日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。
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BCGワクチン(ウシ型結核菌のワクチン)接種の有無と、その用いたBCGの種類(菌株)が新型コロナウイルスに対する防御に対してキーになっているとする説があります。
コロナによる死亡例多発の多くの西欧諸国は8年以上前からBCGの接種を実施していません。日本は今でもBCGは赤ちゃんの時、基本的に生後6ヶ月~1歳までの間に一回投与しています。
BCGワクチンの大もとは、パスツール研究所から分与されたウシの結核菌由来のもので、日本型とロシア型の菌株などは古い菌株になります。たまたまそれが良かったのではないかといわれています。
多くのヨーロッパ諸国では今ではBCGは中止になっていますが、別の西欧諸国では、古い株から新しい菌株を作り、旧西ドイツ地域など一部使用されているところもありました。一方、旧東ドイツはロシア型の古いBCG株が使われていました。
それに対し、より新型の菌株ワクチンも使用されている国もあるようで、日本やロシアなどの古い菌株とは違うものです。日本とロシアの死亡率は低く、ロシア型を使っていた旧東ドイツ地域は、新型株のワクチンを使っていた旧西ドイツ地域より新型インフルエンザの死亡率は大幅に低く(1/3)、また、日本型を使っていたトルコは隣のイラン(西欧型の新しい菌株)よりも低死亡率だったという結果を見ると、古い菌株のBCGワクチンが有効だといえるのではないかともいわれています。
このあたりの詳細な検討は、昭和大学呼吸器内科学の大森亨先生が、黒木登志夫先生主宰の『コロナウイルスarXiv*(17)』(2020/6/30付)に記載されています。結論としてBCGはロシアや日本などのワクチン株は確かに有用のようです。これは本来ヒトが持っている非特異的免疫を活性化するためと考えられます。イスラエルの例では、BCGはCOVID-19の予防に無効であったとの報告もあります。
<今後の公開予定記事>
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第10回 「夜の街」の感染防止に、飛行機の空気清浄機に使う「ヘパフィルター」の提案
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第12回 コロナCOVID-19のワクチンはあまり期待できない
第13回 スペイン風邪のような悪夢は来ない
第14回 ウイルス感染と発症:不顕性感染、潜伏感染とPCR検査
〈参考文献〉
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•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋
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