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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

2020.09.30 公開 ポスト

ライブに観劇にコミケにイベントごとで大忙しの年末と全員でゆっくりお雑煮を食べる年始藤谷千明(ライター)

「オタク同士で暮らしたら、絶対楽しそう!」そんな夢を見たことがあるオタクは多いはず。そうではなくても、このコロナ禍、「淋しくて不安」「孤独死したらどうしよう」「でも、異性と一生を約束して暮らすのは面倒!」など、一度は誰かとの生活について考えた、ひとり暮らしの方はいるのではないでしょうか。

先日発売となった『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』の著者、藤谷千明さんは、東京都内の賃貸一軒家(5LDK)でアラフォーのオタク4人で暮らして、約1年半になります。

アラフォーのオタク女子4人は、同居する一軒家でどのような春夏秋冬を過ごしてきたのか。オタクならではの会話が飛び交う、楽しい日常を、本書より一部抜粋してお届けします。第4回目はイベントごとで忙しい冬の出来事です。

*   *   *

ベルメゾンあったかインナー丸カブり事変

季節がめぐり、“ハウス”に再び冬が来た。ここでの生活も、そろそろ1年経つ。気温が下がって肌寒くなってきたので、そろそろ発熱肌着を用意しなくてはならない。私の乾燥肌にはヒートテックが合わないようで、今年はベルメゾンのホットコットを導入してみた。快適なのだが、ひとつ問題が発生した。まったく同じ色、形、サイズのホットコットを角田さんも使っていたのである。わ~、久々のカブりだ。

以前から、ユニクロの服がカブる事態はたまに発生していた。でもサイズや色が違っていて、一瞬間違えそうになっても、あとで気づいて戻していた。それがここにきて、ホットコットはドンカブりである。

角田「ヒートテックならともかく、まさかここでカブるとは」

私「これは神経衰弱待ったなし」

角田「よく見ると、タグの位置がちょっと違いますね」

私「でも人間、洗濯物そんなに見ないからな……」

慌てて色違いを買い直し、事なきを得た。角田さんは黒、私は茶色。カブったホットコットはタンスの奥にしまってある。さらに後日、今度は丸山さんと角田さんが「なんかすごい柄の靴下」をカブらせていて、「そこ、カブるのかよ!」と謎に感心したのであった。

そして師走である。年末はイベントが多い上に、仕事も忙しいのでオタクも走らざるを得ない。星野さんは毎月2回、ソシャゲのイベントを10日間“走って”いるが(大変そう)。

それでも、入居前に約束していたクリスマスツリーは買って飾った。正月飾りも買った。門松は買わなかった。

気分は出してみたものの、クリスマス前後から年末にかけてはライブや観劇、コミケなどのイベントごとでみんなほぼ家を空けていた。全員それぞれの場所で大はしゃぎしていた模様。仕事休みに突入してからは、関東に実家のある星野さんと角田さんは帰省していった。

大晦日、私は自室で仕事をしていた。丸山さんは友人たちと年越しパーリーらしい。この年の大晦日の夜は、すごく強風で荒れていた。外で大きな音がしたと思ったら、玄関先に置いている自転車が全部倒れていた。今の風だと立て直してもまた倒れるので、しばらくは放置して、仕事の続きへ。そうこうしているうちに、紅白も終わって年が明けた。丸山さんが帰ってきたら、一緒に自転車を片付けよう。角田さんと星野さんも、三が日のうちには帰ってくるという。こんなふうに、帰ってくる誰かを待っている暮らしも、悪くはない。

元日の午前中に帰宅した丸山さんと、手分けして自転車を起こす。寒風に吹かれて冷えたので、お風呂に浸かりたい。しかし元日からお風呂掃除なんかしたくない。2人の意見が一致し、近所の銭湯へ向かったのであった。

私「いつも前を通りすぎるだけだったけど、この銭湯は気になっていたんですよね」

丸山「結構年季が入ってますけど、内装はおしゃれやし、我らの判断、『正解』の匂いがする……」

私「若い人がやってる感じがありますな」

丸山「オッ、めっちゃクラフトビールが充実してるやん! やはり大正解!」

正月早々、幸先のいいスタートを切ってしまった。

3日には帰省組も帰ってきて、久しぶりに全員が“ハウス”に揃った。リビングで新春番組を観ながらボンヤリする。

一同「あけましておめでとうございますー」

星野「今年もよろしくお願いしますー」

角田「1年もあっという間でしたね」

丸山「実家から白味噌が届いたんで、関西風お雑煮をつくっちゃおうかなー!」

私「いいですなあ」

星野・角田「食べたことないです!」

関東育ちの2人は、味噌のお雑煮を食べたことがないそうなので、丸山さんも腕によりをかける。私は見てるだけですが。育ってきたお雑煮の味が違っても、人は全然楽しく一緒に暮らせるんだよなぁ、と餅を冷ましながらいただくのであった。

関連書籍

藤谷千明『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』

我が家こそ、沼でした! お金がない、推しのグッズは増える、孤独死は嫌だ! そんなわけでアラフォー女子がはじめた快適ルームシェアの日々。 一生を約束したくはないけれど、淋しいから誰かと暮らしたい、 推しのグッズは増える一方なので広い部屋に住みたい、 節約して将来への不安に備えたい…… 意見の一致したオタク女子4人がルームシェアをすることに! 本名すら知らなかった仲間との生活は、 オタクならではの出来事や会話が飛び交う毎日で、全然キラキラしてないけど、すごく楽しい。 そんな4人が同居に至るまでと、春夏秋冬の暮らしを綴った、ゆるっと日常エッセイ。 〈目次〉 第1章 私は如何にして心配するのを止めてオタクと暮らすことにしたのか 第2章 【メン募】同居人募集・当方オタク、完全ゆるふわ志向。 第3章 春夏秋冬ルームシェアリング! 第4章 ガチャも回すし人生も回す

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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

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藤谷千明 ライター

1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。ルームシェア生活は現在も継続中。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系に通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。Xアカウント:@fjtn_c

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