上質な服を30年も大切に着る、80歳になっても恋をする、なんでも「イエス」と言わない……。赴任先のフランスで出会った、年齢を気にすることなく、シンプルかつシックに生きる女性たち。そんなフランス女性の「美の秘密」に迫ったのが、『フランス人が何気なくやっているシンプル・シックな36の法則』です。私たち日本人も参考にしたい習慣が盛りだくさんの本書から、一部をご紹介します。
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「香り」は大切な個性
フランス女性について考えるとき、まず浮かぶのはふたつのイメージ。香水とランジェリーです。有名な香水専門店のある調香師がこう言いました。
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「明かりが消えてふたりがいい雰囲気でいると、感覚が高まる。特に肌と香りに対して。香水はわたしたちを恋に落とすんです」
ココ・シャネルの言葉、「香水をつけない女性に未来はないわ」も、そういうことでしょう。
個人の好みが大きい香水はそれぞれの個性の延長と考えられ、肌の匂いと混ざってその人だけの香りとなります。
香水なるものはずっと昔からありましたが、これをアートの域にまで高め、近代産業へと発展させたのはフランス人。ですから、フランス女性と聞いて香水を思い浮かべても、何ら不思議はないのです。
香りから逃れることはできないし、忘れられなくなることもしばしば。かすかな香りをたどっていくと、長い間忘れていた記憶が思いがけず蘇ることもあれば、初めてつけた香水がある種の予感を抱かせてくれることもあります。香水は、目には見えませんが、わたしたちのわからない言葉で話しかけてくるのです。
メイクで自分らしさが出せれば気分がよくなり自信もつくように、香水もそれぞれの個性の延長と考えられます。友人たちのほとんどは何十年も同じ香水を使っています。それぞれの忘れられない記憶と結びついているからでしょう。
新しい香りに手を出した数人も、プレゼントされたから使っているという場合が多く、最終的にはまた元の香りに戻るようです。
香水は、愛する人に出会ったとか、人生の大切な日や幸せな思い出とも重なります。友人のひとりは「夫は香水でわたしだとわかるんですって」と。その香水が製造中止になったときは見ていて可哀想なくらいでしたが、気に入ったものがなんとか見つかりました。
「まるで新しい人生に向かうみたいで、笑われるかもしれないけど決めるまでたいへんだったわ」
香水の上手な選び方
有名な調香師、フランシス・クルジャンは自身の名を冠したブランドも立ち上げており、そのコレクションにはエキゾチックでフレッシュ、おしゃれなフレグランスを揃えています。
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ジャン=ポール・ゴルチエ、ナルシソ・ロドリゲス、クリスチャン・ディオール、エディ・スリマン、ランバン、エリー・サーブなど。
「香水がすばらしいのは感動を創造するからです」とクルジャン。
「目に見えないのに、ついてくる。ミステリアスなんです」
ひとつの香りを使い続けてきた女性が新しい香水を買おうとするとき、専門家は、メイクと同様にサンプルをリクエストするよう勧めています。
クルジャンは、「店先でトップノートが気に入っても、香りは変化しますから二日ほど様子をみなければいけません。それに、身近にいる大切な人たちも好きなものでないと、結局は嫌になってしまいますからね」と言っていました。
買うまえにまず試してみる、それがフランス女性のやり方。ケア商品から香水まで何でもサンプルを求め、実際に使ってみていいものだと確信を得てから購入を決めます。
頬を軽く触れ合わせるフランス流のエアーキスは、相手が男性であれ女性であれ、匂いという贈りものをもらうまたとないチャンス。
わたしの好きなコロンのひとつは、夫の愛用するシャネルのプールムッシュ。一週間以上の旅に出るときはこれを小瓶に入れて携帯し、匂いで離れている寂しさをまぎらわします。
大方の意見が一致するところですが、髪に軽くスプレーするのがいいようです(夏のビーチではやめておきましょう)。動くと空気が揺れて、香りがただよいます。
ともあれ、理屈や技術、是非を気にする必要はありません。ココ・シャネルの有名な言葉があります。
「香水はキスしてほしいところにつけるもの」
わたしが意見を求めた男性たちはみな、大きくうなずきました。
インタビューの最後に、エリック・アントニオッティと頬を寄せ合い、別れの挨拶を交わしたときの彼の言葉をご紹介しましょう。
「女性であるということは特権なのです。その特権を、女性は誰でも乱用していいのですよ。過去は忘れて、愛と喜びと情熱を大切にしてください」
フランス人っていいなあ、と思いませんか? 人生の哲学として愛と喜びと情熱を大切にしなさいとは。美を追求するわたしたちにとって、これ以上のアドバイスはありません。
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