「孤独」と聞くと、寂しい、かわいそうといったイメージを抱く人が多いでしょう。しかし、それは本当なのでしょうか? ベストセラー『家族という病』などで知られる作家、下重暁子さんの『極上の孤独』は、「孤独を味わえるのは選ばれし人」「素敵な人はみな孤独」など、孤独は悪いものだというイメージをくつがえす一冊。一人の時間が楽しくなることうけあいの本書から、一部をご紹介します。
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生活の時間が合わない
我が家の場合も、寝室を分けることは成功であった。同じ部屋だと、自分勝手な行動ができない。いくら遅くまで本を読みたいと思っても、明かりをつけていては相手に迷惑かもしれないと気を遣う。
音楽についても同じである。イヤホンなどで聴くのではなく、遠慮なく好きな音量で聴きたいではないか。
つれあいの生活は、比較的朝が早く、したがって夜も早い。
私はというと昔からの癖が直らず、夜は遅く朝も遅い。朝の9~10時、いや、前の晩によっては11時頃まで寝ていることもある。なぜ夜が遅くなるかというと、私のプライベートな楽しみは夜の時間だからだ。
午前中はなんとなく過ぎ、頭がしゃんとしたところで、午後から仕事にかかる。原稿を書く時は夜の6時か7時頃まで。打ち合わせや講演、インタビューも全て午後である。朝は食べるとしても果物だけ。
12~1時にお昼を食べ、夜は7時か8時、9時頃からNHKとテレビ朝日でニュース番組を見て、つれあいが自室に引き上げてからが自分の時間である。聴きたかった音楽を聴きながら、読みたいと思っていた本や書きたかった手紙に没頭できる、私一人だけの時間である。
つれあいは、ベッドで本を読みながら、そのまま寝てしまうらしい。
お互いのペースを崩さないのが、寝室を分けるメリット
年をとると朝早くなるなどというのも、人によって全く異なる。
かつては夜も仕事をしたが、今はよほど間に合わぬ時以外はやらない。大事な一人時間を邪魔されたくないからだ。
つれあいは朝8時か9時には起きて、生のオレンジを絞ってジュースを作り、果物や野菜を切り、私の分も残しておいてくれる。
お互いのペースを崩さないようにしているから、不満もたまらない。自分に合った暮らしをすることが、長生きのもとである。
物書き仲間の中には、かつては夜型だったのが、すっかり朝型になった人がいるが、それが体にいいとは限らない。
五木寛之さんは夜型で有名で、仕事は全て夜だというが、今もそれを崩していないせいか、昔とあまり変わっていない。
浅田次郎さんは、酒を飲まないので毎日5時半起きというペースを守っている。酒を飲む飲まないでも時間割は変わってくるし、その人に合ったペースが一番いい。
年をとると睡眠時間は短くていいというのも、私にはあてはまらない。毎日8~9時間は睡眠をとるよう心がけている。
前日の疲れや具合の悪い所は、たいてい寝て起きると治ってしまう。睡眠不足が一番こたえるので、そうならないよう気をつけている。
黒柳徹子さんに聞いた話だと、夜は11時までに寝て、3時頃起き、そこから3時間ほど翌日の仕事の準備や調べ物をして、また昼頃まで寝るという。彼女の元気の源は8時間は寝ることだという。
二度寝という器用な真似は出来ないが、私にとっても睡眠の大切さは同じ。睡眠は3~4時間などとイキがっていてはいけない。自分のペースが必要だ。