11人目は、第1編集局の有馬大樹です。
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もう15年以上前のことなのですが、夏休みに青春18きっぷを買い、特にどこに行くとも決めないまま電車に乗って西に向かったことがあります。えんやこらと鈍行を乗り継ぎ、無目的のままたどり着いたのは大阪。お金もない&泊まるところもない、ということでファミレスで徹夜。翌日、早朝の大阪をぶらぶらと歩きながら、何となく「行ってみるか」と思い立って向かったのが甲子園です。元高校球児の私にとっては憧れの聖地。
それ以来、甲子園での野球観戦にどハマりしてほとんど毎年観に行っていることを思うと、「無目的」って意外な扉を開いてくれるんだなと思ったりします。
コロナ禍により多くのスポーツイベントが延期あるいは中止になりました。そんな状況で塞ぎ込んだ気持ちを吹き飛ばすためにも、名勝負を読んでドキドキするのはいかがでしょうか。名勝負を描いた作品は数多くありますが、甲子園好きの私がオススメしたいのが『金足農業、燃ゆ』。金足農業とは、2018年の夏を熱くした秋田県代表のチームです。
エースの吉田輝星選手(現・北海道日本ハムファイターズ)の熱投を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。あるいは、準々決勝の対近江高校戦での劇的すぎるサヨナラ2ランスクイズを思い出す方もいらっしゃるでしょうか。僕はテレビや甲子園で金足農業を見て「爽やかなチームだなあ」と思っていました(勝利後、全力で校歌を歌う姿が印象的)。ですが、著者の中村計さんの丹念な取材によって浮き彫りになるこのチームは、私の勝手なイメージとは裏腹に強烈なヤンチャ集団。その姿はなんとも魅力的で、胸熱になること請け合いです。しかも、そんなヤンチャ集団が決勝まで勝ち進み、春夏連覇を狙う大阪桐蔭と対戦するのですから。「アツい、アツすぎるよ、金足農業!」と思いながらぐいぐい読み進められる傑作なのです。
在宅勤務を機に何冊かの本を読み直したのですが、「やっぱり好きだわあ」としみじみ思ったのが『蜜蜂と遠雷』。直木賞と本屋大賞をW受賞した作品です。ピアノコンクールを舞台にした「天才たちによるコンペティション」。誰が優勝するのかという視点で読み進めるのもいいのですが、それぞれの登場人物たちの「自分との戦い」に胸が熱くなります。僕は、楽器店勤務のサラリーマン・高島明石(映画では松坂桃李さんが演じていました)に感情移入しながら読みました。
気持ちが高ぶって「今すぐ何かやりたい!」と思っても、不要不急の外出を控えなければならないのがツラいところです。一日も早く平穏な日々が戻りますように。
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#こんな時だからこそ読みたい本 幻冬舎社員リレー
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