著書『空気を読んではいけない』がベストセラーとなり、一躍脚光を浴びた総合格闘技世界チャンピオン、青木真也。2017年2月に電子書籍限定でリリースされた『人間白帯 青木真也が嫌われる理由』は、はあちゅう、イケダハヤト、ジェーン・スーとの対談から、本人の独白、さらに担当編集者による裏話まで、彼の魅力をさまざまな角度から掘り下げた作品となっています。「職業=自分」と語る、青木真也流の生き方を綴った本書の一部を、特別にご紹介します。
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なぜ二人は安定を捨てたのか?
――二人とも、安定した会社を辞めて、フリーになって活躍されています。はあちゅうさんは電通を辞めて、青木さんは警官を辞めましたね。
はあちゅう 警官だったということにビックリしました!
青木 死にそうになった。
はあちゅう なんで死にそうだったんですか。
青木 いや、思想教育です。要は、最初の研修で右向け右っていう人間にするわけですよね。それはきつかった。管理されんのが苦手なんですよね。
はあちゅう 苦手そうですよね。
青木 全然ダメ。ぐったりしちゃった。別に何が辛いってわけではないんだけど、みんなと同じことやらされると気が狂いそうになる。
はあちゅう 私もそうかもしれません。電通では、自分が立ち止まっていても生活が成り立っちゃって、何となく見栄えもいいっていうのがすごく窮屈で。
青木 ああ、分かります。それはしんどい。
はあちゅう 会議でも、「あの人何してるんだろう?」って人がやたらといるんです。そのときに、自分は足元から腐るって思っちゃったんですよね。そわそわしました。「人生ってこんな感じに流されていればいいのかな?」って。
青木 自分が「空気」みたいな存在になるのは耐えられないですよね。
はあちゅう そのときに一番悩んでいたのは、「伊藤春香」と「はあちゅう」が結び付かないことだったんです。コピーをどんなに書いても、「はあちゅう」っていうブロガーとしての実績にはならない。「はあちゅう」っていうブロガーとしてブログをたくさん更新すると、今度は「伊藤春香」っていうコピーライターは何やってるんだ、ってなっちゃうんです。「あいつブログなんか更新してる暇があったらコピー書けよ」って思われないかなとか、別に誰も、そんなこと言ってこないんですけど、自分が気にしちゃって。
――電通を辞めたのは、そこが原因だったんですね。
はあちゅう 「はあちゅう」と「伊藤春香」を一致させたいと思ってました。転職先のトレンダーズはそれを認めてくれたんですよ。創業者の経沢さんが、「はあちゅう」という名前を生かして働いてほしいって言ってくれて。
――青木さんも警察官では、「青木真也」として生きれないから、しんどかったんでしょうね。
青木 そう。それしかない。職業「自分」みたいなことですよね。職業「自分」は自由ですし、何してもいいですし。それはいいですよね。
自分の価値は自分で守れ
――フリーになってから何が大きく変わりましたか?
はあちゅう 会社員時代は嫌な相手でも付き合うのが大人だと思ってたんですけど、フリーランスになったらそういう思考が抜けました。
青木 そうですね。我慢して付き合うことの方がマイナスは大きいと思うので。でも俺、我慢して付き合ったことがないね。
――そうですよね(笑)。でも仕事や人を意識して選ばないと、自分がダイレクトに損しますもんね。
はあちゅう そうですね。例えばギャラをなかなか教えてくれないとか、すごい無理難題押し付けてくるとか、痛い目を何回も見てきました。青木さんの本の中に「ギャラを下げるな」って書いてあったんですけど、まさに私もその境地にやっとたどり着けたみたいな感じですね。ギャラを意味なく下げると仕事の価値も下がるし、自分で自分の価値を下げることになりますよね。
青木 はい。僕は海外でも、エージェントつけずにファイトマネーの交渉をしてきたので、面の皮が厚くなってるんです。
――会社が守ってくれないっていうのはでかいですよね。
青木 払ってくんないと、泣くのは自分ですからね。
はあちゅう 本当に後出しが多くて。最近、2時間と聞いて引き受けた仕事が、実際は7時間以上かかりました。こういうことには、ストレスを感じますね……。
青木 後出し多いっすよね。だから、タフに交渉して、自分の価値は自分で守んなきゃいけない。
(2017年2月刊より抜粋)
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