「オタク同士で暮らしたら、絶対楽しそう!」そんな夢を見たことがあるオタクは多いはず。そうではなくても、このコロナ禍、「淋しくて不安」「孤独死したらどうしよう」「でも、異性と一生を約束して暮らすのは面倒!」など、一度は誰かとの生活について考えた、ひとり暮らしの方はいるのではないでしょうか。
先日発売となった『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』の著者、藤谷千明さんは、東京都内の賃貸一軒家(5LDK)でアラフォーのオタク4人で暮らして、約1年半になります。
アラフォーのオタク女子4人は、同居する一軒家でどのような春夏秋冬を過ごしてきたのか。オタクならではの会話が飛び交う、楽しい日常を、本書より一部抜粋してお届けします。第3回目は、秋の台風のお話です。
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オタクの必需品・養生テープで台風に備える
秋が来た。親からは、例によってアホほど柿と芋が来て、ご近所にもおすそ分けして、なんとか事なきを得た。この年の秋は、農作物以外にもさまざまなモノが来た。台風とか。
台風19号が10月初頭に日本へやってきた。どうやらかなりの大きさらしい。前月には台風15号が千葉に直撃した直後で、「今回も大規模な被害が予想される」と、上陸数日前の段階からニュースや天気予報で繰り返されていた。ハウスは古い建物だし、瓦が飛ぶくらいは仕方ないかもしれないけど、屋根が飛んだりしたらイヤだな~。リビングのテレビで台風の進路予報を確認しつつ、対策を練る。
星野「ウチ、大丈夫ですかね」
角田「雨戸は全部閉めておきましょう」
私「雨戸ない窓もあるんよね」
丸山「ネットやと、そういう窓は養生テープで補強するといい説が」
角田「でもどこもかしこも売り切れてるみたいですね」
星野・丸山・私「養生テープなら売るほどあります」
会場設営などで役立つことが多いので、なにかしらのイベントに出ているタイプのオタクは、養生テープのストックをやたらと持っている(※私調べ)。貼るのもうまい(※私調べ)。SNSでは「養生テープ補強は逆に危険」説もあったが、貼る派が優勢のように感じたので、「貼る」に賭けてみた。なんせSEIKINも貼ってたし。
入居時に、防災用品や非常食類、簡易トイレなどは人数分揃えていた。だから万が一の場合でも多少はなんとかなるとゆったり構えていたものの、ちょっと不安もあり、ポータブル電源を追加で購入した。ソーラーパネルも欲しかったけれど、「不要になったときの処分に困るから」とみんなに却下された。私は子供の頃にさいとう・たかを先生の『サバイバル』を読んでから、天災への恐怖心があり、備えるとなると一気にいろいろやりたがりすぎる節がある。『サバイバル』では、備蓄食料や装備、そして知識の有無が生存ルートへの鍵なので……。
いざ東京を直撃した当日は、気圧のせいかメンバー全員ペシャンコになっており、さっさと就寝してしまった。
そして翌朝。家そのものには特にダメージがなかったけど、テレビが映らない。
丸山「昨日までは映ってましたよね」
私「台風め、やりおる」
星野「夜中の雨の音すごかったですもんね」
角田「アンテナ確認します?」
外に出て、屋根に設置されたアンテナを見てみるが、折れている様子はない。いずれにしろ素人にはどうにもならない。早々に諦めて業者を呼んだところ、アンテナ線をつないでいるブースターが水没しているとのことで、交換してもらうことになった。台風後で業者も忙しいのか、予定は平日しか空いておらず、在宅フリーランス組の私と丸山さんが対応する。
星野「いつも任せてしまってすみません」
角田「フリーランスって、本当に時間フリーなんだな~って思います」
私「フリーすぎて、仕事が立て込んでいるとき、夜中ずっと起きててスマン」
丸山「我々のことは座敷わらしのような存在と思ってほしい」
私「あるいはオバQとか」