25人目は、第三編集局の君和田麻子です。
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打ち合わせや会食がなくなり、週末もずっと家にいる今だからこそ、いつか読もうと山積みになっていた本を手に取るが、なぜだか全く集中できない。結局、以前読んだ本を久しぶりに読み直している。
『アウシュヴィッツの図書係』は、実在するディタという女の子の物語。彼女の仕事は、強制収容所で固く禁じられている本を隠しもち、子供達に読み聞かせたり、教師に貸し出したりすること。図書係といっても、本は8冊だけ。見つかったら即処刑されてしまう、まさに命がけの仕事だ。
寒さに震え、空腹に耐え、行動が制限され、自由にできることなんて何一つない。それでも、彼女の心はいつだって自由だ。
「本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなもの」「本はどんな靴よりも遠くまで連れて行ってくれた」という彼女の言葉に、改めて本の持つ魔法のような力を再認識する。
「笑っている限り、わたしたちは大丈夫」と語っていた14歳の少女は、現在91歳でイスラエルに暮らしていらっしゃるとのこと。
図書館つながりでもう一冊。西加奈子さんの『うつくしい人』は、自分に自信がなく、いつも人の目を気にしている主人公の物語。会社を辞め、旅先のホテルの図書室で、探し物をするが……。本は空間だけでなく、時間をも超えて魔法をかけてくれる。いま、旅に出ることはできないけれど、本を読むことはいくらでもできる。
#こんな時だからこそ読みたい本 幻冬舎社員リレー
幻冬舎社員がリレー形式で「こんな時だからこそ読みたい本」をおすすめします。
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