「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。
コロナウイルスの影響で生活スタイルが変わり、家事や掃除のやり方について改めて考えた方も多いのではないでしょうか。本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。
未曽有の状況でまだまだ不安定な日々ですが、本書で自宅時間を少しでも発見のあるものにして頂けたら幸いです。
朝起きてストレッチをし、ホームページ「外の音、内の香」を更新すると、だいたい8時ぐらいになります。そこから洗濯物を干したら、朝ご飯を食べます。と言っても、食べるのは果物のみ。朝に大好きなパンを食べなくなって3年ぐらいが経ちます。きっかけは取材で「朝は排泄の時間だから、果物だけにした方がいい」と知ったことでした。本当はパンが大好きだから、食べられないのはつらいのですが、果物だけにしてから、朝の仕事のパフォーマンスがぐんとよくなりました。炭水化物を食べないことで、眠くならず、原稿がさっさかはかどります。便秘気味だったのに、お通じもよくなり体調が整いました。
実は私の朝ご飯には、さまざまな変遷があります。つい半年前までは、スムージーを作って飲んでいました。バナナ、みかん、りんご、「カルディコーヒーファーム」で売っている冷凍のベリーミックス、小松菜、豆乳をジューサーにかけると、ベリーの効果で美しいいちご色のスムージーが完成します。これがおいしい! なのに、これをやめたのは、パーソナルトレーニングのトレーナーに、「スムージーは体を冷やすし、それよりは果物をそのまま食べた方がいい。口を動かし、嚙んで食べることが大事なんです」と言われたから。
取材でいろいろな方と出会うので、そこでピピッときたことを家へと持って帰りすぐに真似してみます。だから、やっていることがコロコロ変わる……。朝食スタイルも、幾度となく変えてきました。新しいことに出会って、今までの習慣を変えたら、生活にどんな風が吹くのだろう? と観察し、実感し、発見することが大好きです。
ひとつ習慣を変えると、それに紐づいていろんなことが変わってきます。スムージーを作るか、生のフルーツを毎日食べるかで、スーパーでの買い物の仕方が変わるし、冷蔵庫の中身も変わる……。そんな体験を繰り返しながら、生活って「回す」ものなんだよなあといつも思います。ここまでやったら終わり、というゴールはなく、永遠に同じことの繰り返し……。朝食以外にも、毎朝掃除をしたとしても、1日経てばホコリが溜まるし、どんなご馳走を作っても、翌日になればまたお腹がすきます。仕事もしながら、暮らしに必要な掃除、洗濯、ご飯作りという日々の家事を「回す」というのが難しい……。
そこで大事になってくるのは、それぞれを完璧にやることではなく、すべてを並列に並べて、途切れさせずに続ける「システム」を作るということ。つまり、4日に1度バナナを買いに行き、夏はそれが長持ちするように、1本ずつ新聞紙で包んでから冷蔵庫で保存する、ということ。新聞紙に包めば、冷蔵庫の中でバナナが黒ずむこともないのです。こんな「システム作り」こそ、暮らしのいちばんの楽しみじゃないかと思います。
若い頃は、「できないこと」は努力して「できる」ようにならなくちゃと思っていたけれど、今は、「できない自分」を責めないで、私に「できること」を見つけよう、と思えるようになりました。壁にぶち当たったら、ドンドンと叩いて打ち壊すより、ちょっと横に逸れてみて、回り道を見つけて向こう側に行ければいい。
「できること」をひとつずつ見つけて、時間軸の上に並べ、毎日を心地よく過ごせるように、頭を使い考えて、ちょっと違うなと思えば工夫を加えて別の方法を試してみる。その繰り返しが「暮らす」ということなんだと思います。そう考えれば、暮らしって、なんて知的な営みなんだろう! と思うのです。
暮らしの中に終わりと始まりをつくる
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。
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