こんなハズじゃなかった、何者かになりたかった。そんな若者の姿を描く青春小説『明け方の若者たち』。カツセマサヒコさんのデビュー作です。書店員さんたちから届いた感想を、ご紹介します。
* * *
「リフレインが叫んでる」
通勤電車で読み終えた後、
ユーミンのあの歌が、ぼくには確かに聴こえた―。
年代や時代背景や経験が違えども
今思えば、ぼくらのマジックアワーも美しかった。
共感度、相当高いです!
書き止めたり、胸に刻んだり、
ちょっと嫉妬してしまうほど言葉のセンスはさすがです。
時の経つのも忘れさせてくれました。
(本の王国グループ・宮地友則さん)
これは極めて刺激的で鮮烈な文学世界だ!
この時代、この世代、この場所が書かせた物語……
人間の心の底から湧き上がる赤裸々な思いの丈に、
激しく魂が揺さぶられ胸が締めつけられた。
淡くて繊細な光の粒子まで見えるような空気感、
体温や匂いまでも感じさせるようなヒリヒリとした描写、
心情そのままを吐露した率直過ぎる言葉の数々、
表現のすべてが押し寄せる波のように全身を包みこみ、
青春という名の説明できない感情を呼び覚ますのだ。
人は誰でも出会いと別れを繰り返しながら、
理想を思い描き現実との折り合いを見つけながら生きている。
悶々と過ごして何者でもなかった自分を認識し、
そうした時代が今に繋がっていると気づいた時に、
人ははじめて成長したと言えるのかもしれない。
読みながらあの時の自分や仲間たちに再会できた。
「僕」と一緒になって天国も地獄も体験できた。
美しさと残酷さは隣り合っているという怖さもある。
取り乱した感情の中から人を愛する尊さを再認識できた。
後悔があるからこそ希望の光も眩しく輝くことを思い出した。
そして自分にもかけがえのない過去があるから今を生きていることも。
2010年代をそのままに描き切ったこの作品は、
これからを生きる僕たちにとってのバイブルだ。
今の時代に刻まれる価値がある! 素晴らしい!
(ブックジャーナリスト・内田剛さん)
20代、過ぎてしまえば一瞬のことだったかもしれないが、この時期の体験、経験は、一生のうちでも一番濃密で、思い出深い時代だと思う。
特に恋愛においては、その後の人生を大きく左右する。
そんな20代の若者を描いた青春小説。
決して「ハッピーエンドな物語」とは言えないが、心に深く残る一冊でした。
(本の王国 南安城店・莨谷俊幸さん)
主人公のメンヘラチックな女々しさや情景描写が妙にリアルで儚く、
実在しそうなありがちな人生の一例を読んでいるようで
共感とともに、本当にこんなはずじゃなかったんだよなぁ……と
複雑なもやもやした気持ちが残る、そんな作品でした。
(ジュンク堂書店名古屋栄店・近藤梨乃さん)
海岸の一部を見ただけで「まあ海ってデカいよね。陸地なんてちっさいちっさい」とか語ってしまうような若い男子にありがちな無意識化の傲慢さ、それとは対照的に過去の思い出を飴玉をなめるようにいつまでもいつまでも心の中で撫でて果てに泣き出すようなハートの柔さ。
そのへんが男子小説だなーという気がすると同時に、こういうのって時代が変われど大本は根本的に変わらないんだな、と実感します。
「二十三、四歳って人生のマジックアワーだったと思うのよね」
は引きのあるワードでしたね。
自分の若いころ(のダサさ)をいろいろと思い出させてくれる小説でした。
(伊野尾書店・伊野尾宏之さん)
明け方の若者たち
6月11日発売、人気ウェブライター・カツセマサヒコさんのデビュー小説、『明け方の若者たち』をご紹介します。
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