病気予防に効果的な野菜スープ。そのレシピから、ウイルス・ガンはもちろん、現代社会が抱える問題まで徹底解説した『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(前田浩著)から、一部を抜粋してお届けします。抗がん剤の世界的研究者による、健康になるための一冊です。
* * *
草花や野菜など、植物はなぜガンにならないのか? 不思議に思ったことはありませんか? 自然界の植物は強い紫外線にさらされ、かびや病原菌や害虫の攻撃も受けているのに、自ら動いて逃げたり防衛したりできないのです。
そのため体の中に、自分で自分の身を守るしくみを整えたと考えられます。ファイトケミカルです。直訳すると植物性化学物質であり、細胞の中に含まれる成分であり、植物の色や香り、辛み、苦みなどのもととなる機能性成分です。
トマトのリコペン、ホウレンソウ・コマツナのルテイン、タマネギのケルセチン、お茶のカテキン、ニンジン・カボチャのベータカロテンなど、私達がよく食べるおなじみの野菜に多く含まれています。
ファイトケミカルは、強い抗酸化力を持ち、ウイルスの侵入などで発生した活性酸素を中和・除去してくれるのです。
これほど頼りになるファイトケミカルですが、残念ながらヒトの体内で作ることはできません。植物由来の成分であり、私達は野菜・果物を食べることでしか摂取できないのです。
1. 私達の身体を作りエネルギーのもととなるタンパク質・脂質・炭水化物の三大栄養素、2. 体調を良くしバランスを保つビタミン・ミネラル群、3. 腸内環境を整える食物繊維、に加えファイトケミカルの役割を是非知っていただきたいのです。
活性酸素を中和・除去し炎症を抑える、免疫力を向上させる、私達の健康を守る隠れた救世主なのです。ウイルス等感染症・ガン・生活習慣病の元凶である活性酸素を除去してくれるファイトケミカルですが、さらに調べていくうちに、その調理法も大切であることに気づきました。
すなわち、ファイトケミカルの成分は、加熱することによって人体にずっと吸収されやすくなるのです。吸収率、抗酸化力は実験では最大100倍にも強くなることが分かっています。そしてベストな料理法はスープであることも確信できました。
詳しくは第3章で述べますが、今は、新型コロナウイルス感染の予防・防衛のために「野菜スープ」が大いに助けになる、という提言を覚えておいてください。
ファイトケミカルには、人体にとってもう一つ優れた特性があります。血管を拡張し、血流を良くする働きです。
血管内の内皮細胞から一酸化窒素(NO)が放出されます。この一酸化窒素が血管の筋肉をゆるめ、拡げ、血流を増やしてくれるのです。
しかし、ここでも活性酸素が邪魔をします。NOを攻撃、酸化させてしまうので、血管は狭くなり、血圧も上昇、体のすみずみにまで血液等がいきわたらず、体調を乱すもととなります。
ファイトケミカルは、血の巡りを良くしてくれるのです。毎日の野菜スープは、 循環器系の不調にも有効な生活習慣なのです。
〈参考文献〉
•W.F. Ganong, Review of Medical Physiology, pp. 1-774, Lange Medical Books., Network, CT, USA,とくにCh. 23, PP. 375-413.
•W. Regelson & C. Colman, The Super-hormone promise-Nature’s Antidote to Aging, pp.11- 346, Simon & Schuster, N.Y, 1996
•W. Pierpaoli, W. Regelson, C. Colman, The Melatonin Miracle: Nature's Age-Reversing, Disease-Fighting, Sex-Enhancing Hormone. Simon & Schuster, N.Y. London……
•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
•産経新聞、読売新聞、中高年ひきこもり61万人、2019年3月30日
•厚生労働省「患者調査」、精神疾患を有する総患者数の推移、精神保健医療福祉のデータと政策(平成29年)http://www.mhlw-houkatsucare-ikou.jp/guide/h30-cccsguideline-p1.pdf
•平成30年中における自殺の状況、厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、平成31年3月28日
• Rachel Carson, Silent Spring( 邦 題: 沈 黙 の 春 ), 1962, PP.1-317, Penguin/Geography/environment science, N.Y.
