17人目は、第3編集局の宮城晶子です。
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目下リモートワーク中。外出自粛など世の中では、コロナ疲れという声もありますが、普段保育園に子どもを預けて仕事にいっている身としては、毎日家で家族と過ごせる貴重な時間、体験にある種のありがたさを感じています。と言いながら、1日何十回も聞く「ママ〜ママ〜」という声や三食のごはん作り、子どもと遊びながらのリモートワークゆえの深夜早朝のメールチェックに、たまに白目むきそうになる時が……。
そんな時に、読み返したくなる本が4冊。「家に一緒にいる人を大切に思う」本です。
芥川賞作家の川上未映子さんの『きみは赤ちゃん』。爆笑号泣の出産育児エッセイで、私は妊娠中、出産後、何度読んだことか。育児書なんかより100倍リアルで等身大な気持ちが溢れたこの本に支えられていました。妊婦の乳首を「アメリカンチェリーではなくて液晶テレビの黒」と言い切ってくれたことに爆笑し、最後「ありがとう1歳」の章、1歳のお祝いの席で赤ちゃんではなくなった我が子を見ながら、赤ちゃん時代のあらゆることを(深夜の授乳、うんちの色、漂うミルクの匂いやはじめて歩いた日や旦那さんとの喧嘩など)思い出すところで、私は本当に生まれてはじめて本を読みながら声を出して泣きました。しかも読み返すたび何度でも泣いてしまう上に、子どもに「生まれてきてくれてありがとう。きみは私の赤ちゃん」と恥ずかしながら心の中でつぶやき抱きしめてしまいます。自分の妊娠出産の全ての思い出がこの本を読むとぐわぁっと押し寄せてきて、たとえ1日に100万回「ママ」と呼ばれても「なにー?」とご機嫌に返せる勢いです。本当に余計なお世話で押し付けがましいと思いながらも、知人が妊娠すると、プレゼントしたくてウズウズする本です。
と、子どもには寛容になれても、家にいてイライラが募るのは普段一緒にいない夫。お互い仕事しているのに、こちらが全力で子どもの相手をしているのが見えているのかいないのか、自分は別室でzoom会議なんてしてみたりして、心の般若が炸裂しそうです。そんな時に読みたいのは、椎名誠さんの『岳物語』。シーナさんちの岳少年が、プロレス、釣り、カヤックで川を下ったりとワイルドに「おとう」と過ごし成長する物語。これは義理の母が「こんな風に子育てしたいと思った本」と教えてくれたもので、ふと、「そうだ、夫もお母さんにとっては大切な赤ちゃんだったんだ」と目からウロコが落ちまくりました。おとうと岳少年のやりとりを読んでいると、母には母の、父には父の子育てがあるのだなと、夫のことも千歩くらい譲って温かい眼差しで見られるような。
と、そんな私たち家族を、いつもと変わらず白けた美しい目で見ているのが、うちの猫。こちらもかけがえのない家族です。角田光代さんの愛猫トトの超絶かわいい写真も満載のエッセイ『今日も一日きみを見てた』のごとく、家にずっといて見ていると猫が本当にずっと寝ていることに感心。再読しながら、この子とも今ほど一緒に過ごせる時間はないなぁと無性に愛しくなり撫で回し吸い回して嫌がられています。「いつかいなくなったら……」はペットと過ごす人なら誰でも考えるいちばんの恐怖。山田かおりさんの『猫には嫌なところがまったくない』では愛猫2匹を失った後の山田さんの色んな思いに涙が止まらないのですが、2匹と一緒にいる時の爆笑エピソードの数々に、いつかいなくなってしまうけれど、今がとても幸せなことがいちばん幸せ、と、ちょっと勇気をもらいます。
前出の川上さんのエッセイで、保育園に自分が子どもを預けてることに対して人に「なんや、オニ(赤ちゃんのあだ名)ぜんぜんミエコと一緒にいーひんやん」的なことを言われて複雑な気持ちになるところがあります。私もいつもどこかでそういう申し訳なさみたいなものを子どもに対して感じていたところがあります。でも。
いつも一緒にいられないけど家族。また普段通りの生活が始まって、家族が忙しくなった時に、そしていつか子どもが、家から巣立って行く時のためにも、家に家族と一緒にいられる今の家時間を大切に家族と密に過ごす心のヒントが溢れるエッセイや私小説は、他人のインスタグラムで家の中を覗くみたいでもあり、オスススメです。
#こんな時だからこそ読みたい本
#こんな時だからこそ読みたい本 幻冬舎社員リレー
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