22人目は、校正部門の江幡祥子です。
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家に引きこもるのは大得意な私ですが、こう長引くとさすがに気が滅入ってきます。容赦なく襲ってくる現実に立ち向かうためにも、そこからしばし心を切り離す時間も必要。ということで、物語の世界に没頭できるような本をご紹介します。
第二次世界大戦時、チャーチル首相誘拐の密命を帯びたドイツ落下傘部隊の精鋭たちを描く『鷲は舞い降りた』(ジャック・ヒギンズ、ハヤカワ文庫)。
もちろん史実としてチャーチルの誘拐なんてないわけですが、計画を着々と進めていく彼らの姿に、成功してしまうのでは……? と思わされます。部隊員の男たちだけでなく、舞台となるイギリスの寒村に送り込まれる女性スパイや、工作員として活動するアイルランド共和軍の兵士など、キャラクターも魅力的。
文庫で約600ページですが、ぐいぐい読まされる冒険小説です。
7世紀末、唐・新羅に立ち向かうため、中央集権国家づくりに邁進し、律令の制定を目指す讃良大王(持統天皇)の奮闘を描いた『日輪の賦』(澤田瞳子、幻冬舎文庫)。
古代ものはなかなかない上に、中心人物が女性。さらに、大王に仕える男装の女官。そこでまず心躍ります。「倭」から「日本」への変化の過程を描いた歴史小説であると同時に、理想を追い求める女性たちの戦いの物語でもあります。
紀元2世紀、ローマ人でありながらケルトの戦士として育てられた少年が故郷を追われ、父母の地へと旅をする『ケルトとローマの息子』(ローズマリー・サトクリフ、ほるぷ出版)。困難がこれでもかと降りかかり、精神的にも身体的にも追いつめられていくさまは読んでいてつらくなるほどですが、だからこそ、最後の最後で居場所を見つけた少年が得る希望と安息が沁みます。
少しだけ、現実の世界から離れる時間が、心の健康を守ってくれるように思います。
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