有名俳優の逮捕によって、注目を集めている「大麻」。現在の日本では「危険な薬物」というイメージが強いですが、ヨーロッパをはじめ先進各国では、レクリエーション目的のみならず、医療、エネルギー、環境問題などさまざまな分野で、その有用性が認められています。大麻とはそもそも何なのか? どんな可能性を秘めているのか? 大麻のすべてがわかる『大麻入門』より、内容の一部をお届けします。
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食用としても優れている大麻の種
大麻の種は「麻の実(おのみ
)」という名で、昔から日本人に食べられていた。鳥浜遺跡や三内丸山遺跡からは、食用として用いられていた大麻の種が発掘されている。古代中国でも大麻の種は、八穀あるいは九穀の一つに数えられており、日本では稲作以前から重要な食料であった。
現在も、大麻の種は日常の生活の中で私たちの口に入っている。例えば、七味唐辛子の中にも大麻の種が入っているのはご存じだろうか。
七味唐辛子は七色唐辛子とも呼ばれ、そのルーツは江戸時代に遡る。
1625年、初代「からしや徳右衛門」という男が、江戸の薬研堀(現在の両国近辺)で売り出したのが始まりとされている。「薬研」とは漢方薬をすり潰す器具の名称であり、当時の薬研堀界隈には、医者や薬問屋が密集していた。徳右衛門は、漢方薬の材料を食用にできないかと思案した末に、七味唐辛子を考案したのである。
七味唐辛子の中身は、「生の赤唐辛子」「煎った赤唐辛子」「麻の実」「芥子の実」「粉山椒」「黒胡麻」「陳皮(みかんの皮を炒ったもの)」の7種類である。京都や長野では若干中身が違うが、どこの七味にも麻の実は入っている。
七味唐辛子は、「薬味」という名の通り、食であり薬なのだ。江戸っ子は、冬には熱い蕎麦に「なないろトンガラシ」をタップリとかけ、風邪の予防をおこなっていた。
大麻の種子は良質なタンパク質である9つの必須アミノ酸を含んでおり、食物繊維も豊富に含んでいる。また、麻の実のミネラル分には骨や歯の形成に欠かせないマグネシウムや鉄、銅、亜鉛が豊富で、リン、カルシウムも含まれている。
さらに、麻の実から取れる油には、アルファリノレン酸(オメガ3系)が理想的な割合で含まれており、必須脂肪酸も80パーセント以上含まれている。これは、すべての動植物油脂の中でも、最も多いパーセンテージなのである。
これだけヘルシーで身体にいい食べ物である麻の実であるが、味はどうなのかというと、これがまた美味しい。クルミのようなコクのある味で、フライパンで炒ってそのまま食べたり、米とともに炊き込んだり、ひき肉と混ぜてハンバーグにしても美味しいのである。
麻の実を食べて病気知らずの体に
これほど栄養が詰まっていて味も美味しいのに、なぜ今まで広まらなかったのかという理由の一つは、種を包む硬い殻のせいらしい。
しかし近年、木の実の硬い殻を取り除く技術が、欧州で大麻の種にも転用されたことにより、日本でも乳白色の麻ナッツを食べられるようになったのである。
この麻の実ナッツを含む様々な麻製品を積極的に輸入、製造、販売しているのが「ニュー・エイジ・トレーディング」の前田耕一氏である。前田氏は、東京下北沢で「大麻堂」という麻関連グッズの販売店を営むとともに、麻の実料理店である「レストラン麻」を経営している。
以前、前田氏に麻の実ナッツの輸入にまつわる苦労話を伺ったことがある。
初めて大量のナッツを輸入した際、厚生労働省麻薬課によって、発芽するか否かのチェックがおこなわれたそうだ。数日後、そのうちの、たった数粒が発芽しただけだったが、その時に輸入したナッツはすべて廃棄処分されることになってしまったという。
そんなことがありながらも、前田氏は、日本の各種機関の大麻に対する知識や理解の低さと奮闘しながら、麻の実食品をはじめ、大麻文化を広く紹介し続けている。
現在、ニュー・エイジ・トレーディングでは、「麻の実ナッツ」や「麻そば」「自家製麻パン」など、様々な麻の実関連商品を扱っている。また、近年は、ニュー・エイジ・トレーディング以外の会社も、海外の麻の実食品の輸入・販売を始めており、ネット通販でも購入が可能になってきた。
健康食品としても、美味しい食材としても楽しめる麻の実を是非試していただきたい。
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この続きは幻冬舎新書『大麻入門』をご覧ください。
大麻入門
有名俳優の逮捕によって、注目を集めている「大麻」。現在の日本では「危険な薬物」というイメージが強いですが、ヨーロッパをはじめ先進各国では、レクリエーション目的のみならず、医療、エネルギー、環境問題などさまざまな分野で、その有用性が認められています。大麻とはそもそも何なのか? どんな可能性を秘めているのか? 大麻のすべてがわかる『大麻入門』より、内容の一部をお届けします。