70歳を迎えた今も、現役で活躍し続けている伝説のモデル・我妻マリさん。
17歳でモデルデビューした後、サンローランのオート・クチュールモデルを10年間務め、パリコレへ進出。
イッセイ ミヤケ、ティエリー・ミュグレー、ジャン⁼ポール・ゴルチエなど数々のショーで活躍し、日本人モデルがパリコレクションへ進出する礎を築きました。
そして、60歳を過ぎて栃木県に移住。ファッションの最前線に立ち続ける一方、運転免許も取得し、女ひとり(+猫たち)で自然を謳歌して暮らしています。
本書『明日はもっと面白くなるかもしれないじゃない?』は、そんな我妻マリさんの初めての著書。50年以上のモデル歴で培った、おしゃれの真髄、体の慈しみかた、そして年齢を重ねることについて―。少しずつですがご紹介いたします。
田舎であっぱれと思ったのは、土地に根付いて生きてきたおばあちゃんたちの力強さと人生の知恵。
戦争で男の人たちがみんな取られたときも、村を守ってきた人たちだから、気丈だし意志も強い。
とくに私がお世話になっているおばあちゃんは、戦争中に村のリーダーになって、野菜の作り方でも木の切り方でも村の人に教えてきた人で、なんでも知っているの。
決めたことは必ずやり通す。「私はものすごく負けず嫌いなんだよ」と自分でも言っているけれど、子どもたちの世話にはならないと、94歳で一人暮らしをしています。
私の家もおばあちゃんの家も、丘の途中にあるから、毎日が雑草との戦いなのね。おばあちゃんは、すぐに伸びてくるのを全部手でひとつずつ取るんです。手で引っこ抜くのは、そうしたほうが次がすぐ出てこないから。その集中力がすごいの。あれは神様でも真似できないくらいの集中力よ。
おばあちゃんは、それを自分の家だけじゃなくて、私の家までやってくれるんです。仕事から帰ってくると、道がきれいになっている。あの優しさには頭が下がります。
おばあちゃんのところは畑をやっていて、野菜も、苗を買うんじゃなくて、種から育てているのね。子どもを育てるように、種に話しかけるのよ。これが、無農薬で美味しいの。虫が出てきてもぱっと箸でつまんでとっちゃうんだから。
自然に生えてくるものも美味しいのよ。つくしやタケノコ、あとはコゴミ。小さいうちにコゴミを採って味噌で炒めたりすると美味しいんですよ。
私も庭で野菜をやるといいわよと勧められたんだけれど、だいたいのお野菜って花が咲くのね。ネギも可愛い花が咲くんですよ。そうすると情がわいて食べられなくなっちゃう。だから、私にお野菜づくりは無理だと思って、花や枝ものを植えるようになりました。
朝、畑を見に行って、雨が降っていないときはお水をやるのだけれど、お花によって水の欲しがり方が違うのね。いっぱい水を欲しい子もいるし、そうでもない子もいるんですよ。
お店で買うときにだいたいの育て方は聞くけれど、土によっても育ち方は違うし、日のあたり方でも違うわね。太陽が好きな子も苦手な子もいる。様子を見ながら育てて、ここは暑いんだなと思ったら、いっぱい水をあげたり、植え替えたり。ハーブを植えておくと、虫もこないのよ。いまではすっかり、花づくりのとりこです。
明日はもっと面白くなるかもしれないじゃない?
我妻マリ。モデル歴50年。今もファッションの最前線に立ちながら、60歳を過ぎて田舎へひとり移住した彼女が語る「受け入れる、けれど諦めない」37の生き方。
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