7人目は、編集本部・志儀保博です。
* * *
こんな時は逆に小説ではない短いものを読みたい。
日本文藝家協会編『ベスト・エッセイ2019』(光村図書)が面白かった。76人の書き手による76編のエッセイを集めたアンソロジー。新聞(地方紙が多い)と純文学の雑誌に掲載されたものが中心。書き下ろし作品はなし。この手の本の存在は、なんとなく知っていたが手にとって買い求めたは初めてだった。
痛快な作品、大笑いする作品、温かな気持ちになる作品、素晴らしい出来栄えの短編小説のようで思わずうなる作品、追悼文、知らないことを教えてくえたアカデミックな作品など、それぞれの書き手の方々の柔らかな知性を感じる作品が多い。
ただ、すべてが面白いわけではなかった。エッセイは難しい。
わたしのベストを5編選べば穂村弘さん、鴻上尚史さん、東浩紀さん、桂歌蔵さん、星野概念さんの作品になる。ぜひ読んでみてほしい。
この本は昨年の7月に刊行されたもので、今年の版も、きっと今頃、準備が進んでいるだろう。『…2020』を楽しみにしている。
また、小説ではない短いノンフィクションといえば上原隆『こころ傷んでたえがたき日に』(幻冬舎)はいかがだろう?
こちらはコラム・ノンフィクションの第一人者による無名の人々のドキュメンタリー。
上原さんはベストセラーになった『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫)が名高いが、この『こころ傷んで…』は全22編が『友がみな…』に勝るとも劣らぬ傑作。描かれているのは、会ったことのない方々の人生だが、「こんな思いをしているのは自分だけじゃないんだ」と、この本を通しての彼らとの出会いに感謝したくなる。
ともに短い時間で豊かな共感ができ、読み進めるのが惜しくなるはず。
#こんな時だから読みたい本
#こんな時だからこそ読みたい本 幻冬舎社員リレー
幻冬舎社員がリレー形式で「こんな時だからこそ読みたい本」をおすすめします。
- バックナンバー
-
- 宇宙人と交信するための9のキーワード。ハ...
- 恐怖をなくす魔法の正体(専務取締役・石原...
- 会えない寂しさを埋める対談本(第三編集局...
- どんな靴より遠くに行ける魔法のなかへ(第...
- 50年前のレシピ本での発見、おやつは自作...
- 最悪の状況でも、最後に残るのは愛だった(...
- 現実から少しだけ離れて心を守る(校正部門...
- 酒を「飲む人生」と「飲まない人生」、どち...
- 懸命に働く人を思いながら(「小説幻冬」編...
- 真似できないファンキーさに胸が熱くなる!...
- 日常は一瞬で変わるから(営業局・黒田倫史...
- 家にいるからこそ家族と密に(第3編集局・...
- 甲子園ロスを少しでも埋めるために(営業局...
- 文字に疲れてしまったら眺める旅へ(経理局...
- コロナ対策でも頑張る女性たちへ感謝と賞賛...
- 旅人の思考を追体験して窮屈さを忘れる(校...
- 長い作品を自分のペースで時間をかけて(出...
- 名勝負を読んで熱くなりたい(第1編集局・...
- 自転車で旅する日を楽しみに(第2編集局・...
- BLと萌えを栄養に不安な日々を乗り越えた...
- もっと見る