自分の軸を作る、一生物の財産を養うための勉強には、特別な努力や苦労は必要ないとおっしゃる元マイクロソフト社長、成毛眞さん。著書『勉強上手 好きなことだけが武器になる』は、2012年の刊行ですが、先の見えないこの時代だからこそ身につけておきたい、人生を豊かにする勉強法が記されています。テレビやインターネット、SNSまでも駆使した大人のための勉強法と、著者の「勉強」に対する考えや人生の楽しみ方をご紹介します。
本の内容は忘れていい
私は、読書は質より量だと考えている。
だが、量をこなすために速読術を身につけるのは愚かしい行為だと思う。
本を数多く読むうちに、いずれスピードはついてくる。テクニックで本を流れるように読んだとしても、それは読書とはいえない。内容を深く理解するのではなく、表面的になぞっているのだから、スーパーのチラシを読むのと大差ないだろう。
数多く読むうちに、読み飛ばし方は段々分かってくる。
読むのが速い人は、最初から最後まで読み通すのではなく、目次に目を通して気になる項目だけを読んでいる。二、三項目読めば、その本を七、八割理解したも同然だ。
そもそもどんなに記憶力がいい人でも、本一冊すべての内容を覚えられるわけではない。自分の興味の引かれたところしか覚えないものである。
だから、多読の人は、今の自分に必要な情報しか仕入れない、効率的な読み方を身につけている。その力の入れ加減は、本を読みこなすことでしか身につかないものだ。
本を読み飛ばすと聞くと、「内容を覚えられないのではないか」と思う人もいるだろう。
受験勉強ではないのだから、本の内容をすべて覚える必要はない。
とくに多読の人は、読む量が多いので、常に頭の中が上書きされている状態である。下手をすれば一週間前に読んだ本の内容を忘れている場合もある。だとすると、その程度の本だったのだから、忘れてもいいのだ。
それどころか本の内容そのものは二の次だ。
その情報に触れたとき、自分がどう思うか、どう感じるかという感性や思考が大切なのだ。今までAという考えしか持っていなかった人が、Bという情報を本から仕入れてCという考えを持つようになる。
そのように、自分の思考の幅を広げて、変質させるための手段が読書なのである。だから、読んでも思考は何も変わらず、何も感動を得なかったのなら、その時間はムダになるのだ。
私自身は、書評を書いた本の内容は覚えているが、それ以外の本はほとんど覚えていない。だから、同じ本をまた買ってくることもある。パラパラ読むうちに、「あれ、この本読んだな」と記憶がよみがえってくるのだ。
ググるときも、その用語の意味を覚えようとはしていない。
解説を読んでいるときは「なるほどね」と思っていても、数時間後には忘れているかもしれない。その時点での興味を満たせればいいという感覚で、真剣に研究しているわけでもない。
実際には、内容を覚えていないといっても、記憶のどこかには残っているものだ。原稿を書く際に「あの本の情報を入れよう」と突然思い浮かぶときもある。それで読み直すと、自分でも呆れるぐらいにきれいさっぱりと内容を忘れていたりする。また新しい本を読んでいるような感覚で読めるので、それはそれで刺激になっているのではないかと思う。
勉強上手 好きなことだけが武器になる
自分の軸を作る、一生物の財産を養うための勉強には、特別な努力や苦労は必要ないとおっしゃる元マイクロソフト社長、成毛眞さん。著書『勉強上手 好きなことだけが武器になる』は、2012年の刊行ですが、先の見えないこの時代だからこそ身につけておきたい、人生を豊かにする勉強法が記されています。テレビやインターネット、SNSまでも駆使した大人のための勉強法と、著者の「勉強」に対する考えや人生の楽しみ方をご紹介します。