「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。
コロナウイルスの影響で生活スタイルが変わり、家事や掃除のやり方について改めて考えた方も多いのではないでしょうか。本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。
未曽有の状況でまだまだ不安定な日々ですが、本書で自宅時間を少しでも発見のあるものにして頂けたら幸いです。
3年ほど前から必ず毎日洗濯するようになりました。理由は毎朝、お風呂を掃除してバスタオルで水分を拭き上げるようになったから。濡れたバスタオルをそのままにしておきたくなくて、毎日洗濯機を回すようになったのです。
私は洋服をクリーニングに出すことは滅多になく、シャツもウールのパンツもカシミアセーターもすべて家で洗います。さすがにウールやカシミアは、別にオシャレ着用の洗剤で洗いますが、その他はすべて一緒に。衣類は、外出から帰宅して脱いだら、「無印良品」の洗濯ネットに入れて洗濯機へポイ! このネットがとても大事。黒やネイビーの服はそのまま洗うと白い糸くずがつきがちです。でも、細かい網目のネットはそれを完璧にシャットアウト。濃い色の靴下も、必ずSサイズのネットに入れて洗うようになりました。
朝起きると、半身浴をし、お風呂を掃除して、ストレッチをしてから、そのストレッチ用Tシャツも洗濯機に放り込み、スイッチを入れます。そのまま仕事に取り掛かかり、1時間ぐらい経つと、お腹がすいてギュウと鳴ります。ちょうどそれぐらいに洗濯が終了しています。朝食がわりの果物を食べる前に、洗濯物を干し始めます。
時間がない時には、なかなか面倒くさいものですが、私はこの洗濯物を干すという作業が嫌いではありません。さっぱり洗い上がったシャツをハンガーにかけ、タオルはピンチハンガーに1枚ずつ吊るし……。洗濯カゴの中でからまった洗濯物をほどきながら、パシッと伸ばし干す。黙々とその作業を続けていると、こんがらがっていた自分の頭や心まで、整ってくる気がします。
毎回1枚ずつ洗濯物を手に取りながら「家事って時間がかかるよなあ」と思います。どんなに急いでも、洗濯物を干す時間を極端に縮めることはできません。早く終わらせて、またパソコンの前に戻りたくても、必要な時間は必ず必要なのです。つまり、降参しなければ仕方がないということ。こうやって無理やり仕事をシャットダウンされることで、私は「暮らし」という土台に足を下ろすことができているような気がします。
家の中ですべての洗濯物をハンガーとピンチハンガーにかけたら、それを持って庭に出ます。物干し竿に干してやっと終了。庭に出ている時間はほんの1~2分です。でも、このわずかな時間で、毛穴を全開にして「外」をチェックします。まずは、「今日は風が涼しいなあ」とか「光が明るくなってきたかな」と肌で感じることを。次に、夏は「ミントの葉がもりもりと元気よく茂ってきたなあ」とか、秋には「紫式部がぷっくりと蕾を膨らませてきたなあ」と、目に見える小さな変化を。
2年ほど前に奈良の「秋篠の森」で買ってきたヤマシャクヤクを庭に植えました。次の年には咲かなくて、今年やっと1輪の大きな花が咲き、その嬉しかったこと! 蕾を見つけてから、今日かな? 明日かな? と心待ちにしていたのですが、ある日洗濯物を持って廊下に立った時、窓の外に真っ白で気高いその姿を見つけて感動! 自分の庭に花が咲くって、どうしてこんなにも嬉しいんでしょう?
特別植物好きというわけでもないのに、春先に白いコトブキが1輪花開いた時にも、冬の冷たい空気の中、クリスマスローズの蕾を見つけた時も、毎年その自然の営みに心が躍ります。1年経ったら必ず花が咲く。1年経って咲かなくても、2年後には咲く。その確かさに、感動するのかもしれません。青空の下で洗濯物を干しながら、自分の手が届かないところにあるエネルギーの素もとから、パワーをもらっている気がします。
暮らしの中に終わりと始まりをつくる
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。
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