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皇室入門

2020.09.21 公開 ポスト

天皇陛下が主催する園遊会。そこで何が行われているのか?椎谷哲夫

昨今、国民的議題となっている皇位継承問題。「女性天皇」と「女系天皇」の違いなど、わかっているようでわかっていない部分も多いでしょう。ジャーナリスト、椎谷哲夫さんの新書『皇室入門』は、皇室の歴史から制度、宮内庁の役割、祭祀、元号、皇位継承問題の論点まで、皇室について幅広く網羅した入門書。日本人なら知っておきたい知識と教養が身につく本書から、一部をご紹介します。

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約2000人が赤坂御苑に

春と秋に園遊会が開かれる赤坂御用地には「赤坂御苑」と呼ばれる広大な庭園がある。周囲約700メートルの散策道が囲む「中の池」などの大小の池と芝生があり、春はツツジやショウブの花が咲き、秋はモミジなどの紅葉が鮮やかだ。皇族方が散策を楽しまれることもある。

昭和28年から続いている天皇陛下主催の園遊会では、両陛下のほか成年された各皇族方が散策道に沿って歩きながら、両脇に並んで待っている招待客に声をかけられる光景が見られる。

(写真はイメージです:iStock.com/Tom-Kichi)

毎回必ず呼ばれるのが内閣総理大臣や衆参両院議長、最高裁判所長官の三権の長のほか、閣僚や高裁長官などの認証官で、国会議員や都道府県知事のほか、市町村の首長や議長も交代で招待される。ほかに、各界の功労者や文化・芸能の功労者のほか各業界団体の代表者、直近でオリンピックやパラリンピックがあった場合にはそのメダリストなども招待される。

配偶者と合わせると毎回2000人近くが招待され、晴れの舞台とあって男性はモーニング、女性は着物の人が多い。中でも、春の園遊会は大使をはじめ駐日大使館の館員や駐在武官などが招かれるため民族衣装や礼装が目立ち、ひときわ華やかだ。

 

園遊会当日は、宮内記者会の記者たちが事前に話しあって招待者の中から選んだ数人に1ヶ所に並んでもらい、それぞれの胸に付けた小型マイクで両陛下との会話を拾っている。どのテレビチャンネルも似たようなシーンが放映されるが、取材の混乱を避けるためだから仕方がない。

ただ、実際にはその場面は時間にしてごくわずかで、両陛下や皇族方は1時間以上もかけて声をかけながら歩かれる。とりわけ両陛下は、招待者の都道府県名や市町村名と氏名が書かれた名札を見て足を止められることも少なくない。被災地から呼ばれたとわかると顔を寄せて話し込み、車椅子や杖をついたお年寄りを見つけると腰をかがめて声をかけられる。

お酒や軽食、お土産も充実

ところで、会場のあちこちに設けられたテントの屋台では、ビールや日本酒、ワインのほかソフトドリンクが出され、熱々の焼き鳥やジンギスカンがふるまわれる。各種のオードブルなども並んでいる。

招待者の中には、両陛下や皇族方にお声をかけてもらおうと並んでじっと待ち続ける人も多いが、あまりの人の多さにこれをあきらめ、飲んだり食べたりに精を出す人も少なくない。帰りには3ヶ所の出入り口でお土産として御紋章入りの「菊焼残月」という半月の形をしたどら焼きが配られる。

会場内では宮内庁楽部の楽師たちが古式の衣装を着て雅楽演奏を聞かせたり、皇宮警察の各部署の護衛官で構成する礼服の音楽隊が行進曲などを演奏して雰囲気を盛り上げている。

(写真はイメージです:iStock.com/Razvan)

園遊会の警備は、原則としてすべて皇宮警察本部の護衛官が行う。唯一の例外は首相を警護する警視庁のSPだけで、これだけ縄張りがはっきりしている警備も珍しい。春の園遊会と前後して新宿御苑でも芸能人やスポーツ選手など1万人を招待した総理主催の「桜を見る会」が開かれるが、こちらの警備は警視庁警備部の警護課と機動隊が担当する。

平成2年11月12日に行われた今上天皇の即位の礼には百数十ヶ国の外国元首や王族、各国首脳が参列した。その翌日にはこれらの参列者をもてなす園遊会がこの赤坂御用地で催された。フランクな野外パーティーで、晴天に恵まれたこともあって民族衣装やドレス姿の参加者も目立った。

中でも人目を引いたのが今は亡きダイアナ妃だった。白地に赤の小さな丸い玉をあしらったスーツは日の丸をイメージしたものだった。上品な笑みが印象的だったが、夫のチャールズ皇太子と終始離れた位置にいるダイアナ妃の表情がどこか寂しげに見えたのを覚えている。

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この続きは幻冬舎新書『皇室入門 制度・歴史・元号・宮内庁・施設・祭祀・陵墓・皇位継承問題まで』をお買い求めください。

関連書籍

椎谷哲夫『皇室入門 制度・歴史・元号・宮内庁・施設・祭祀・陵墓・皇位継承問題まで』

平成31年4月30日をもって今上天皇は退かれ上皇に、皇后陛下は上皇后に就かれる。翌5月1日に皇太子殿下が第126代天皇として即位される。江戸時代の光格天皇以来202年ぶりとなる今回の譲位を前に、世界でも類を見ない極めて永い歴史を持つ皇室の制度から元号まで、常識として知っておきたい基本を紹介。天皇のお務め、宮内庁の役割、皇室警備の実態、宮中祭祀や陵墓、そして皇位継承問題の論点まで、硬軟織り交ぜて幅広く網羅する、元宮内庁担当記者による入門書決定版。

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皇室入門

昨今、国民的議題となっている皇位継承問題。「女性天皇」と「女系天皇」の違いなど、わかっているようでわかっていない部分も多いでしょう。ジャーナリスト、椎谷哲夫さんの『皇室入門』は、皇室の歴史から制度、宮内庁の役割、祭祀、元号、皇位継承問題の論点まで、皇室について幅広く網羅した入門書。日本人なら知っておきたい知識と教養が身につく本書から、一部をご紹介します。

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椎谷哲夫

1955年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京新聞(中日新聞東京本社)入社。編集局社会部で警視庁、宮内庁、旧運輸省を担当。宮内庁では5年余にわたり昭和天皇崩御や皇太子ご成婚などを取材。休職して米国コロラド州の地方紙でインターン記者研修後、警視庁キャップ、社会部デスク、警察庁を担当。40代で早大大学院社会科学研究科修士課程修了。総務局、販売局勤務を経て、現在関連会社役員。著書に『敬宮愛子さまご誕生』がある。

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