自分の軸を作る、一生物の財産を養うための勉強には、特別な努力や苦労は必要ないとおっしゃる元マイクロソフト社長、成毛眞さん。著書『勉強上手 好きなことだけが武器になる』は、2012年の刊行ですが、先の見えないこの時代だからこそ身につけておきたい、人生を豊かにする勉強法が記されています。テレビやインターネット、SNSまでも駆使した大人のための勉強法と、著者の「勉強」に対する考えや人生の楽しみ方をご紹介します。
分からない用語を5つググれば情報の質があがる
私がどのようにググっているのか、一例を挙げよう。
『友達の数は何人? ―ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン ダンバー著 インターシフト)という本を読んだときのことである。
サブタイトルにあるダンバー数とは、「友達や上手くいく集団の人数は150人までである」とした仮説である。これ自体「へえ」な情報だが、それ以前に「進化心理学」というカテゴリー自体が面白い。そのようなジャンルがあるのかと、迷わず手に取った一冊だ。
この本はダンバー数に関する話は、実はほんの少しだけである。
言葉の起源はサルの毛づくろい、一夫一婦が脳を発達させた、集団で笑うのはヒトだけ、といったさまざまな説が科学的なデータとともに次々と展開される。気になった箇所に付箋を貼っていくと、「ほぼ全ページに貼ったのではないか?」というぐらいのボリュームになってしまった。
この本で説明してある用語についてはググる必要はないが、「フェニキア人」「バスク語」といった単語が何の説明もなく使われていると読む手が止まる。
「フェニキア人ってどんな民族だったっけ?」「バスク語ってどんな言語だろう」と気になり、その場でググってみるのだ。
このような感じで、気になる用語や分からない用語を検索すると、本を読み終える頃にはその本から得た情報に加えて、ネットで得た情報も加わる。そうすると、その本を書いた著者レベルの知識が身についたのに等しいのだ。
つまり、情報に奥行きが生まれるのである。
本から得た情報を覚えるぐらいなら、誰にでもできる。だが、それだと表面的な理解に過ぎない。その情報に奥行きを与えるなら、その著者が注釈をつけずに書いている「当たり前の知識」を自分のものにするのが一番だろう。その本の参考文献を自分で探し出す感覚である。
最低でも5つの用語をググれば、かなり情報に奥行きは生まれるはずだ。その本自体はたいした内容ではなくても、知らない用語が出てきたら調べる価値はある。
同じように、疑問に思う情報が出てきたら、やはり即座にググってみる。
たとえば、医療や科学の分野はめまぐるしく研究が進んでいるので、「傷口を消毒してはいけない」「傷口は湿潤状態のほうが治りがよい」などと、それまでの定説がひっくり返っているケースも多々ある。
この傷口の話が気になった人は、ググってみるといいだろう。そしてより詳しく知りたくなったら、関連書籍を買えばよい。
そうやって本とネットを組み合わせれば、情報は際限なく手に入れられる。それも、本しかなかった時代と比べて、相当なスピードで情報を蓄積できるのだ。
ググりたいことが見つからなかったら?
それは、選んだ本が相当つまらなかったのだと言ってあげたいところだが、選ぶ側に問題がある。
今の自分の身の丈にあった本を選んでいたら、知らない情報など出てこないだろう。
内容が分からないからと読むのをやめたら意味はない。その本の内容をこれから理解するために読むのだ。
だからといって、いきなり小難しい専門書に挑戦するのは無謀だが、背伸びをして本を選ぶ必要はある。今まで自分がチャレンジしたことのないジャンルの本や、分からない単語が五つは載っている本を積極的に選んだほうがいいだろう。それも興味があって、自分の知識や見聞を広げてくれる本なら最高のテキストである。たとえば私は大型船にほれこんでいるので、専門家やマニアしか読まない本もホクホクしながら読んでいる。
さらにいうなら、あえて自分の仕事とは関係のないジャンルの本を読むべきである。
会計士が会計の本しか読まないのは当たり前。そのような会計士はごまんといるだろう。もし歌舞伎について詳しい会計士がいたら、会計士の視点で歌舞伎という文化事業をどう観ているのか、私としては気になる存在である。
そのように、本業とは関係ない分野で専門家になれるぐらいの知識を持っていれば、それは自分の付加価値になり、強みにもなる。そのための勉強なら大歓迎である。
私は脳の専門家ではないが、知らない情報に常に触れていないと脳は活性化しないのではないかと思う。若い世代と話していると、万年思考停止状態に陥っている人が多いのに気づく。おそらく脳をまったく機能させてこなかったのだろう。若いときから自分の半径一メートル以内のことにしか興味がないと、恐ろしいぐらいに思考力のない人になってしまうのだ。
未知の世界に触れ、脳に刺激を受け続けると、いつまでも柔軟な発想を持っていられるだろう。そのためにも本は最適なツールである。
これはテレビも同じである。テレビを観ていて何も引っかかる情報が出てこなかったら、今の自分の情報量も世界観も何も変わらないということになる。そのような番組をいくら観ても時間のムダだ。
本もテレビも、情報を仕入れるのを目的にすると、読み方や見方は変わってくる。情報は受身で仕入れるものではなく、能動的に仕入れに行くものだ。ググるのもそのための手段である。
勉強上手 好きなことだけが武器になる
自分の軸を作る、一生物の財産を養うための勉強には、特別な努力や苦労は必要ないとおっしゃる元マイクロソフト社長、成毛眞さん。著書『勉強上手 好きなことだけが武器になる』は、2012年の刊行ですが、先の見えないこの時代だからこそ身につけておきたい、人生を豊かにする勉強法が記されています。テレビやインターネット、SNSまでも駆使した大人のための勉強法と、著者の「勉強」に対する考えや人生の楽しみ方をご紹介します。