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日本・破綻寸前

2020.11.12 公開 ポスト

タクシー初乗り「1兆円」?ハイパーインフレはこんなに恐ろしい藤巻健史

新型コロナによって大打撃を受けている日本経済。「この国の財政が破綻する日は、いつ来てもおかしくない」と警鐘を鳴らすのは、経済評論家で元参議院議員の藤巻健史さんだ。著書『日本・破綻寸前』は、いかに日本経済が瀬戸際まで来ているかを豊富なデータをもとに解説。さらに、ハイパーインフレが到来したときの「自分のお金の守り方」まで具体的に伝授してくれる。そんな本書から、ぜひ押さえておきたいポイントをご紹介しよう。

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実際にドイツで起こったこと

1923年、ドイツでは1月に1個250マルクだったパンが、その年の12月には3990億マルクになったそうです。コーヒーを飲もうと喫茶店に入ったら、メニューには1杯4000マルクとあったのに、店を出るときには6000マルクに値上がりしていたという笑い話のような話もあります。

(写真:iStock.com/SARINYAPINNGAM)

このパンの値段の推移をタクシー料金に換算すると、1月に700円だった初乗り(少し前の東京ではそうでした)が、12月には1兆1000億円になったことになります。

先ほど私が「タクシー初乗り1兆円時代には」と書いたのを読んで、「フジマキはまた大げさな」と思った方がいらっしゃるかもしれませんが、歴史上、このような例が存在するのです。

ちなみにこのハイパーインフレは、当時のドイツの中央銀行(ドイツ帝国銀行・ライヒスバンク)が異次元緩和を行った結果、起きています。ライヒスバンクは、これで異次元緩和に懲りたかと思いきや、第2次世界大戦で、軍事費調達をしたいヒットラーからの圧力に負けて、再度、異次元緩和を行ってしまいました。

その結果、終戦後ハイパーインフレの後始末のためにつぶされたのです。もちろん中央銀行は社会になくてはならないインフラですから、ドイツ連邦諸州銀行を経て、ブンデスバンク(ドイツ連邦銀行)という新しい中央銀行が創設されました。

ライヒスバンクが廃されたことにより、ばらまきすぎた旧紙幣のライヒス・マルクも無効になり、ユーロが導入されるまでは、ブンデス・マルクすなわちドイツ・マルクが流通したのです。ドイツ政府は貨幣価値が復活した通貨(ドイツ・マルク)を新しく発行することで、ハイパーインフレを鎮静化させたのです。

ひどい目にあったのは、最後までライヒス・マルクを保有していた庶民です。ハイパーインフレが起こるかもしれない日本人は、この事例をしかと頭に入れておくべきだと思います。

2019年2月18日のロイター記事で、財政学の権威・土居丈朗慶應義塾大学教授が、「慶應の人間としてはあまり言いたくないが、福沢諭吉先生の肖像の1万円札が紙切れになるかもしれない」とおっしゃっていました。1万円札が紙切れということは1万円ではほとんど何も買えない、ハイパーインフレということです。

「異次元緩和」がハイパーインフレを招く

国会で「ハイパーインフレ」に関して質問したら、最初は「ハイパーインフレは戦争で供給手段が破壊され、モノ不足になった場合にしか起きない」との答弁がありました。

(写真:iStock.com/metamorworks)

それでもしつこく聞いていたら、気がついたのか、前述のようには答弁しなくなったのです。ドイツは別に戦争で供給施設が破壊されたわけではありませんが、それでも異次元緩和でハイパーインフレが起きています

過去のハイパーインフレは第1次世界大戦後、第2次世界大戦後、そして金本位制を放棄して紙幣が自由に刷れるようになった1980年以降に多発しています。私が懸念するハイパーインフレは、その1980年以降に起きた事例で、異次元緩和の結果のハイパーインフレなのです。

ハイパーインフレは、需要が供給より極めて大きくなったときに起きます。戦争による供給施設の破壊でも、この現象は起こりますが、何もそれだけで起こるわけではありません。貨幣のばらまきすぎによる自国通貨安でも起こるのです。

日本における貨幣とは円ですから、「お金の価値が暴落する」とは「円の価値が暴落する」ということです。円が暴落すれば、外国人は優良な日本製品を、べらぼうに安く買えるのです。

1ドル100円の時代、100円の日本製ボールペンを、米国人は1ドルで買います。1ドルが1万円になれば、100円の日本製ボールペンは米国人にとって1セントになるのです。日本製品への需要は供給(=製造量)を大幅に上まわります。

鎖国時代と同じように考えてはいけないということです。外需を考えて需給がバランスするかを考えねばなりません。また、円が暴落すれば、輸入品は高すぎてとてもではありませんが、日本人には手が出なくなります。それにつられて競合する日本製品の値段も上昇します。

為替が1ドル100円のとき、1ドルの輸入トマトは日本では100円です。しかし1ドルが1万円になれば、1ドルの輸入トマトは日本では1万円となってしまうのです。とても手が出ません。日本のトマト農家も、まさか以前と同じ100円では売りません。1個1万円に値上げするはずです。

関連書籍

藤巻健史『日本・破綻寸前 自分のお金はこうして守れ!』

日本経済は年々悪くなっているのに、日銀はお金のばらまきをやめず、社会保障費なども増加する一方で、日本財政がよくなる兆しはまったくない。「日本の財政が破綻する日(=Xデー)はいつ起きてもおかしくない」と著者。Xデーが起きたとき、政府は守ってくれないし、自分のお金は自分で守るしかない。本書では著者の資産運用法を公開し、読者にも、ハイパーインフレが起きても大丈夫な手法を具体的に伝授。

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日本・破綻寸前

新型コロナによって大打撃を受けている日本経済。「この国の財政が破綻する日は、いつ来てもおかしくない」と警鐘を鳴らすのは、経済評論家で元参議院議員の藤巻健史さんだ。著書『日本・破綻寸前』は、いかに日本経済が瀬戸際まで来ているかを豊富なデータをもとに解説。さらに、ハイパーインフレが到来したときの「自分のお金の守り方」まで具体的に伝授してくれる。そんな本書から、ぜひ押さえておきたいポイントをご紹介しよう。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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