夫と暮らし始めて数年は、よく二人で買い物に行った。交替で料理当番になった夫は、レジ横の料理雑誌を手に取って、何やら研究していることが多かった。テレビで料理番組を観ていることもある。冷蔵庫の食材をどう使うか、レシピサイトで検索して「わかった」と言って料理を始めることもある。
彼がそれらのレシピ情報でヒントを得た料理で定番になった一つは、「キュウリのザクザク」と呼んでいる夏の料理だ。塩でもんだキュウリをすりこ木で叩き、炒めてから、醤油・酒・砂糖・酢・トウガラシの調味液を熱してアルコール分を飛ばした中に入れ、冷蔵庫で冷やす。
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料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。
うつ病になったら、料理がまったく出来なくなってしまったー。食をテーマに執筆活動を続ける著者が、闘病生活を経て感じた「料理」の大変さと特異性、そして「料理」によって心が救われていく過程を描いた実体験ノンフィクション。
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