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和製ダ・ヴィンチ・コード『縄紋』

2020.06.24 公開 ポスト

東京パワースポット巡り「江戸神社」(縄紋散歩その2)幻冬舎plus編集部

神社にお参りに行く時に、「観光名所だから」「七五三で」「初詣で」「お守りを買いに」「ここは出世の神様だから」とか「うちの氏神様だから」とか……。

みなさん色々な理由や目的で神社に行かれると思いますが、「ここはこんな神様で、こんな由来があって」としっかり自覚してお参りに行っている方は意外と少ないのではないでしょうか。

日本はもちろん東京にもたくさんの神社がありますが、その由来や祀られている神様について全部を網羅している人はなかなかいらっしゃらないのでは。

初の歴史ミステリ『縄紋』に挑戦された著者の真梨幸子さんと、『縄紋』の舞台となる場所を散歩する”縄紋散歩”、第二回目は、神田明神。そして本当の目的は神田明神の摂社である「江戸神社」です。

日本最古の神社

さて、神田明神(神田神社)。みなさんご存知でしょうか。参道には二軒の甘酒やさん。真梨さんと「あとでここで甘酒いただきましょうね」と約束をしながら、参道を歩くとすぐに神田明神が現れます。華やかな朱色が眩しい大社。”東京最強”と言われる神社の貫禄を感じます。

天平二年の創建と伝えられ、もともとは今の大手町にあったと言われています。前回ご紹介した平将門の首塚が百歩の地にあります。延慶二年に将門の霊を相殿に祀り、神田明神と名付けられました。元和二年現在地へ遷座し、江戸城の艮鬼門の守護神として歴代将軍の尊崇厚く江戸総鎮守となりました。

平日とはいえ、お参りに並ぶ列は長く、老若男女、ソーシャルディスタンスでご自分の順番を待ってらっしゃいました。

神田明神のお参りを横目に、私たちは摂社に向かいます。境内の脇を歩いていくと、そこにひっそりと佇んでいるのが目的の場所「江戸神社」です。


「江戸神社」は大宝2年(702)、武蔵国豊島郡江戸の地、今の皇居の中に創建された大江戸最古の地主の神です。古くは江戸大明神、牛頭天王(ごずてんのう)あるいはは江戸の天王(てんのう)と称せられたとも言われています。

慶長8年(1603)、江戸城の拡張により神田神社とともに神田台に移り、さらに元和2年(1616)、当地に遷座されました。

明治時代以降に「江戸神社」と名付けられましたがそれまでは、「須賀神社」「牛頭天皇」など呼び方は違ったようで、それについてもまだまだミステリアスなことがいっぱいの神社です。

誰もいない静かなところで、真梨さんと、『縄紋』のお礼のお参りをさせていただきました。

そのあとはあらためて、神田明神へ。江戸最強の神様に東京の、そして日本のことをお祈りしつつ、楽しみにしていた甘酒をいただきに。夏は「甘酒のかき氷」も格別です。

(天野屋さんで甘酒氷を。
こちらはミルクを追加で)

江戸神社と神田明神がアラハバキ?!

さて、その神田明神や江戸神社が、どういう風に『縄紋』に登場しているかといいますと……。破壊の神とされる”アラハバキ”がキーワードになっています。

 

「平将門といえば、首塚ですよね。確か、京都の七条河原(しちじょうがわら)に晒された首が東に飛んでいったんでしたっけ。本当ですかね?」
 興梠の問いに、ちょうどいい答えを見つけた。「将門の首伝説は各地にあるんだが──」直樹は、スマートフォンに表示された内容を自分の知識のようにひけらかした。「──一番有名なのが大手町(おおてまち)の将門塚だ」
「ああ。祟りで有名な、首塚ですね」
「あそこはもともと古墳だったらしい。将門の首が飛んできたとか、将門の首を祀ってあるとかいうけれど、それらは後付けなんだよ。あの場所は、もっともっと古い時代から、霊地として祀られ、そして畏おそれられてきた。その証拠に、あの地にはかつて、江戸最古の地主神と言われる江戸神社、そして五ご穀こく豊ほう穣じようを祈る神かん田だ明みよう神じんが鎮座していた」
「神田明神? でも、今、神田明神は千代田区外神田(そとかんだ)にあるじゃないですか」
「江戸時代に、今の場所に遷されたんだよ」
「なるほど。じゃ、神田明神は、かつては大手町……首塚がある場所にあったんですね。……っていうか、江戸神社はどこに?」
「神田明神が今の場所に遷されたときに、神田明神の摂社になった」
「なるほど。ここでも、神社の吸収合併が行われていたんですね」興梠の指のスピードがますます上がる。画面を叩き壊すような勢いだ。が、その指が、ふと止まった。「……あ」
「なんだ?」
「江戸神社は須佐之男命(スサノオ)由来の牛頭(ゴズ)天王を、神田明神は大己貴命(オオナムチノミコト)を祀っています。どちらも出雲系の神です。大宮氷川神社と同じですよ」
「え?」
「大宮氷川神社も、現在祀られているのは、須佐之男命(スサノオ)。つまり、出雲系の神です」
「出雲系の民が入植したことで、もともと祀られていた土着の神が出雲系の神に取って代わられたんだっけ?」
「そうです。大宮氷川神社にもともと祀られていた土着の神が〝アラハバキ〟だとしたら、江戸神社と神田明神があった現在の将門塚も、出雲系の民が入植する以前はアラハバキだったという可能性はないですか?」
「え?」

(『縄紋』より抜粋)

(江戸神社と真梨さん)

 

『縄紋』を読まれていない方々には、すべてが暗号のような会話だと思います。ぜひ、その暗号(code)を縄紋(cord)で読み解いてください。

また、『縄紋』には「氷川神社」や「小石川植物園」など東京のあらゆる場所が登場します。折を見て縄紋散歩続編もご紹介したいと思います。

神田明神(かんだみょうじん)

東京都千代田区外神田2-16-2
tel:03-3254-0753 fax:03-3255-8875

関連書籍

真梨幸子『縄紋』

縄紋時代、女は神であり、男たちは種馬、奴隷でした。 フリーの校正者・興梠に届いた自費出版の原稿。それは “ 縄「紋」時代 " に関する記述から始まる不可思議なものだった。読み進めていくうち、貝塚で発見された男女の遺体など、現在にも繋がる共通点が幾つも現れて.....。この著者の正体は誰なのか、「縄紋黙示録」に隠されているメッセージとは。やがて興梠たちの身辺でも異変が起こり始めーー。多くの文豪たちが暮らし、今も有名学区が犇めく東京・文京区を舞台に、過去と現代、そして未来が絡み合う驚天動地の大長編。これは小説か予言なのか。 世界まるごと大どんでん返し!

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和製ダ・ヴィンチ・コード『縄紋』

縄紋、と聞いて、「何それ?」と思ったあなた。

実は、あなたが欲しいマンションの価格も、日本人に糖尿病が多いのも、ヤンキー坐りの発祥も、神社に鳥居と参道があるのも、謎の病気が流行るのも、最近フェミニズムが台頭しているのも、隣りのあの人が消えたのも、殺人が起こったのも、ぜんぶ「縄紋」のせいかもしれません。

イヤミスの女王、真梨幸子さんの新刊『縄紋』発売記念特集です。

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