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だらしなオタヲタ見聞録

2024.11.19 公開 ポスト

未だ柳葉敏郎=ジョニーの呪縛が解けないので、室井慎次を観に行ったら世紀の踏み絵映画だった藤田香織

20年以上、毎日300~500歩程度しか歩いていなかった超絶インドアだらしな生活だったのに、突然フッ軽オタ道を走り出したこの数年。もう「いつかそのうち」なんて言ってられん! 見たいものは見ておきたい! 寄る年波を乗り越えて、進め! ヨタヨタオタヲタ見聞録。

柳葉敏郎を「ギバちゃん」とは呼べないどうでもいいこじらせ

ところで、顔ハメパネルって陽キャのためのものですよね。ひとりで行って誰かに「写真撮ってくださーい」とは言えん。さすがに言えん!

『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』を観てきました。「踊るプロジェクト」再始動! だそうです。

個人的に「踊る」シリーズはかつて楽しんで見ていたし、仕事でガイドブックの記事原稿を書いたこともあります。あれ何年前だろう。25年前くらい? ピーポ君の取材にも行った記憶。

でもその後も続いた映画のいくつかは追い切れてなかったし、今回も正直、うん、まあ別にそこまでなーと思っていたのです。

いたのですが、何やら宣伝がらみで露出の増えた柳葉敏郎をちょくちょく見かけ、昼間再放送されていた過去作をうっかり見てしまったら、むずむず懐かしさがこみあげてきて、そういやNetflixでレギュラー放送回もやってたなーと迂闊に見返してしまい、あぁこれはちょっと観に行くか、室井慎次。となったのでした。

というのも。

私は、柳葉敏郎を、世の中の人々がどれだけ「ギバちゃん」と呼ぼうとも、心の中で未だ「ジョニー」と言ってしまう呪縛にかかったままで。

もうすっかり昔話ばかりしてしまう老人のような連載になりつつあリますが、そして実際もう初老(40歳)をとっくに過ぎてるわけですが、ロングロングアゴー、柳葉敏郎はジョニーと呼ばれていたのです。

秋田県出身の柳葉敏郎に愛称をつけるとして、どこをどう取ったところで「ジョニー」になる要素は、40年前の一世風靡セピアヲタ(って言葉はまだ普及してなかったけど)とて欠片も見つけられませんでした。

でも、本人がそう呼んでくれと言い出した(そしてその当時、セピアのパンフレットなどで哀川翔のクレジットは「lonely river show」だった)ので、それはもうちっちゃいことは気にすんなマインドで、喜んで私たちは「ジョニー!」と呼んでいたのです。

なのにさー。

セピアが解散(卒団ですけど)して、トレンディ俳優仕事が増えていって、自称ジョニーとは言わなくなっていき(まあそれはそう)いつの間にやらギバちゃんがジョニーを超えていったんですよ。

いいんです。別にいいんです。

松田元太のことを「げんげん」って呼ぶ人が減って、九九ニキとかマツダマンって言われたり、居酒屋で昼定食かきこんでるサラリーマンが普通に元太とか松田元太なんて呼び捨てにしてる場面に遭遇すると寂しいけど、嬉しくなっちゃったりもするわけで、そんな感じ、よくあるじゃないですか。「ジョニー」はそれです。なんなら「ジュリー」みたいなもん……じゃないわ。ジュリーは今でもジュリーだわ。

閑話休題。

老化してるので話が長い。

で、振り返ってみると40年前、私はジョニーに今でいうところの、そこそこなリアコだったわけです。一世風靡セピアが好きで、なかでも松村冬風(マツ)とジョニーが好きで、だけど仲の良かった友達がマツ好きだっていうからじゃあ私はジョニーで! みたいなアレがソレで「友達って難しいよね」みたいなこともあり、ジョニーが愛用していた白いハイカットのコンバースも買ったし、聖地巡礼もしたし、渋谷公会堂での解散(消滅だけど)コンサートにも行きました。1989年の夏に私の人生初推しグループだったセピアは消えて、それはもう仕方がないことだとのみこむしかなかった。

でも! 未だにジョニーはジョニーで断じてギバちゃんではないと、この世界の片隅でこじらせていることに気がついてしまった。踊るプロジェクトが再始動なんてしたばっかりに!

というわけで、ジョニーの役者人生でいちばんの当たり役といっても過言ではない室井慎次を見とどけることで、ジョニーの呪縛から解放されるのではなかろうか、とか思っちゃったわけですよ。されなかったけど。

そんな痛々しくも珍しいであろう動機で、今なお破られぬ日本映画の最高興行収入作品を含む人気シリーズの、えっとこれはどんな位置づけなんだろう、シリーズ作みたいな宣伝されてるけど、厳密にはスピンオフ作? を観て思ったことを、以下、感情だだ漏れな箇条書きで。

何を踏まされているのか「お気持ち表明」が難しい

このたびはポップコーンにしてみました。塩味。涙味。え?

★秋田犬のシンペイが可愛い。ひたすら可愛い。メスなのにシンペイだけど可愛い。
餌食べながら水飲みボールに足突っ込むとこ最高!

