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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

2020.09.21 公開 ポスト

推しバンド解散の日は、リビングに集まってお通夜状態藤谷千明(ライター)

「オタク同士で暮らしたら、絶対楽しそう!」そんな夢を見たことがあるオタクは多いはず。そうではなくても、このコロナ禍、「淋しくて不安」「孤独死したらどうしよう」「でも、異性と一生を約束して暮らすのは面倒!」など、一度は誰かとの生活について考えた、ひとり暮らしの方はいるのではないでしょうか。

先日発売となった『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』の著者、藤谷千明さんは、東京都内の賃貸一軒家(5LDK)でアラフォーのオタク4人で暮らして、約1年半になります。

アラフォーのオタク女子4人は、同居する一軒家でどのような春夏秋冬を過ごしてきたのか。オタクならではの会話が飛び交う、楽しい日常を、本書より一部抜粋してお届けします。

*   *   *

いうて残機は常に3

入居して約2カ月、季節の変わり目のせいか、丸山さんから「体調不良で動けない」とLINEで報告があった。一方、角田さんは残業で毎日午前様、星野さんが仕事で1週間ほどの出張。ハウスの残機は私だけになったわけだ。

LINEグループが盛んに動く。

角田「丸山さん、大丈夫ですか? 遅くなるけど、なにか買い物があれば買ってきますよ」

丸山「すまん……。ヨーグルトとバナナを……」

私「これから私、外出するんでついでに買ってきますわ」

星野「家のことできなくてごめんなさい」

私「謝ることではない~」

買ってきたものを丸山さんの部屋のドアノブにひっかけ、その旨をまたLINEする。そして粛々と、やっておいたほうがいい家事をやる。

この暮らしは、持ちつ持たれつが基本にある。逆に私が締め切り前でテンパってるときは、ほかのみんなが家事などをやってくれる。ゲームでいえば、常に残機が3つある状態だ。3機がダメになってもゲームオーバーにならないのは、かなり強いのでは。

丸山さんは4~5日くらいで元気になったようだ。その間、私がしたことといえば、たまに頼まれたものを買いに行くくらい。たとえばこれが恋人や家族だったらこうはいかないだろう。それなりに手厚いケアが必要になると思う。さきほども「義務は増やしたくない」と書いたけれど、家族や恋人の場合、「手厚いケア=愛」みたいになりがちじゃないですか? やらないと不機嫌になったりとか。そういう義務が必要な空気がないのがこの家で、私はそれを気に入っている。

とはいえ、のっぴきならない悲しさから、慰められた夜もあった。人間が“やられて”しまうのは、体調不良だけではない。

4月1日の夕方、ネットニュースにとあるバンドの解散の報が流れてきた。エイプリルフールにそりゃあないよ。リビングのテーブルにつっぷしていると、同居人たちが続々と帰ってくる。

角田「藤谷さん、大丈夫ですか?」

私「うっ、活動は休止状態だったものの……」

丸山「今更言わないといけない理由があったんですかね……。お茶いれましょうか?」

角田「お寿司買ってきたんですけど」(ドン!)

星野「私はビールを」(ドン!)

私「うお~ん」

ダイニングテーブルに寿司とビールが並ぶ。空気がまるでお通夜である。でも実質お通夜みたいなものか。同居人たちは同世代なので、そのバンドの人気や影響力の大きさは知っている。

丸山「『いつまでもあると思うな親と推し』とは言うが……」

星野「とにかく今日は食べて」

角田「少しは飲んで」

私「うお~ん」

その夜は、寿司を食べながら各々の思い出を語るのであった。まさにお通夜だ。「悲しい」を共有してくれる人が家にいるのは、悪くないな。

関連書籍

藤谷千明『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』

我が家こそ、沼でした! お金がない、推しのグッズは増える、孤独死は嫌だ! そんなわけでアラフォー女子がはじめた快適ルームシェアの日々。 一生を約束したくはないけれど、淋しいから誰かと暮らしたい、 推しのグッズは増える一方なので広い部屋に住みたい、 節約して将来への不安に備えたい…… 意見の一致したオタク女子4人がルームシェアをすることに! 本名すら知らなかった仲間との生活は、 オタクならではの出来事や会話が飛び交う毎日で、全然キラキラしてないけど、すごく楽しい。 そんな4人が同居に至るまでと、春夏秋冬の暮らしを綴った、ゆるっと日常エッセイ。 〈目次〉 第1章 私は如何にして心配するのを止めてオタクと暮らすことにしたのか 第2章 【メン募】同居人募集・当方オタク、完全ゆるふわ志向。 第3章 春夏秋冬ルームシェアリング! 第4章 ガチャも回すし人生も回す

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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

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藤谷千明 ライター

1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。ルームシェア生活は現在も継続中。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系に通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。Xアカウント:@fjtn_c

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