•有吉佐和子「複合汚染」新潮社、1975
• M.M. Bomgardner, How a new epoxy could boot BPA from cans, アメリカ化学会、Chem. Eng.News, 97, March 5, 2019.
•林国興、環境ホルモン再考、日本がん予防学会News Letter No. 73、2012年9月
•K. Hayashi et al., Contamination of rice by etofenprox, diethyl phthalate and alkylphenols: effects on first delivery and sperm count in mice, J. Toxicol. Sci, 35, 49-55, 2010.
•CB. Pedersen et al., A comprehensive nationwide study of the incidence rate and lifetime risk for treated mental disorders. JAMA Psychiatry, 71, 537-581, 2014.
•PJ. Snyder et al., Effects of testosterone treatment in older men. N. Engl. J. Med. 374, 611-624, 2016.
•Financial Times 8月8日(木)2019年、P.7;同New York Times, International Ed., The weedkiller that won’t be exterminated, p.10, Business, Sept., 27, 2019(ラウンドアップ)
•R. A. Weinberg. Cell, 157, 267(2014)
•前田 浩、化学と生物、vol.55, No.7501-509(2017)
•C. Leaf, The truth in small doses: Why we're losing the war on cancer-and how to win it. Simon & Schuster, New York(2013)
•H. Maeda and M. Khatami, Analyses of repeated failures in cancer therapy for solid tumors: poor tumor-selective drug delivery, low therapeutic efficacy and unsustainable costs. Clin.Trans. Med. https://doi.org/10.1186/s40169-018-0185-6 7:11, 1-20(2018)
• Laura Howes, How your gut might modify your mind, Chem. Eng. News 9(7 14)36-40(2019) •Science Oct. 23., 2019
• The Scientist 2019, Feb. 4., by Ashley Yeager
•半田 康、ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生との関連、日本がん予防学会ニュースレター p.1., No.66, Dec. 2010.
• Bruce Freeman et al., J. Biolo. Chem.(2013)
•Science 244, 974-976(1989)•J. Clin. Invest. 739-745(1990)
•Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2020 Mar 3;117(9):4642-4652. doi: 10.1073/pnas.1919563117.Epub 2020 Feb 18.
•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋
ウイルスにもガンにも 野菜スープの力
病気予防に効果的な野菜スープ。そのレシピから、ウイルス・ガンはもちろん、現代社会が抱える問題まで徹底解説! 抗がん剤の世界的研究者による、健康になるための一冊。
- バックナンバー
-
- COVID-19のサイトカインストームは...
- ウイルス感染と発症:不顕性感染、潜伏感染...
- スペイン風邪のような悪夢にはならない
- コロナ<COVID-19>のワクチンはあ...
- 収束が見えないなか、「抗体価検査」と「交...
- 「夜の街」の感染防止に、飛行機の空気清浄...
- やはり、うがいを軽くみてはいけない
- ウイルスの感染力を高める「ダニの糞」には...
- 日本型の古い菌株のBCGワクチン接種は、...
- 日本の死者数の少なさは、抗生物質の積極的...
- 活性酸素をおさえる緑黄色野菜の作用
- ウイルス感染・細菌感染における重症化は、...
- 新型コロナウイルスで起きたサイトカインス...
- 重症化は、ウイルス感染後の「活性酸素」と...
- 欧米に比べ、日本が低い死亡率だった理由を...
- 「赤色」のスープは抗酸化作用の強いリコピ...
- 「黄色」のスープでカロテンをとりいれて
- 「緑色」のスープはファイトケミカルたっぷ...
- 美味しい野菜スープ・温野菜で免疫力を高め...
- ガン患者さんも常備野菜スープで延命
- もっと見る