12月6日はフィンランドの独立記念日である。ロシア統治下から独立し2019年で102年。毎年この日は祝日で、公共施設をはじめ多くの店を閉めるらしい。
旅は3日目。ホテルで朝食を取り、雨が小振りになった昼過ぎから街へ出た。スタバもアカデミア書店もデパートのストックマンも休みだった。
エスプラナーディ通りの「カフェ・エスプラナード」は営業していたので、温かい紅茶を飲む。キビキビと働くスタッフを見るのもここへ来る楽しみのひとつである。
店を出る頃には雨がやんでいた。歩いて元老院広場へ。今日からクリスマスマーケットが始まっているはずである。
ヘルシンキ大聖堂の前に広がる元老院広場にはたくさんの屋台が並んでいた。家型の屋台が何列も並んでいて妖精たちの集合住宅のよう。巨大クリスマスツリーが立ち、立派なメリーゴーラウンドまで設置されていた。
屋台を一列ずつ見てまわる。毛糸の帽子の屋台があった。赤、青、ピンク、緑。いろんな色があり、帽子のてっぺんのポンポン(これもたくさん色がある)を選んで組み合わせることができる。楽しそうなので買うことに。わたしは紺色の帽子にグレーのポンポン。お店の青年がその場で手際よく帽子にポンポンを結んでくれる。
「どこから来たの?」と青年に英語で聞かれ、日本だと答えると、「来年の春に日本に行くんだよ」と彼は言った。日本に住む友達と富士山に登るのだという。「富士山はとても美しい山です」と教科書通りの英語で伝えると、「でも、デンジャラスなんでしょう?」と彼が聞いてきた。富士山に登ったことはないが、高い山なんだから危険も伴うはず。軽装備で出かけて欲しくなかったから、「デンジャラスだよ。だから気をつけて楽しんで!」と言っておいた。
ポンポン付き帽子を買ってすぐかぶって別れを告げる。
「じゃ、次は日本で会おう!」
と青年が笑った。かわいい笑顔だった。彼が日本でいい思い出を作れるといいなと思った。
クリスマスマーケット内でドーナツを食べている人がいた。どこだ? どこだ? 探していたら揚げたてドーナツの屋台があった。ホットコーヒーと一緒に買ってベンチに座る。
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仕事の打ち合わせ中、まったく違うことを考えてしまう。ひとり旅に出ても、相変わらず誰とも触れ合わない。無地の傘が欲しいのに、チェックの傘を買ってくる。〈やれやれ〉な大人に仕上がってきたけれど、人生について考えない日はない。そんな日々のアレコレ。
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