付き合わなければならないこともありましたが、公私共にフリーの今は、自分次第でどうとでもできます。

好きな人……自分に正直な人、自分と異なる立場や意見を尊重できる人、いろんなことをフラットな目で見れる人、礼儀正しい人、仕事が丁寧な人、努力を怠らない人、内面の美しさが外見に表れている人、品がある人、食べることが好きな人、猫が好きな人。

今仲良くしている人はみんなそんな人。

 

先日、会いたいと思っていた友人から連絡があり、喜んでお茶をしました。会ったのは賞味2時間くらいだったのですが、彼女と話したいことが溜まっていたので、あっという間に時間は経ち、店を出て駅までの道のり、楽しかったけどもっと話したいことがあったのになあと思いつつ、だけど彼女も忙しいだろうし、と二軒目に誘うことができずに解散しました。別れ際、彼女は何か言いたそうな雰囲気でした。そんな気がしました。

 

帰宅して暫くして、その友人から次のようなメールが来ました。
「ほんとはさっき伝えたかったんだけど……次会う時はネガティブな話題だけじゃなく、ポジティブな話もしたい」

しまった! と思いました。私は元々ネガティブ思考が強い人間で、人の悪口や愚痴をつい言ってしまう。若い頃はネガティブなことを面白おかしく話せることが、自分の個性だとも思っていました。だけど年を重ねるに従って、それってただの愚痴っぽいオバさんではないか、ネガティブを売りにするのはやめようと思うようになりました。

人の悪口や愚痴ばかりを言う人と話していると憂鬱な気持ちになるし、その人のことを素敵だとは思えない。そんな人間にはなりたくない。これからはポジティブなことをどんどん話していこう、と決意したのが40代の始めでした。それなのに、なぜ?

たぶんここ最近の私は、知らず知らずのうちにストレスを溜めていたのだと思います。自宅に籠って締切に追われる毎日、気分転換の運動もしていない、ひとり暮らしなので、家に籠っていたら何日も人と会話しない日が続く。ネットを見れば気が滅入るような話題ばかり。

そんな時に救世主かのように会いたかった友人からお誘いがきた。そして私は、好きな人、心を許している人と会う時に、愚痴を共有することばかりを考えていた。相手もそういう話題を共有したいのだろうとさえ思っていた。そして会っている貴重な時間を、ただの愚痴タイムにしてしまった。相手をストレスのはけ口にしてしまっていたのです。

ああ、なんてこった。自分に対してゾッとしました。
私と話したいから誘ってくれたであろう友人を、自分の話を聞いてくれる救世主かのように思ってしまっていた。
 
好きな人、気が合う人、一緒にいて心地いい人としか付き合わないのはいいけれど、その人と過ごす時間を、自分本意に考えていないだろうか? お互いにとって心地いい時間になっているだろうか?

それを気付かせてくれた友人に感謝します。

次に会った時は、最近はこんなものにハマっているよとかこんな楽しいことがしたいねとか、そういうポジティブな話がしたい。お互いが元気になるような話がしたい。相手にとっても心地よい存在でありたい。

悶々としつつ家に籠る日々にも、隣には猫がいる。
果たして猫にとって私は心地がいい存在なのだろうか。せっかく寝ているところにすりすり顔を近づけてきて迷惑してはいないだろうか。ちょっぴり不安になりつつも、今日も一緒に昼寝するのでした。
 

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悶々しても猫がいる。

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ペヤンヌマキ

1976年生まれ、長崎県出身。早稲田大学在学中に、劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。卒業後はAV制作会社に勤務。現在はフリーの映像ディレクターとしてAVやテレビドラマなどを手がけるほか、演劇ユニット「ブス会*」主宰の劇作家・演出家として幅広く活躍中。著書に『女の数だけ武器がある。』がある。

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