「オタク同士で暮らしたら、絶対楽しそう!」そんな夢を見たことがあるオタクは多いはず。そうではなくても、このコロナ禍、「淋しくて不安」「孤独死したらどうしよう」「でも、異性と一生を約束して暮らすのは面倒!」など、一度は誰かとの生活について考えた、ひとり暮らしの方はいるのではないでしょうか。
先日発売となった『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』の著者、藤谷千明さんは、東京都内の賃貸一軒家(5LDK)でアラフォーのオタク4人で暮らして、約1年半になります。
アラフォーのオタク女子4人は、同居する一軒家でどのような春夏秋冬を過ごしてきたのか。オタクならではの会話が飛び交う、楽しい日常を、本書より一部抜粋してお届けします。第4回目はイベントごとで忙しい冬の出来事です。
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ベルメゾンあったかインナー丸カブり事変
季節がめぐり、“ハウス”に再び冬が来た。ここでの生活も、そろそろ1年経つ。気温が下がって肌寒くなってきたので、そろそろ発熱肌着を用意しなくてはならない。私の乾燥肌にはヒートテックが合わないようで、今年はベルメゾンのホットコットを導入してみた。快適なのだが、ひとつ問題が発生した。まったく同じ色、形、サイズのホットコットを角田さんも使っていたのである。わ~、久々のカブりだ。
以前から、ユニクロの服がカブる事態はたまに発生していた。でもサイズや色が違っていて、一瞬間違えそうになっても、あとで気づいて戻していた。それがここにきて、ホットコットはドンカブりである。
角田「ヒートテックならともかく、まさかここでカブるとは」
私「これは神経衰弱待ったなし」
角田「よく見ると、タグの位置がちょっと違いますね」
私「でも人間、洗濯物そんなに見ないからな……」
慌てて色違いを買い直し、事なきを得た。角田さんは黒、私は茶色。カブったホットコットはタンスの奥にしまってある。さらに後日、今度は丸山さんと角田さんが「なんかすごい柄の靴下」をカブらせていて、「そこ、カブるのかよ!」と謎に感心したのであった。
そして師走である。年末はイベントが多い上に、仕事も忙しいのでオタクも走らざるを得ない。星野さんは毎月2回、ソシャゲのイベントを10日間“走って”いるが(大変そう)。
それでも、入居前に約束していたクリスマスツリーは買って飾った。正月飾りも買った。門松は買わなかった。
気分は出してみたものの、クリスマス前後から年末にかけてはライブや観劇、コミケなどのイベントごとでみんなほぼ家を空けていた。全員それぞれの場所で大はしゃぎしていた模様。仕事休みに突入してからは、関東に実家のある星野さんと角田さんは帰省していった。
大晦日、私は自室で仕事をしていた。丸山さんは友人たちと年越しパーリーらしい。この年の大晦日の夜は、すごく強風で荒れていた。外で大きな音がしたと思ったら、玄関先に置いている自転車が全部倒れていた。今の風だと立て直してもまた倒れるので、しばらくは放置して、仕事の続きへ。そうこうしているうちに、紅白も終わって年が明けた。丸山さんが帰ってきたら、一緒に自転車を片付けよう。角田さんと星野さんも、三が日のうちには帰ってくるという。こんなふうに、帰ってくる誰かを待っている暮らしも、悪くはない。
元日の午前中に帰宅した丸山さんと、手分けして自転車を起こす。寒風に吹かれて冷えたので、お風呂に浸かりたい。しかし元日からお風呂掃除なんかしたくない。2人の意見が一致し、近所の銭湯へ向かったのであった。
私「いつも前を通りすぎるだけだったけど、この銭湯は気になっていたんですよね」
丸山「結構年季が入ってますけど、内装はおしゃれやし、我らの判断、『正解』の匂いがする……」
私「若い人がやってる感じがありますな」
丸山「オッ、めっちゃクラフトビールが充実してるやん! やはり大正解!」
正月早々、幸先のいいスタートを切ってしまった。
3日には帰省組も帰ってきて、久しぶりに全員が“ハウス”に揃った。リビングで新春番組を観ながらボンヤリする。
一同「あけましておめでとうございますー」
星野「今年もよろしくお願いしますー」
角田「1年もあっという間でしたね」
丸山「実家から白味噌が届いたんで、関西風お雑煮をつくっちゃおうかなー!」
私「いいですなあ」
星野・角田「食べたことないです!」
関東育ちの2人は、味噌のお雑煮を食べたことがないそうなので、丸山さんも腕によりをかける。私は見てるだけですが。育ってきたお雑煮の味が違っても、人は全然楽しく一緒に暮らせるんだよなぁ、と餅を冷ましながらいただくのであった。