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ホームレス消滅

2020.10.20 公開 ポスト

アルミ缶を13時間回収して500円…ホームレスも楽じゃない村田らむ

最近、路上生活者(ホームレス)の姿を見かけなくなったと感じることはないだろうか? 実際、各自治体の対策強化により、ここ10年でおよそ70%も減少したという。『ホームレス消滅』は、そんなホームレスの現状を取材歴20年のライター、村田らむさんが体当たりでレポートした1冊。決して他人ごとではない、彼らの生活のリアルが伝わってくる本書から、印象的なエピソードをいくつか紹介しよう。

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選別、悪臭、賄賂も…アルミ缶回収は過酷な仕事

アルミ缶回収も、実際やってみたことがあり、いかに過酷な仕事か身にしみてわかった。

20時、池袋駅から小さな手押し台車でスタートした。見つけた自動販売機の横にあるゴミ箱に手を突っ込んで集めていく。缶には、少量の缶コーヒーに使われるスチール製と、ある程度多い量に使われるアルミ製の2種類があるので、アルミ製だけ選別して集めなければいけない

ちなみにスチール缶を集めないのは、出張で来る買取業者はスチール缶の買取を原則しておらず、交ざっていると怒られるからだ。金属スクラップの会社に持ち込んでも、スチール缶の買取額はアルミ缶のそれに比べて6分の1ほどと安い。ホームレスでスチール缶を集める人はいない。

(写真:iStock.com/matka_Wariatka)

集めていると、他のホームレスとルートが被ったのか、明らかに誰かが回収した後だったケースもあった。回収ルートをどうするのか、ちゃんと考えなければうまく集められないのだ。

さらに自動販売機の横に設置されている空き缶のゴミ箱は飲み残しなどでビシャビシャになっていることが多い。すぐに袖が濡れ、悪臭を放つ。2時間も働いているとかなり服が汚れた。帰り道を急ぐ人たちの目が、とても痛かった。

空き缶もそのまま運ぶとかさばってたくさん持てない。そのため一つひとつ潰さなければならない。ある程度集めたら人気のない公園に行って、足で踏んで潰していく。しばらく続けると、足がジンジンと痛くなった。

 

以降、集めては潰すを繰り返しながら進んでいく。結局、ゴールの上野公園まで13時間かけて歩いた結果、稼いだお金は500円ほどだった。時給は50円を切った。

慣れればもっと効率はよくなるかもしれないが、それでもとても厳しい売上だ。

「中には、マンションの管理人と仲よくなって、マンションから出る空き缶を全部もらっている人もいるよ。でもタダというわけにはいかないよ。タバコやお酒を渡して機嫌を取らなくちゃいかん

そう教えてくれるホームレスもいたが、ただでさえ少ない実入りなのに、そこから賄賂を渡さなければならないのはつらい。とはいえ、大規模なマンションになれば、そこから出るアルミ缶はかなりの量なので、こういった“取引先”があると安定した収入になるそうだ。

銅はアルミよりもカネになる

ただし、空き缶の回収場所を常に見張っている暇な高齢者もいる。ホームレスが空き缶を取ろうとすると「ちょっとちょっと! 持ってっちゃダメでしょ! 泥棒だよ!」と文句をいってくる。

もちろん、その通りなのだが、延々とホームレスにいちゃもんをつける人もいる。「罵倒された」「蹴られた」と被害を訴えるホームレスもいた。空き缶を盗むのは犯罪だが、暴力を振るうのも犯罪である

(写真:iStock.com/Free art director)

ちなみに、アルミ製であればアルミ缶に限る必要はない。たとえば、アルミ製の自動車のホイールを拾えば、それだけでかなりの重量になる。

金属スクラップの会社では、アルミ以外の金属も買い取ってくれる。銅はキログラム500~800円と、アルミよりずっと高値で取り引きされている。

 

1999年に大阪を訪れた時、サッカースタジアムがある長居公園にたくさんのホームレスが生活していた。テントがズラッと並び、ホームレス村と化していたのだが、2002年のサッカーワールドカップの舞台になることが決まっていたので、彼らの存在が問題になっていた。

そこに住むホームレスの中には、ゴミ捨て場から持ってきたエアコンから銅などの金属を抜き取ってスクラップ会社に売って生計を立てている人が多かった。室外機もあったが、あまり多くはなかった。聞いてみると、人力のホームレスにとって、室外機は非常に重たく、持って帰るのは現実的ではないとのことだった。

公園の中には金属を取った後のプラスチック部のゴミをうずたかく積んだ場所があり、軽トラ1杯分はありそうに見えた。長居公園は一般の人も数多く利用している公園だ。さすがに、やりすぎだったのだろう、それから間もなく彼らは公園から排除された。

銅は買取金額が高いことから、工事現場などに置いてある電線などの銅製品を搔っ払う窃盗団もいる。ホームレスの中にも工事現場に忍び込んで銅線リールを盗んで集めている悪党はいる。

関連書籍

村田らむ『ホームレス消滅』

現在、全国で確認されている路上生活者の数は4555人。年々、各自治体が対策を強化し、ここ10年で7割近くが減少した。救済を求める人がいる一方で、あえて現状の暮らしに留まる人も少なくない。しかし、ついに東京は2024年を目標とした「ゼロ」宣言を、大阪は2025年の万博に向け、日雇い労働者の街・西成を観光客用にリニューアルする計画を発表。忍び寄る"消滅"計画に、彼らはどう立ち向かうのか? ホームレス取材歴20年の著者が、数字だけでは見えない最貧困者たちのプライドや超マイペースな暮らしぶりを徹底レポート。

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ホームレス消滅

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村田らむ

1972年、愛知県名古屋市生まれ。ライター兼イラストレーター、カメラマン。ゴミ屋敷、新興宗教、樹海など、「いったらそこにいる・ある」をテーマとし、ホームレス取材は20年を超える。潜入・体験取材が得意で、著書に『ホームレス大図鑑』(竹書房)、『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)、『樹海考』(晶文社)、丸山ゴンザレスとの共著に『危険地帯潜入調査報告書』(竹書房)がある。最新刊は20年にわたって取材し続け、ホームレスの今後を予測する『ホームレス消滅』(幻冬舎)。

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