結婚、仕事、人間関係……ただ生きてるだけでも悩みは尽きません。「自分の人生、これからどうなっていくんだろう」とぼんやり不安を抱えていませんか?
お坊さんである英月さんの本『お見合い35回にうんざりしてアメリカに家出して僧侶になって帰ってきました。』には、そんな人生の不安を吹き飛ばしてくれるヒントがたくさんあります。
彼女のハチャメチャな人生を知れば、きっと自分の人生も開けて見えてきます。その中身を、本書より一部公開いたします。*前回「人を負かしてのしあがる。それのどこが悪いの?」
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そうして、爪に火を点すようにしてお金を貯めた私は、今度は道具としてそれを使い始めます。まずは、カレッジに進学しました。就職活動でアメリカ国内を移動する時も、以前とは違い、躊躇なく飛行機のチケットが買えます。それだけではありません。外食、買い物、そして旅行を楽しむこともできるようになりました。そうして今現在の生活が安定してくると、将来のことを考えるようになります。
日本に帰る気など、そもそもなかった私。さて、この先どうしようか。祖国から遠く離れた外国で、一人で生きていくのか。パートナーがいた方がいいかな、と。ここで私は、まさかの行動に出たのです。こともあろうにアメリカで結婚相談所に申し込んだのです!
まさかのお見合いアゲイン
恐るべき、刷り込み。ヒヨコもびっくりです。「結婚」=「お見合い」との思いこみの呪縛は、アメリカに行っても続いていたのです。
アメリカで結婚相談所なんて意外だと思われるかもしれませんが、実は色々あります。
特定の国の女性と、アメリカ人男性を紹介するものから、アメリカ人同士のものまで。私が入会したのは日本人女性とアメリカ在住の男性を紹介する日系の会社で、登録料が高いことと、男性の入会基準が厳しいことで有名でした。一番高額なコースは一〇〇万円を超えていましたが、いくら道具としてのお金を貯えたとしても、そんな大金をつぎこむ気はなく、紹介される人数や内容に制限がある、一番安いコースを申し込みました。金額にして一〇万円ちょっと。決して安い金額ではありませんが、一〇〇万円のコースと比べると気休めに入会したようなものです。将来に対して、私は何らかの行動を起こしていますよ、と。自分で自分を納得させるため、そして、ひょっとしたら素敵な殿方に出会えるかもしれないという、ほのかな期待をこめて。
気になるアメリカでのお見合い。それはマッチングという方法で行われます。入会時に、履歴書、身分証明書、そして収入がわかるものなど、資料を洗いざらい提出します。それだけでなく、自分自身のことや相手に求めることなどを事細かに聞かれます。それらの資料を基に、マッチメーカーと呼ばれる人たちがお相手を決めます。そして、お見合い。翌日には、マッチメーカーから連絡が入り、事細かにデート内容、相手の人に対する印象を聞かれます。そしてお互いがまた会いたいと答えれば、マッチメーカーが女性の連絡先を男性に伝え、個人的にデート開始。デートをしていても真剣に結婚を考えて付き合うまでは、続けて他の人を紹介してもらうことができます。日本の感覚だと不誠実に感じるかもしれませんが、アメリカでは普通のこと。コミットメントをするまでは、他の人とデートをしていても、後ろ指を指されることはないのです。
入会時に事細かに相手への希望を聞かれましたが、特にこだわりもなかった私は、「ご縁があれば、誰でも~」と答え、収入に関しても、「特に希望はないですね~」と答えていました。すると「それでは困ります。ある程度の希望を言ってもらわないと」と迫られ、「収入は多ければ多いほど嬉しいですけどね~」と半ば冗談で答えたら、冗談にならないくらいのお金持ちばかりを紹介していただくことに。人種も、白人の方から、中国系、インド系、日系人、日本人と、様々。年齢も特に希望を伝えていなかったため、数歳下から一回り以上の年上まで。こんなに多くの男性が日本人女性との出会いを求めて、決して安くない登録料を払っているんだと思うと、ちょっと驚きました。
そうなんです。数人しか紹介してもらえない安いコースに申し込んだにもかかわらず、多くの方たちを紹介していただくことになった私。オトクなのですが、皮肉なことに、このことが原因で素直に喜べない事態に陥ってしまったのです。
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次回は6月19日公開予定です。
お見合い35回にうんざりしてアメリカに家出して僧侶になって帰ってきました。
うちの安住の地って、どこにあるん?
親のお見合い攻撃にキレて、なんと海外逃亡。アメリカに骨を埋めるつもりが、仏教に出会ってしまい……。ハードな人生に笑えて泣ける、奮闘エッセイ。