病気予防に効果的な野菜スープ。そのレシピから、ウイルス・ガンはもちろん、現代社会が抱える問題まで徹底解説した『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(前田浩著)から、一部を抜粋してお届けします。抗がん剤の世界的研究者による、健康になるための一冊です。
* * *
活性酸素という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、誤解している 人もまた多く、「活性」という単語から元気で活発なイメージがわき、普通の酸素よりも身体に良さそうだなどと思っている人もいます。
しかし、元の英語は reactive oxygen species であり、これをアクティブ=活性 と訳したのが間違いで、reactive = 反応性のあるという意味ですから、正しくは「反応性の強い酸素」と訳すべきでした。
もっといえば過激= radical な酸素であり、私は活性酸素のことを「酸素ラジカル」とも呼んでいます。 言い換えれば、より強く他の細胞とその構成成分を酸化、攻撃してしまう酸素ということで、多くの場合、酸化反応により標的となる化合物は傷つき、別のものに変化さえするということを認識してください。
この世の中のものは何であれ経年変化をし、多くの場合空気に触れて劣化します。米にしても1年以上貯蔵したものは味が悪くなり、橋の欄干や鉄の手すりは放置すれば自然に錆びていきます。
ヒトも呼吸によって酸素を体内に取り込んでいるのですが、1~5%が活性酸素になるといわれています。
活性酸素は化学反応性の強い酸素分子であって、多くの物質と容易に反応・結合して相手の分子を酸化したり分解したりして変えてしまう。人体の細胞を傷つけ、細胞死さえももたらしてしまうのです。
ヒトの身体も錆びると考えると、ゾッとしませんか。
ウイルスによる肺炎も、ガンも、実はこの活性酸素が大きく影響しています。
私の専門は細菌学、微生物学、ウイルス学です。「微生物感染の分子病理学」「炎症のメカニズム」の研究を、日米両国で長年にわたって行ってきました。
この「炎症のメカニズム」を研究しているときに、活性酸素の生成メカニズムを明らかにすることに成功しましたが、研究の過程で、活性酸素が遺伝子の変異や細胞傷害、細胞死まで引き起こしていることが分かったのです。そして変異した細胞が、ガン細胞の発生に繋がっていたのです。
さらに活性酸素は、発ガンだけでなく、老化、動脈硬化、潰瘍、リュウマチ、アルツハイマー病の発症などにも深く関わっているといわれています。
そこで、活性酸素を中和することが、変異細胞を、ひいてはガン化細胞を作らないこと、つまり、ガンの予防になると確信したのです。ではどうやって中和すれば良いのか、それには活性酸素を中和する食品成分を探し出し、効果的に体内に摂取すれば良いのではないか、と考えました。
そして抗活性酸素力のある成分を含む、野菜に注目したのです。
私は今回の新型コロナウイルス予防に対しても、野菜に含まれる成分の効果的な摂取が、ガンや他の病気と同じく、極めて有効であると考えています。
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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力
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