引き続き売行き好調な島田裕巳さんの『なぜ八幡神社は日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)。さらに版を重ね、現在、6刷6万5000部までいきました。
本に登場する「最強11神社」って都内でも制覇できるのかな?……ということで始まった幻冬舎plus編集部有志による神社めぐりツアー。第1回では春日、熊野、天神、諏訪、八幡の5つの神社をお参りしました。
第2回では、都内にはあるけれど回り切れなかった神社、都内ではうまく見つけられなかった神社を、別働部隊がお参りし、レポートします。
まずは「出雲」。全国に4225社あるとされ、2番目に多い伊勢信仰。伊勢とは神様の名前ではなく、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る伊勢神宮のある場所をさします。
天照大御神は日本の神々の中心的存在で、皇室の祖先・皇祖神とも言われています。『古事記』『日本書紀』の、天岩戸(あまのいわと)に隠れて世界が暗闇になったというエピソードは有名ですね。天照大御神は、ギリシャ・ローマ神話のアポロンや、エジプト神話のラーに並ぶ、日本の太陽神なんだそうです。
伊勢神宮と言えば式年遷宮。遷宮とは社殿を古いものから新しいものに建て替えて、神様にお移りいただくこと。昨年2013年は20年に一度の遷宮の年にあたり、多くの参拝客が訪れました。写真は幻冬舎plus編集部唯一の20代(す)によるもの。……ですが、新しい社殿でないので、古い写真であることがバレバレですね。すみません……。
出雲大社の社殿の高さは約24m、神楽殿にある注連縄は長さ13m・重さ4.5tと、どこをとっても日本最大級です。ほかの神社と違ってご神体は公開しておらず、神主の出雲国造(いずものこくそう)だけが見ることを許されているとか。祀られているのは大国主神(おおくにぬしのかみ)。「因幡の白兎」や「国つくり」「国譲り」の神話で有名な神様ですが、この神様、ほかに名前が11以上もあるそうです。
遷宮と言えば伊勢神宮の専売特許のように思われていますが、実はほかの神社でも行われています。昨年は、出雲大社にとって60年に一度の遷宮の年でした。伊勢と出雲の両方で遷宮が行われるという、昨年は日本の神社界にとって、とても重要な年だったわけです。写真は幻冬舎plus編集部(あ)によるもの。青年(というにはトウが立ちすぎた?)(あ)の、秋の一人出雲旅。縁結びの神様におすがりしたい心境だったのでしょうか……。
次に「白山」。石川、福井、岐阜の3県にまたがってそびえる白山、標高2702m。白山神社はこの白山をご神体とする神社で、総本社は石川県の白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)です。
写真は都内・文京区にある白山神社。ご近所在住・幻冬舎plus編集長の(た)によるものです。第1回で登場した早稲田の諏訪神社のある辺りはかつては諏訪町と呼ばれていましたが、ここは、いまでも神社にちなんだ「白山」の地名が残っています。
文京区の白山神社と言えば「あじさい祭り」。実は鳩森八幡にあった富士塚がこの白山神社にもあり、6月の「あじさい祭り」の折には公開されるそうです。
続いて「住吉」。住吉信仰の中心はもちろん、大阪は住吉区の住吉大社です。正月の三箇日には、大阪市の人口約270万人に匹敵する数の参拝客が訪れ、ほとんど大阪市民全体の氏神様と言えます。祭神は底筒男命(そこつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)という三柱の海の神様です。
都内では、月島に勧請されている住吉神社。1646年創建と、360年近い歴史を誇ります。江戸時代には漁業の中心的拠点だったこのあたり。いまでも地元住民ほか、水運関係の人々から厚く信仰されています。
参拝者が身を浄めるために手水を使う水盤舎(すいばんしゃ)と陶製扁額(鳥居の上中央の額)は、共に中央区民有形文化財に登録されているそうです。写真はダウンタウン在住・幻冬舎plus編集部の赤フンBOY(や)撮影。
続いて「祗園」。京都の三大祭りと言えば、5月の葵祭、7月の祇園祭、10月の時代祭です。葵祭は下鴨神社と上賀茂神社のお祭り。最も新しい時代祭は平安神宮のお祭り。そして祇園祭を執り行うのが祗園神社こと八坂神社です。
八坂神社と改称されたのは明治以降と比較的新しく、それ以前は、祇園社や天神社、祇園感神院などと呼ばれていました。祭神は牛頭天王(ごずてんのう)、八王子、頗梨采女(はりさいじょ)の三柱。「八坂」の名は、神社を祀った八坂氏の名にちなみます。全国に2299社ある第7位の神社です。
牛頭天王とは、文字通り、頭に牛の頭をいただいた神様です。……とそこまでは理解できたのですが、天神と習合したとか、スサノオノミコトとも習合したとか、朝鮮半島にルーツがあるかもしれないとか、その得体の知れなさは、私たちの説明能力をはるかに超えています。詳しくはどうぞ本のほうでお確かめください。
写真は幻冬舎plus編集部(す)によるものです。
そして最後に「稲荷」です。稲荷神社って狐を祀っているんだよね……と思っている人はいないでしょうか。実は、狐は神様ではなく、神様のお供(眷属と言います)。私たちも今回初めて知って驚きでした。
ではどなたをお祀りしているの?と言えば、これもまた『古事記』にも『日本書紀』にも登場しない、得体の知れない神様。「穀物の神様らしい」ということ以外は、またしても私たちの説明能力を超えています。すみません。
狐と並ぶ稲荷神社のもう一つのシンボルと言えば、赤い鳥居が何本も立ち並ぶ「千本鳥居」。ところがこの鳥居は、神社本来の信仰に因んだものではないそうです。「お塚信仰」という民間土着の信仰によるらしく、しかも、その歴史は比較的浅くて、明治に入ってから盛んになったものとか。
稲荷神社は全国に2970社あると言われますが、これは独立して「稲荷社」を名乗る神社だけをカウントしています。実は神社の境内には、「摂社」や「末社」と呼ばれる小さな祠が祀られていることが多く、ここで圧倒的に多いのが稲荷社、「お稲荷さん」です。実際、今回ツアーをした神社のなかにも、稲荷社が多く祀られており、これも私たちにとっては新発見でした。さらには、移動中に見かけた街中の小さな祠も「稲荷社」だらけ。
こういったものまで含めれば、実は日本で一番多いのは八幡ではなく「稲荷」なんだとか。えーっ、そうなんですか? 島田先生。
……という、本のタイトルを揺るがしかねない衝撃の事実にたどりついたところで、『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』刊行記念・幻冬舎plus編集部有志による神社お参りツアーはお終いです。
本をテキストにして神社めぐりをすることで、決して有名な観光スポットではない神社にもそれぞれ由緒があることがわかり、歴史散歩を楽しめました。そして、街中を歩いていて、「この神社は何だろう?」と気に留めるようになっただけでも、日々のささやかな楽しみが増えた感じです。
神社のことをガッツリ知りたい人から、ゆる散歩派まで、『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』、お勧めです。
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