「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。
コロナウイルスの影響で生活スタイルが変わり、家事や掃除のやり方について改めて考えた方も多いのではないでしょうか。本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。
未曽有の状況でまだまだ不安定な日々ですが、本書で自宅時間を少しでも発見のあるものにして頂けたら幸いです。
毎朝パソコンの前に座ると、まずはじめに「ラジコ」を立ち上げます。月曜日から木曜日までは、J‐WAVEを。ブルートゥースで飛ばして、BOSEのミニスピーカーを通して聞いています。パーソナリティの別所哲也さんの「おはよ~モーニング~!」という元気な声を聞くと、「よっしゃ~!」とスイッチが入ります。仕事をする時には、いつも何かしらの音が流れていないと落ち着きません。し~んと静かな中では、逆にいろんな考え事が浮かんできてしまい、集中できないのです。かといって、ラジオの内容を聞いているわけでもない……。隣にデスクを並べて仕事をしている夫が「今のさあ~」とラジオの内容について語り始めても「は? なんのこと?」とチンプンカンプンなことがほとんどです。
でも、時々「わあ、いい曲だなあ~」と思う音楽が流れてくることがあります。そんな時には、すかさずJ‐WAVEのウェブサイトで「オンエア曲」の欄をチェック。すぐさまiTunesでダウンロードしたりします。いつも直感で選ぶので、私のiTunesの中は、まったく脈絡のないリストが詰まっています。
文章を書く時、私が無意識のうちに気にしているのがリズム感です。時折、編集者が入稿の際に文字数調整などのため、原稿の語尾を少し変えていたりします。校正の時にチェックすると、人が手を入れたところは必ずわかります。そこだけ文章のリズムが違うから。意味はまったく変わらなくても、読み進める時に気持ちがいいリズムが、私にとっては大事なのかもしれません。聞いてはいなくても、書いている空間に音楽がないと落ち着かない……というのは、どこかそんなところと関係しているのかもしれないなあと思います。
金曜日と土曜日、そして夕方から夜にかけてはなかなか気に入るラジオ番組がないので、iTunesで音楽を聞きます。日本語だと歌詞が耳についてしまうので洋楽を。流していることさえ忘れてしまう静かな音楽が多いよう。クラシックならバッハ、ジャズならキース・ジャレットやニーナ・シモン、そのほかジョン・メイヤーやハルカ・ナカムラなど、そのジャンルはバラバラです。
文章を書く仕事は、ずっとパソコンと向き合っているので、気分転換がなかなかできません。そんな時にラジオや音楽は大きな助けとなります。ふっと一段落した時、ラジオの内容が耳に入ってきます。どこか海外の街の話だったり、おいしいスイーツのレポートだったり、知らないミュージシャンのインタビューだったり。しばらく手を止めて「へ~!」「ほ~!」と聞き入ってメモを取ることも。そこで紹介されているものを、目の前のパソコンですぐに調べられるのもいいところです。アマゾンで本をポチったり、お店のホームページをのぞいたり。それは、私にとって書斎にいながらお散歩しているようなもの。少し遊んだら、また原稿に戻り、いつの間にかまた音やおしゃべりは聞こえなくなっていきます。
若い頃、ワンルームマンションに住んでいて、原稿の合間についついテレビをつけていました。はっと気づくと1時間、2時間が経ってしまうこともしょっちゅう。夜11時頃、ドラマなど私が面白いと思う番組がすべて終わってしまってから、やっと本腰を入れて原稿を書き始めていたなあと思い出します。あの頃の私は、なんて注意力散漫だったことでしょう! 原稿を書かなくてはいけないのに書きたくない。その逃げ場がテレビでした。対してラジオは、正面から向き合わなくても、窓からの風のように「今やっていること」のすぐ横で、姿を消して流れていってくれるのがいいところ。
集中と解放。それを使い分けて、1日の中に自分だけのリズムを刻むことができるようになったら、ご機嫌に過ごせるのかもしれません。
暮らしの中に終わりと始まりをつくる
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。
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