「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。
コロナウイルスの影響でたくさんの商業施設が休館となり、働き方も変わり、1日の大半を自宅で過ごすという人も増えている中、おうち時間の過ごし方を改めて振り返っている方も多いのではないでしょうか。
本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。
未曽有の状況で不安や焦りを抱える毎日ですが、本書で自宅時間を少しでも発見のあるものにして頂けたら幸いです。
そしてこのような状況にも関わらず、毎日職場に足を運び、働き続けて下さっているすべての方に感謝を。心身のご無事を祈っております。
「けじめ」が日常を動かしている
私は、暮らしの中で「けじめ」をつけることが大好きです。1年の中の大きな「けじめ」といえばお正月。年末まで仕事に追われ、バタバタと過ごしていても、ささっと部屋を整え、お飾りを用意し、新年の朝を迎えると、背筋をピンと伸ばしたくなります。昨日から今日へ。それは、当たり前に巡ってくる時の流れなのに、「大晦日」「元旦」という区切りがあるだけで、一旦まっさらな自分に戻ることができます。そして、「さあ、今年はどんな年にしよう?」とゼロから考える……。海外で迎える新年は、カウントダウンなどお祭りモードで、それはそれで楽しいけれど、除夜の鐘を聞き、百八の煩悩を落として、初詣に出かけ、1年の無病息災を祈る……という日本のお正月の文化は、なんて素晴らしいんだろうと思います。
たぶん私は、暮らしの中に「終わり」と「始まり」をつくることが好きなんだろうと思います。1冊の本の入稿が終わると、部屋中を掃除したくなるのもそう。書類が山積みになった机の上を片付け、不要な資料をビリビリと破いて捨て、リビングの窓を開けて、掃除機をかけて拭き掃除をする。そうやって手を動かすうちに、今まで「そのこと」しか考えられないほど集中していた頭が、ゆっくりとほどけていきます。自分の中にいっぱいいっぱいに詰まっていたものを、ごっそりと捨て、空っぽにする……。それが、ひと仕事終えた後の私の「大掃除Day」です。
立ち止まって考える時間も、人生には必要
「やらなくてはいけないこと」に追われていると「立ち止まって考える」心の余白がなくなっていきます。仕事だったり、「今日の夕飯には何作ろうか?」という段取りだったり、毎日考えるべきことはたくさんあります。でも、「走りながら考える」ことと「立ち止まって考える」ことの間には、大きな差があるなあと思うのです。立ち止まるとは、ゼロに戻るということ。そこに、「今すぐ考えなくちゃいけないこと」はありません。空っぽな自分の中から立ち上がってくる「考える種」を拾い、「はて? こう感じているのは、いったいどういうことだろう?」と自分に対して問いを立てる……。それはきっと小難しいテーマでなくても、いたって普通のことでいいのです。
「掃除の時間を朝から昼に変えてみたら、1日はどうなるかな?」だったり、「仕事以外に夢中になれるお楽しみってなんだろうな?」だったり、「老後の私ってどうなっているかな?」だったり……。そんな問いの根っこは、すべて自分の在り方に繋がっています。
ふとぽっかり時間ができた時、フ~ッと伸びをすると同時に、なんだか足元がす~す~するような不安が押し寄せてきます。交差点で信号待ちをしている時、ストップモーションがかかったかのように、立ち止まった私の周りだけ時が流れている。「やらなくてはいけないこと」がすべてなくなった時の、心もとなさといったら……。
でも、何者でもない素の自分に戻って、一抹の不安を肌に感じながら、「はて?」と考えることが、私はとても好きです。ゼロ地点に立って考えることで、「じゃあ、次はこんなことを始めてみようか?」と新しい自分になるための一歩を見つけることができます。それは、夜寝る前にキッチンのスポンジを吊るして干しておくことだったり、仕事から帰って、その日もらってきた書類をノートに貼ることだったりと、ごく些細なことばかりです。そんな小さな工夫を手に、明日を迎える準備をしているとワクワクしてきます。
何歳になっても、人は新しくスタートできる。自分の中を空っぽにし、「よし!」とまっさらな気分に戻るのは、そう信じたいからなのかもしれません。
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暮らしの中に終わりと始まりをつくる
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。
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