★集落の老人たちも弁護士もリクの同級生もタカの彼女(ふう)も、北大仙署の巡査も、警視庁から来た捜査一課の刑事も全員イライラする。

★いや弁護士さん、バレてるよその功名心。いるわー、いるいるこういう新人。杏もバレてるよー。いるわー、こういう若女子いるいるーあれね、陰でクラスメイトたちを操る闇の女王系ね。タカを振り回す女子もバレてるわー、いるいるー、そりゃそうなるでしょうねー、ですよねー。ってかタカ純朴指数高すぎない?

★雑貨屋の婆さん、誰だっけ、浅丘ルリ子じゃないし……ああ! いしだあゆみ! いしだあゆみだ! 昔から痩せてたけどカリッカリで凄みあるなー。

★生駒ちゃん。生駒ちゃんはわかる。秋田繋がりですな。え? 福本莉子か! 凄い、ちゃんと16歳ぐらいに見える! なんなら松田元太と映画でW主演してたときより幼く見える! ええ?
佐々木希なの!? 遺影の写真、安達祐実に見えたよ。眼鏡作りなおそう。

★え? リク4年生なの? 2年生ぐらいだと思ってた。もしかしてネグレクトされてたから小さい設定? 芦田愛菜の『Mother』パターン?

★で、この「クソゴリラ」一味はなに?

★猟銃会怖い。急な横溝正史感。

★タカが、自分の母親を殺した男と面会しに拘置所に出向く場面、直前までずっと本を読んでるのわかりみすぎる。不安なことあると本読んじゃうよね。SFは現実と別世界観あるから余計だよね。いやでも、後半、急な北の国からの純くんじゃない? なに? どした?

★温泉行ってラーメン食べて。どきどきしたわー。室井さん「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」って言い出しそうで。

★ちょっと室井さん! そのお皿、割れたところで抱きしめないで! 杏裸足じゃん! 足気をつけて足足!

★いやー飯島直子、久しぶりに見たなー。え? この児相の人、稲森いずみか。久しぶりだなー。って映画もドラマも見てないからそりゃ久しぶりだよね。

★いやー、ちょっとこれ秋田の人と県警と児相に喧嘩売ってる感じ?

★ちょっと待って。みんな急にいい人になりすぎじゃない? 室井DE改心?

★で? は? えー、シンペイなら家の裏にでも隠れてて、すぐにでてきそうなものなのに、何で見つからないようなとこまで逃げてった?

★っていうか、吹雪の中、なんでそんな遠くまで探しに行ったのか。

★え? 進学決意したら急に東京大学? いきなりの東大志望? 室井さん東北大学だけどその上目指す実はスーパー天才設定?

★それにしてもシンペイ。シンペイだけがずっと可愛い。シンペイだけがぶれない。シンペイはこの映画の大黒柱。シンペイ推せる! っていうかシンペイしか推せない!

★そして突然、まさかの松山千春! さだまさしじゃないけど千春!

★はー! やっぱり出てきちゃう? 出てきちゃいますか。っていうか、え? 再始動ってそういうこと!?

ええと、踏み絵みたいな映画でした。ヒューマンドラマですね感動した! なのか、なんじゃこりゃクソか! なのか。個人的にはオイオイいやもうだからさ、映画観るより小説読みたくなるんだよね。これこのまま小説新人賞に応募してきたら「人間が書けてない」「展開が安易」って言われるよね、絶対! と思いつつ、いやー室井慎次な。その普段着がベスト姿なの泣けるな。退官してコートとスーツの上着は脱いでも、脱ぎ捨てきれない思いもあるってことかな。それにしてもジョニー、いい顔するようになったなあ、としみじみもして。

で、だ。

2日経って今、京都でこの原稿書きながら考えているのだけれど。

あのーこれほんとに室井慎次「生き続ける者」だったりしない?

だってエンドロールの後のあの場面、めちゃくちゃ通常運転で、彼、現れましたよね?

様々な思いが胸に去来する、みたいな様子でもなく、悲しげでも寂しげでもなく、室井さんち遠いよ! くらいな感じで。

あと、この時には電波来てるってことだよね。ってことは直後ではないわけで。そもそも子供たちだって石津牧場で暮らしてるとは限らないよね。たまにはみんなで食事する関係性かもしれない。そしたら子供たちだけでは暮らしていけないわけで、実は……ってことない?

そもそも「何かあった」ことはもちろん明らかだけど、決定的な言葉は使われてなくない?

知らんけど。

そういえば、和久さん言ってたよね。「安心しろ! 生きたいと思う奴は死なねぇよ」

えええええええ?

 

 

関連書籍

杉江松恋/藤田香織『東海道でしょう!』

かたや体重0.1t、こなた日常歩数400歩。出不精で不健康な書評家2人が、なぜか東海道五十三次を歩くことに。吉原宿では猛烈な暴風雨に全身ずぶ濡れ、舞坂宿の真夏の国道では暑さに意識朦朧、凍える鈴鹿峠で雪に見舞われ、濃霧の箱根峠であわや遭難!? 日本橋~三条大橋までの492kmを1年半かけ全17回で踏破した、汗と笑いと涙の道中記。

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以前の連載『結局だらしな日記』はこちら

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藤田香織

1968年三重県生まれ。書評家。著書に『だらしな日記 食事と読書と体脂肪の因果関係を考察する』『やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記』『ホンのお楽しみ』。近著は書評家の杉江松恋氏と1年半かけて東海道を踏破した汗と涙の記録(!?)『東海道でしょう』。

Twitter: @daranekos
Instagram: @dalanekos

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