四月某日
関東の人たちに自粛生活をするようにというお達しが出る。不要不急の外出はするな、ということである。わたしの人生はほぼ不要不急のことでできているので、まったく家を出られないことになるだろう、と予感する。正直に言えば三月頭にベルリン映画祭から帰ってきて以来、打ち合わせと仕事以外のことでは自分の住む街の外に出ていない。映画館には二回行ったけれど、それも徒歩だった。ヨーロッパ帰りだったこともあり、ちょっと早めに用心をしていた。
四月某日
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。