エッセイに書くことが何にもない。
締め切りを前にして、わたしは少し呆然としている。
このエッセイを書きはじめてからどれくらいになるだろう。もう十数年。ひょっとしたら二十年近く。長い間書き続けてきたけれど、エッセイに書くことが何一つ思いつかないなんてはじめてのことだ。
でも仕方がない。三月頭からのこの半年、わたしは家にこもり続けているのだ。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。