6人目は、出版局校正部門の阿部麻依子より。
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コロナのおかげで映画にも飲みにも行けず、粛々と会社と自宅を往復の日々。
校正者として、仕事ではどんなに複雑なゲラでも1字1字飛ばさずにじっくり読まねばならず、せめてプライベートでは、没頭してページを繰る手がどんどん進んでしまうような、家に帰るのが楽しみになるような、ときめくミステリーなど読みたいのです。
オススメは中山可穂さんの長編小説『ケッヘル』。モーツァルトの音楽にからめて展開される上質なミステリーかつ極上のラブストーリーです。ハラハラしたりきゅーんときたり胸が痛くなったり、あらゆる感情が動かされ、物語の世界にどっぷりはまっているうち、あっという間に時間が経ってしまいます。中でも主人公が愛する女性へ宛てた手紙がもう圧巻。これほど心打たれるラブレターはそうそうないでしょう。
手紙といえば、湊かなえさんの『往復書簡』もはずせません。
高校の部活仲間、恩師と生徒、恋人どうしの男女、誰にでもあてはまりそうな関係の人たちの、完全に手紙のやりとりだけで話が進んでいく、穏やか(でもちょっとドロドロ?)な連作短編集。思いもよらない結末にたどり着く、ミステリーの醍醐味を満喫できます。
手紙って、筆跡や、文字の使い方、紙面の使い方など、メール以上に「その人」の伝わるものですよね。身動きのとりづらいこんな時期こそ、自分の文字で、誰かに手紙を書いて送ってみてはどうでしょうか。
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