品格のあるうんこ、ないうんこ
くそ、うんこ、大便、排泄物について、考えてみましょう。
現実には、品格のあるうんこ、ないうんこなどはなく、うんこは単にうんこでしかありません。しかし、やはり表現にはいろいろあるものです。うんこがうんこそのものを指す場合、うんこが比喩であり、相手を罵倒する場合など、うんこにもいろいろあります。
品格のない大便:
Don’t give me shit about the fight.
(喧嘩のことで俺をけなすな=俺をおちょくるんじゃねーよ)
中立:
I have to go number two.(うんこに行きます)
※ number one = pee = おしっこ
※ number two = poop = うんこ
考えてみればわかりますが、トイレに行くとき、うんこかおしっこかを他人に伝える必要はありません。トイレに行く旨を伝えればいい(もしくは、品良く席を外すことを伝えればいい)だけの話なので、number two がいくらうんこを示す婉曲的な表現とはいえ、I have to go number two. はあまり良い表現とはいえません。相手にうんこであることを伝える必要があるとしたら、幼い子どもが親にいうとか、病気や介護で相手に大か小かを伝えなければならないケースです。
Pee(おしっこ)やpoo/poop(うんち)は幼児語ですが、大人でも使います。概ね子どもが使う言葉は、語尾を伸ばすと決まっています。Pee の語源はpiss(尿)と考えられます。ピスのスが発音しにくいのでピーと伸ばします。
一方、poop は船尾という意味から、お尻を意味します。そこからうんこの意味になったのだといわれています。
I wanna pee.(おしっこしたい)
I wanna poo/poop.(うんちしたい)
I wanna take a crap/dump.(うんちしたい)
実際に使用するとしたら、幼児語なのでこんな感じの表現になります。しかし、いい歳をした大人が突然これらの表現を使ったら、相手は気味悪がるでしょう。
ところで、うんこを品格のある表現にすることはできるでしょうか。これは難しい質問です。うんこで品格のある表現はおそらくないと思います。そのような話題になることが考えにくいからです。
たとえば、社交界のマダムの会話で「奥様、おうんこに行かれますか?」というような場面が考えられるでしょうか。まったく考えられません。せいぜい、気の置けない仲間内で「お芋を食べるとお通じに良いのよ」と、便秘で悩むマダムたちがうんこトレーニングの情報を交わすくらいでしょう。
病院では以下のように、品格のある、とまではいいませんが、医学用語を使い丁寧な表現をするはずです。
品格のある大便 :
What does your stool look like?(便の具合はいかがですか?)
How’s your bowel movement?(排便の具合はいかがですか?)
※ bowel movement とはそれぞれお腹、動きを意味する医学用語で、病院で医師が使います。
性行為はしないという人もいますが、排泄はしないわけにはいきません。これは生きていくうえで避けられないことですから、皆さん気になるところだと思います。
排泄をしたいとき、トイレを表す言葉はtoilet やlavatory でもいいのですが、便器を連想させてしまうので、やはり品が良いとはいえません。基本的には、restroom やbathroom を使います。たとえbathroom ではなかったとしても、bathroom を使います。アメリカの家ではバス(シャワー)とトイレが一緒のところが多いからです。スラングではloo(トイレの意。語源はフランス語ともいわれています)といったりします。
それでは、「トイレに行きたい」ということを伝える品格のある表現を、以下に挙げます。
1 May I use your bathroom?
2 May I wash my hands?
3 Where could I powder my nose?
1について。トイレは便器を直接的に描写してしまうので、品格のある表現では、MayI use your bathroom?(バスルームをお借りしてよろしいでしょうか?)など、直接的な表現を避けるのが普通です。
2について。この表現は「お手洗いをかしてください」に近いですね。
3について。女性が使う表現です。トイレのことを化粧室ともいいますが、この表現はまさにそれで、女性が化粧直しに行きたいといいつつ、うんこ(かどうかわかりませんが)に行くときに使う表現です。直訳は、「どこでお鼻にお化粧できるかしら?」となります。実際、powder room という言い方もあり、ホテルやレストランの化粧室を指します。
ここで念には念を入れ、考えてみましょう。トイレを使わせてくださいを、bathroomを使って表現したところ、本当にお風呂だけで、トイレがなく、たいへんな目にあってしまうということは考えられないでしょうか。大丈夫です。安心してください。なぜならこの表現を使った時点で、トイレを借りたいというあなたの意図が伝わるからです。それよりも危険なのはバスルームがトイレと一体型のため、シャワーが長い先客がいた場合、トイレが使えないという事態が発生することです。しかしそこはアメリカ、それなりの家にはバスルームが複数ありますのでご心配なく。
「トイレに行きたい」ということを伝える、品格のある表現を紹介しました。それでは次に、「トイレに行きたい」のポエム的な(どちらかというと、品格がある)表現を紹介します。
1 Nature calls.
2 Pick some flowers.
1について。自然の摂理が呼んでいる(私は便意を催している)、ということで、「この人はトイレに行きたいんだな」と相手に伝わります。
2について。ポエムのような感じですね。なぜこのような表現になるかはわかりませんが、女性が使う表現です。日本語でも、女性が「お花摘みに行ってきます」という表現で、上品にトイレに行くことを示す場合があります。登山用語だそうです(しゃがんで用を足す姿が、花を摘んでいる姿に似ているため)。同様に、お花摘みからの連想で、女性が何かをするために席を外すといったニュアンスだと思います。
いかがでしょうか。要は、トイレに行きたいということを伝えるにも、いろいろな表現があるということです。 May I be excused.(少し失礼させていただきます)、これでもいいのです。これは、品格のある英会話の範疇に入るでしょう。ただし、婉曲的に伝える場合、本当にその人が行きそうな場所に行くと述べると、トイレではなく単にその場を立ち去り、別の場所へ行きたい(戻ってこない)のだと勘違いされてしまいますから注意してください。