そろそろトイレットペーパー騒ぎも収束となるだろうか。
2週間前、我が家のトイレは最後の1ロールとなり、しかしスーパーの売り場はすっからかんで、ちょっと不安になった。子供の頃、母親から「もし学校帰りにうんちしたくなったら、この葉っぱを使うんだ!」とお尻のかぶれない野草を教えられていたので、「いざとなったら葉っぱだな」と思いながら自宅の観葉植物に黙々と水を与えていたのだが、友人が分けてくれたので助かった。
政府やメーカーが「トイレットペーパーがなくなるというのはデマ」「99%国内生産で中国は関係ない」「在庫は十分にある」と発表してもなかなか騒ぎは収まらず、大手ショッピングセンターが売り場に大量陳列して「お一人様10点まで!」とアピールしてみせた頃から徐々に中和されてきたように感じるが、この原稿を書いている3月12日現在、人口密集地である私の生活圏のスーパー、ドラッグストアではいまだに午前中で売り切れてしまうようだ。
トイレットペーパー・パニックが起きているのは、日本だけではない。アメリカ、イギリス、インドネシア、香港、台湾、シンガポールなど世界各地でいっせいにトイレットペーパーの棚が空になり、オーストラリアの公共放送ABCのウェブサイトでは、シドニーのスーパーで女性同士がつかみ合いの激しい乱闘をくり広げる映像が紹介された。
現実にはトイレットペーパーの不足は起きないし、各国政府当局が「在庫はある」と呼び掛けており、生命維持に関わる品物でもないのだが、なぜこんなにも人々はトイレットペーパーに血まなこになるのだろう? その心理について考えてみたい。
パニックとは「我れ先に」の競争心
そもそもパニックとはどういう状態なのか。
意識することは少ないが、日常、人は大きな集団のなかに抱かれて生活している。そこでなにか事件が起きたとき、それまでの協力や秩序が一瞬のうちに崩壊して、それぞれがてんでんばらばらな個体となり、我先にと競争しあう群れとなるのが「パニック」だ。
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オオカミ少女に気をつけろ!
嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。
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