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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

2020.07.31 公開 ポスト

<特別編>コロナ対策の今後#14

ウイルス感染と発症:不顕性感染、潜伏感染とPCR検査前田浩

日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。

*   *   *

拙著『ウイルスにもガンにも 野菜スープの力』のp.28に、細菌やウイルスの暴露量を感染から発症に至るモデル例を示していますが(下記の表)、一般にヒトが病原性微生物(細菌やウイルス)に暴露(感染)すると必ず発症するかというと、必ずしもそうではありません。

 

大量の病原微生物に感染すると比較的短時間(とくにインフルエンザなどは24時間以内くらいで)に発症しますが、ウイルス量が少ないか、また、そのヒトの免疫力が強い(つまり、そのヒトの本来の免疫力(体力)が強いなど)場合は感染しないか、感染しても発熱その他症状が現れません。

このように発症しないヒトがいます。それを不顕性感染と云っています。

(写真:iStock.com/choochart choochaikupt)

このとき多くの場合は、免疫力として血中の抗体が出現します。一方、そのとき時間と共にウイルス(抗原)は体からいなくなります(治癒)。またこれとは別に、C型肝炎ウイルスやヘルペスウイルスなどは、急速な発症がなくゆるやかな感染があり、潜伏感染(持続感染)という状態になり、慢性化疾患として体に巣くって残っています。このときも、そのヒトの免疫が弱ってくると臨床症状(発症)が出てきます(ヘルペスウイルスなど)。

ところで、PCR検査についてですが、メディアからはPCR検査さえすればコロナウイルスの予防になるような印象が伝わってきます。もともとPCR検査では、唾液や鼻腔の分泌液中の目的とするウイルス(細菌)を試験管の中で何万倍、あるいはもっと増幅してウイルスがいるかどうかをみることで、もともとどれ程のウイルス(粒子の数)があるのかを正確(定量的)には把握できていません。

最近、試験されているコロナCOVID-19の抗原の検出も似ていますが、こちらは感染力のあるウイルスかどうかは別問題であり、この抗原があれば、そのヒトの体内に抗体が出来ている可能性があります。COVID-19の抗体が検出できて抗体があるという状態が把握できれば、それによってその当人も社会も安心できる訳です。

(写真:iStock.com/Mohammed Haneef Nizamudeeen)

さて、前述のPCR検査で陽性になったとしても、ウイルス量が少なく不顕性感染になれば、それが最も好ましいコロナ(COVID-19)のワクチン接種と同じことであると云えます。陽性だから即入院と医療機関を煩わすシステムになっていますが、本人が無症状で、いわゆる潜伏感染の状態であれば、本人に通知して控えめの普通の生活をしばらく続け、抗体価が上がるのを見定めた上、放免するのが良いのではないでしょうか。

そもそもPCR検査の精度はそれ程よくないと云われています。ウィズ(with)コロナという状態でコロナと共存して、発症しなければ万事これでOKとなる訳で、仮にPCR陽性でも乗り切れることになります。重症化して死に至ることが最も問題であると筆者は考えています。

スウェーデンで最近発表(2020/6/29)されたon lineの bioRxiv preprint に興味あることが載っていました。

重症者では概ね抗体が見られるが、PCR陽性でも無症状や軽症者には抗体は無いか弱いかであり、それに対して、持続性のT細胞(キラーT細胞)の感染免疫力が出来ている。即ち、無症状の不顕性感染でも免疫力は出現する、つまり、このT細胞によってCOVID-19感染細胞を殺すということです(文献19)。

 

この原稿作成中に東洋経済ON LINE (2020/7/17)に掲載された高橋泰教授(国際医療福祉大学)が筆者と同様の考え方であることを知り、意を強くしました(文献20)。

 

<引用文献>

19.    Takuya Sekine et al, Robust T cell immunity in convalescent individuals with asymptomatic or mild COVID-19, bioRxiv preprint, doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.29.174888, June 29 (2020)
20.    高橋泰, 新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ,東洋経済ON LINE, 7/17 (2020)

前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』

病気予防に効果的な野菜スープ。
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抗がん剤の世界的研究者による、健康になるための一冊。

