売り上げトップ販売員から接客アドバイザーに転身した平山枝美さんの最新刊『あの人だけが、なぜ売れるんだろう? 売れる販売員になる30のこたえ』。現役販売員の方から平山さんの元に多く寄せられる“接客の悩みや疑問”を取り上げ、すぐに実践できる解決法をご紹介しています。
今回は「大きな声では言えないけど、実は自店の商品やサービスが好きになれない」と悩んでいる販売員の方へのアドバイスを試し読みでお届けします。
Q. お店の商品やサービスを好きになれず、共感の言葉が嘘っぽくなってしまいます。
自店の商品やサービスが大好きで仕方がないなら、それはとても幸せなことです。
しかし、ブランドの方針変更などでテイストが変わったり、流行を先取りしすぎて奇抜だったり、商品の中でも好き嫌いが分かれる場合もあるでしょう。自分で良さがわからないのに、お客様に商品提案なんてできない! と悩んでしまった時には、諦めるしかないのでしょうか。
A.「かわいいですよね」と合わせるのではなく「真っ白ですよね」などと特徴を伝えるようにしましょう。
私が入社したアパレルブランドは、レースやフリルをふんだんに使った女性らしいデザインの商品が豊富でした。服に関わる仕事ができればいい! と販売員の世界に飛び込んだ当時の私は、今思えば大変に失礼なことなのですが、馴染みのないテイストの服を前に、最初はどのような点をお客様にすすめればいいかがわかりませんでした。
お客様が商品を手に取っていても「かわいいですよね」としか、言うことができません。自店の商品が好きな先輩たちは「このレースの部分がたまらないですよね」などと、自分が気に入っている部分を熱く語っています。私は「商品が好きじゃないとダメなのかな」と戸惑ってしまいました。
商品の良さがわからないと思った時、私たちはどうすればよいのでしょう。そのような時は「自分にとって良い」と思うところを見つけるのではなく、「お客様にとって良い」と感じるところを探す、という視点に切り替えます。
たしかに、自分の好きな商品ならどこがどのように好きか、思い入れを語ると良さは伝わるかもしれません。しかし、魅力を感じないものを好きになろうとしても、すぐには難しいでしょう。もちろん使っているうちに好きになるという可能性もありますが、扱っている商品が高額ですぐに自分では買えないという場合もあります。
「好きなところ」を探すのではなく「商品の特徴」を見つける
私たち販売員は自分にぴったりの商品を探しているわけではなく、あくまで「お客様にぴったり」だったり「お客様が満足する」商品を提案する役割があります。ですから、その商品を好きになろうとするよりも、お客様の立場で良さを考えられるようになることが重要だ、と割り切ってしまうのはいかがでしょうか。
ある北欧インテリアのショップにいるスタッフは、インテリアに対するこだわりが強すぎて「もっと違う素材で作ればいいのに」「パーツ選びが甘い」などあら探しをする癖がついてしまったと言います。
そのせいで、最初はお客様に「素敵ですよね」と言うことに罪悪感があり、説得力のある話ができなかったそうです。
しかしあるお客様から「床に合わせて、こちらのような真っ白の椅子を探していたの」と言われた時、自分が気付いていなかったところにお客様が魅力を感じているということに思い至りました。
そこで、商品の特徴を挙げて、それをお客様に説明しようと思いつきました。
例えば椅子なら、好きなところ、ではなく「シンプル・白い・背もたれが高い」などと、特徴を挙げてみます。すると、たいして伝えるべきことがないと思った商品にも提案ポイントがあることがわかりました。
今までお客様に「素敵ですよね」「かわいいですよね」としか言うことができなかった商品について、「背もたれが高いのでゆったり座れます」などと話すことができるようになったのです。
お客様にも「なるほど」と言われることが多くなった彼女は、自信を持って提案ができるようになりました。
このように、主観ではなく、客観的な特徴を挙げると、お客様に合わせた提案トークを行いやすくなります。例えば、
デジタル時計なら「急いでいる時でもパッと見ただけで時間が把握できます」 。
個性的な柄の服なら「初対面の人にもお客様のセンスが一瞬で伝わります」 。
というように、お客様にとってどのようなシーンでその商品やサービスが生かされるかを考えて特徴を伝えることが大切です。この時、あらかじめお客様のニーズを聞き出しておきましょう。
補足ですが、商品やサービスを作る側は魅力を感じてもらえると思ったから、それを生み出したのです。例えば、斬新なデザインの服などはハイブランドのコレクションを参考に流行の先取りをした場合があります。「変な服!」などと思う前に、もしかしたら、こういうデザインが流行るのかも、と雑誌やネットなどで知識を広げておくこともまた、商品を理解する助けになるかもしれません。
このように常にアンテナを張り巡らせ、客観的に商品を捉えられるようにしておきたいものです。
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『あの人だけが、なぜ売れるんだろう? 売れる販売員になる30のこたえ』にはお悩みとその解決法をまとめた「売れる販売員になるための目標達成チェックシート」(229ページ掲載)がついています。得意なところと苦手なところがはっきりしてくるので、接客の見直しに役立ててください。
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