1707年に起きた「宝永大噴火」以降、沈黙を続けている富士山。専門家の間では、「いつ噴火してもおかしくない」と言われています。もし本当に噴火したら、首都圏はいったいどうなってしまうのか……。いざというときに備えるためにも読んでおきたいのが、「マグマ学」の権威、巽好幸さんの『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』です。緻密なデータを駆使し、噴火と地震のメカニズムを徹底解説した本書から、一部をご紹介します。
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あなたの家は大丈夫?
活火山である富士山の地下には生きたマグマが存在しており、いつ噴火しても不思議でない。
残念ながらいつ噴火するかは判らないが、では、もし噴火が起こった場合にどのように溶岩が流れ、どの範囲にどれくらいの火山灰が降り注ぐのか? 300年の長きにわたり沈黙を保つ富士山は、日本列島最大の人口密集域にも近い場所に位置している。
これらのハザードを可能な限り正確に予想しておくことは、火山大国日本に暮らす私たちにとって必須のことである。
このような理由で、富士山噴火については、その筋の専門家が集結し、恐らく日本中の火山の中で最も精度の高いハザードマップが作られた。
この報告書は、ネットで「富士山」「ハザードマップ」で検索すると簡単に入手できる。少々長くて困るという方には、「要旨」も併せて検索するとダイジェスト版が用意されている。
このハザードマップで想定しているのは、一番最近かつ歴史上最大規模の噴火の一つであった1707年の宝永噴火である。この噴火で噴出されたマグマは約0.7立方キロメートル、黒部ダムの貯水量の3倍にも及んだ。
富士山の場合、山頂の火口から噴火が起こるとは限らない。北西から南東方向に走る割れ目に沿った側火口から噴火が始まる場合も多い。ハザードマップではこのような場合も想定して溶岩流の最大到達範囲や降灰の影響を示している。
溶岩流は、1日から1週間程度で図に示した範囲に到達する可能性が高い。南東斜面で噴火が起きた場合には、沼津市の海岸にまで溶岩流が達するようだ。
都心に灰が降りそそぐ
しかしこの想定噴火で最も影響が大きいのは降灰である。
宝永噴火は半月ほど断続的に続き、噴煙は最高10キロメートル以上まで立ち上った。江戸でも多い所では数センチメートルもの火山灰が降り積もった。
このような噴火が起きる火口の位置や年間の風向や風速を考慮して作成された降灰マップがある。富士山近傍では50センチメートル、横浜から町田、八王子あたりでは10センチメートル、23区内から千葉、さらには房総半島の大部分でも数センチメートルの降灰が予想される。
火山大国であるわが国でも、日常的に噴煙を噴き上げる桜島周辺を除くと、このような降灰の被害を被ることは稀である。
しかし、気象庁がまとめた降灰による被害予想と、先の富士山噴火による降灰マップを見比べると、首都圏の混乱は明らかである。家屋への直接的な被害は免れるとしても、少なくとも一部の地域ではライフラインが一時ストップする可能性が高い。関東地方の東名高速や中央道は通行止めになるし、首都圏の一般道路も除灰なしには使い物にならない。
また、羽田空港は恐らく確実にマヒするに違いない。その他にも、火山灰が鋭い割れ目を持つガラス質の物質であることを考えると、江戸時代もそうであったように、呼吸器障害等の健康被害も心配である。もちろん、細粒の火山灰によるコンピュータなどのハイテク機器の作動不良も懸念される。
しかし、これらの被害の多くは備えをすることで相当部分は解消できるし、速やかな回復も可能である。世界で最も万全の水害対策を講じることに成功しつつある首都東京である。必ず起こる降灰災害に対しても、綿密かつ大胆な対策が望まれる。
富士山大噴火と阿蘇山大爆発
1707年に起きた「宝永大噴火」以降、沈黙を続けている富士山。専門家の間では、「いつ噴火してもおかしくない」と言われています。もし本当に噴火したら、首都圏はいったいどうなってしまうのか……。いざというときに備えるためにも読んでおきたいのが、「マグマ学」の権威、巽好幸さんの『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』です。緻密なデータを駆使し、噴火と地震のメカニズムを徹底解説した本書から、一部をご紹介します。