「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。
コロナウイルスの影響で生活スタイルが変わり、家事や掃除のやり方について改めて考えた方も多いのではないでしょうか。本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。
未曽有の状況でまだまだ不安定な日々ですが、本書で自宅時間を少しでも発見のあるものにして頂けたら幸いです。
1日の終わりにガスコンロやシンク周りの掃除をします。まずは、シンク内を洗い、五徳を外してコンロ周りを洗い、固く絞ったふきんで拭きます。この時、コンロ周りのステンレスの壁が油で汚れていたら、エタノールをシュシュッとかけてひと拭き。いちばん汚れやヌメリがつきやすい排水口トラップを外して洗い、ゴミ受けバスケットを洗って、これは再度はめ込まずに朝までシンクの上に出しっぱなしにして干しておきます。水切りかごと洗剤置きの水気をふきんで拭いて、専用のフックに吊るしてこちらも乾かしておきます。最後にキッチンクロスとふきんを煮沸して干し、終了です。もちろん、この一連の作業を毎日やる、というわけではなく、時にサボることも。
我が家では、食器は夫が洗ってくれるのですが、このシンク周りの掃除まではしてくれません。なので、食後ゴロゴロしている私は、お風呂に入る前にエイッと起き上がり、この作業に入ることになります。1日を終えてもうスイッチを切っているところに、再度立ち上がるのが大層面倒くさい! でも「エイッ」と思い切って手を動かし始めると、案外サクサク進みます。スポンジを泡だてステンレスのシンクをクルクル洗い、煮沸したふきんを水洗いして、パンパンと伸ばして干したりしているうちに、さっきまでダラダラしていたのに、なんだか清々しい気分になって、ピカピカになったキッチンを見ると「よっしゃ!」とガッツポーズをしたくなります。
ただし、絶対にやらないといけない、と決めてしまうと、やらなかった時の罪悪感で、気分がどんより落ちてしまうので、疲れている時や、仕事が立て込んでいる時は、無理しない、と決めています。取材で帰りが遅くなる日が続くと、どんどんキッチンが油汚れでギドギドしていきます。でも、それはそれで仕方がない。また時間ができて、張り切りモードでキッチン掃除をすれば、きれいに復活するんだから、とおまじないのように唱えながら、キッチン横を素通りすることにしています。
ただ、不思議なことに、原稿の締め切りに追われていたり、切羽詰まっている時には、意外に1日全体がテキパキモードになっていて、キッチン掃除まで一気に片付けてしまう日が多いよう。今日の用事は今日中に片付けておかないと、明日はまた明日の仕事がある……。そう思うと、自然に体が動きます。反対に「あ~あ、もう今日はいいか」とあきらめるのは、中途半端に時間に余裕がある日。気分が一気に弛緩して、仕事も暮らしもいまいちピリッとせず、「明日やればいいや」と後回しがどんどん増えていきます。
私はこんな風に多分に「気分屋」なので、同じことを淡々と続けることができません。張り切ってやったり、やらなかったりと、毎日はまだら模様。でも……。2~3日サボるからこそ、「よし今日こそ」と自分を奮い立たせ、キッチン掃除を最後まで完走した日には、なんともいえない爽快感をいつもの2割増し、3割増しで味わうことができます。さっぱり拭き上げたキッチンに、煮沸して真っ白になったふきんが干してある……。その風景を見るたびに「ああ、やっぱりやってよかった!」と満足感を味わうことができるのです。
だとすれば、サボることもなかなかいいことじゃないか、と思えてきます。サボる日があるから、「やった日」の爽快感をより深く味わうことができる! そんな自分勝手な定理を作り、ひとり「よしよし」と自分を褒めてあげる。そうして、また自分のエンジンをかけ直します。キッチン掃除は、私にとって「気分屋」の自分と、いかに仲良くするかという工夫の時間なのかもしれません。
暮らしの中に終わりと始まりをつくる
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。
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