23人目は、第三編集局の羽賀千恵です。
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緊急事態宣言以降、これから世の中がどうなっていくのかさっぱり想像つかず、企画がまったく思い浮かびません。編集としてやばい。やばすぎる。とはいえしょうがないので、「これしたい」「あれしたくない」「これはしとかないと」という自分の肌感覚だけで1か月ちょっと過ごしてきました。
とりあえず、政府のコロナ対策の遅さにぷりぷり怒りながら、毎日土鍋でごはんを炊いてます。あと人生で初めてタケノコを茹でました。茹で加減がなかなか難しいので、来年リベンジしたい所存。「にわか丁寧な暮らし」ですが、ちゃんと食べて怒る。そんなことを心掛けて生きていきたいと思う今日この頃です。
そんななか、積ん読から「なんとなく今読んどかないと」と思ってやっと読んだ1冊と、「心が疲れたらぜひ手に取って頂きたい」1冊をご紹介させてください。
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まずは『夜と霧』。言わずとしれた名作ですが、まだ読んでない方に朗報。内容の重さはさておき、すぐ読めます。2時間くらいで大丈夫。
なんで今読まなければと思ったんだろう……と改めて考えてみたのですが、今回のコロナ、発生から時間が経てば経つほど「人災」の側面が大きくなっていくと感じたからでしょうか。強制収容所での日々とコロナ禍を重ねるのは不謹慎かもしれませんが、予測不可能な状況において人の心がどう揺れ動くのか、知っておきたいと思ったのです。
「わたしたちは、あいかわらず、なにもかもうまくいくはずだ、と考えていた。なぜなら、今なにが起こっているのか、その意味をまだとらえかねていたからだ」
「人間はなにごとにも慣れることができるというが、それはほんとうか、ほんとうならそれはどこまで可能か、と訊かれたら、わたしは、ほんとうだ、どこまでも可能だ、と答えるだろう」
といった、今を想起させるような心理変化が描かれている一方で、人が最後に持つ、何物にも侵されない気持ちは愛である、というそれは予想していなかった、そんなロマンティックな展開が、という下りも。
体験者であり、心理学者である著者だからこそ記すことができた、非常事態の心の在りようを描いた貴重な1冊だと思います。
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次は「心が疲れたら手に取って頂きたい1冊」ということで、手前味噌ながら担当本より『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』。
担当作品をエゴサするのは編集者の日常だと思うのですが、宣言前後から、本書を読んで下さる方が妙に増えているように感じます。失われてしまった(かもしれない)ささやかな日常の妙が味わえるところ、そして、不安や焦り、そういった感情がふんわりと和らいでいく読後感ゆえかなと思いつつ。よかったらぜひお手に取ってみてください。
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