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  4. 誰かに手紙を書きたくなる(阿部麻依子)

6人目は、出版局校正部門の阿部麻依子より。

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コロナのおかげで映画にも飲みにも行けず、粛々と会社と自宅を往復の日々。

校正者として、仕事ではどんなに複雑なゲラでも1字1字飛ばさずにじっくり読まねばならず、せめてプライベートでは、没頭してページを繰る手がどんどん進んでしまうような、家に帰るのが楽しみになるような、ときめくミステリーなど読みたいのです。

 

オススメは中山可穂さんの長編小説『ケッヘル』。モーツァルトの音楽にからめて展開される上質なミステリーかつ極上のラブストーリーです。ハラハラしたりきゅーんときたり胸が痛くなったり、あらゆる感情が動かされ、物語の世界にどっぷりはまっているうち、あっという間に時間が経ってしまいます。中でも主人公が愛する女性へ宛てた手紙がもう圧巻。これほど心打たれるラブレターはそうそうないでしょう。

手紙といえば、湊かなえさんの『往復書簡』もはずせません。

高校の部活仲間、恩師と生徒、恋人どうしの男女、誰にでもあてはまりそうな関係の人たちの、完全に手紙のやりとりだけで話が進んでいく、穏やか(でもちょっとドロドロ?)な連作短編集。思いもよらない結末にたどり着く、ミステリーの醍醐味を満喫できます。

手紙って、筆跡や、文字の使い方、紙面の使い方など、メール以上に「その人」の伝わるものですよね。身動きのとりづらいこんな時期こそ、自分の文字で、誰かに手紙を書いて送ってみてはどうでしょうか。
 

中山可穂『ケッヘル(上)』

その音楽は神のものか、悪魔のものか―カレーの海辺でひとりの熱狂的なモーツァルティアンと出会った伽椰は、情事の果ての長い逃亡生活に終止符を打ち、日本へと舞い戻った。そこで待っていたのは、ケッヘル番号を会員番号とする会員制旅行代理店の奇妙なツアーであり、依頼人の失踪に始まる恐るべき復讐劇の幕開きだった。

湊かなえ『往復書簡』

高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行く。6人と先生は20年前の不幸な事故で繋がっていた。それぞれの空白を手紙で報告する敦史だったが、6人目となかなか会うことができない(「20年後の宿題」)。過去の「事件」の真相が、手紙のやりとりで明かされる。感動と驚きに満ちた、書簡形式の連作ミステリ。

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