〈参考文献〉
•W.F. Ganong, Review of Medical Physiology, pp. 1-774, Lange Medical Books., Network, CT, USA,とくにCh. 23, PP. 375-413.
•W. Regelson & C. Colman, The Super-hormone promise-Nature’s Antidote to Aging, pp.11- 346, Simon & Schuster, N.Y, 1996
•W. Pierpaoli, W. Regelson, C. Colman, The Melatonin Miracle: Nature's Age-Reversing, Disease-Fighting, Sex-Enhancing Hormone. Simon & Schuster, N.Y. London……
•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
•産経新聞、読売新聞、中高年ひきこもり61万人、2019年3月30日
•厚生労働省「患者調査」、精神疾患を有する総患者数の推移、精神保健医療福祉のデータと政策(平成29年)http://www.mhlw-houkatsucare-ikou.jp/guide/h30-cccsguideline-p1.pdf
•平成30年中における自殺の状況、厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、平成31年3月28日
• Rachel Carson, Silent Spring( 邦 題: 沈 黙 の 春 ), 1962, PP.1-317, Penguin/Geography/environment science, N.Y.
•有吉佐和子「複合汚染」新潮社、1975
• M.M. Bomgardner, How a new epoxy could boot BPA from cans, アメリカ化学会、Chem. Eng.News, 97, March 5, 2019.
•林国興、環境ホルモン再考、日本がん予防学会News Letter No. 73、2012年9月
•K. Hayashi et al., Contamination of rice by etofenprox, diethyl phthalate and alkylphenols: effects on first delivery and sperm count in mice, J. Toxicol. Sci, 35, 49-55, 2010.
•CB. Pedersen et al., A comprehensive nationwide study of the incidence rate and lifetime risk for treated mental disorders. JAMA Psychiatry, 71, 537-581, 2014.
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•Financial Times 8月8日(木)2019年、P.7;同New York Times, International Ed., The weedkiller that won’t be exterminated, p.10, Business, Sept., 27, 2019(ラウンドアップ)
•R. A. Weinberg. Cell, 157, 267(2014)
•前田 浩、化学と生物、vol.55, No.7501-509(2017)
•C. Leaf, The truth in small doses: Why we're losing the war on cancer-and how to win it. Simon & Schuster, New York(2013)
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• Laura Howes, How your gut might modify your mind, Chem. Eng. News 9(7 14)36-40(2019) •Science Oct. 23., 2019
• The Scientist 2019, Feb. 4., by Ashley Yeager
•半田 康、ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生との関連、日本がん予防学会ニュースレター p.1., No.66, Dec. 2010.
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•Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2020 Mar 3;117(9):4642-4652. doi: 10.1073/pnas.1919563117.Epub 2020 Feb 18.
•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋

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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

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前田浩

1962年東北大学農学部卒業/1964年カリフォルニア大学 (Davis 校)大学院修了(フルブライト奨学生)/1968年東北大学大学 院博士課程修了(指導:医学部石田名香雄教授)、東北大学医学部細菌 学講座助手、ハーバード大学ダナ・ファーバーガン研究所主任研究員/1971年熊本大学医学部微生物学講座助教授/1981年同教授/ 2005年熊本大学名誉教授(医学)、同年崇城大学薬学部教授、2011年 同特任教授/2016年同栄誉教授、現在、(財)バイオダイナミックス研 究所理事長・所長/大阪大学招聘教授(医学)、東北大学特別招聘プロフェッサー

〈研究テーマと抱負〉高分子型抗癌剤、癌血管の透過性にかかわる現 象の EPR 効果、感染における生体内ラジカルの生成、炎症による生 体内活性酸素と抗酸化食品による癌予防、癌の蛍光ナノプローブに よる検出と光照射療法

〈受賞歴〉日本細菌学会浅川賞、高松宮妃癌研究基金学術賞、ドイツ生 化学会および国際 NO 学会の特別号発刊により顕彰、王立英薬学会 Life Time Achievement Award受賞、日本DDS学会 永井賞、日本癌 学会吉田富三賞、2016年トムソン・ロイター引用栄誉賞(化学部門)、 米国ミシガン州Wayne State Universityより2017 Roland T. Lakey 賞受賞、2018年瑞宝中綬章受章、西日本文化賞、米国サンアントニオ 市名誉市長、米国オクラホマ州名誉州民など多数

〈趣味〉ワイン

 

 

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