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しない生活

2020.12.25 公開 ポスト

「いい人」をやめよう、嫌なことはキッパリ断ろう…それがブッダの教え小池龍之介

メールの返信が遅いだけで、「嫌われているのでは」と不安になる。友達がほめられただけで、「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。つい私たちは、ちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしがちです。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかご紹介しましょう。

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好意を持たれたいという「煩悩」

「あ、いいよ、いつでも手伝うよ」

「ええ、ぜひ、あなたの展覧会が始まったら見にゆきます。ぜひぜひ」

(写真:iStock.com/SAND555)

いやはや、こういった「安請け合い」をうっかりしてしまうとき、私たちの心の奥に響いている声は、「本当はしたくないんだけどね」というものであります。

そういった場合、本当に手伝いを頼まれたり、展覧会に誘われたりしたとき、困ってしまいますよね。「今は忙しくて、本当は行きたいけれど……」なんて、嘘をついて断る人もいるでしょう。もしくは、断ることができずに、嫌々ながら引き受けて「あーあ……」と後悔する、なんていうことも、筆者にはときどきあります。

共通していますのは「嫌な人間だと思われたくない」という煩悩。すなわち、無意識に「いい人」を演出しようとしてしまう。「いい人」を演じてしまうからこそ、嘘をついてまで相手に媚びつつ断ったり、嫌なのに引き受けたりするのです。

そもそも、どうして「安請け合い」をしたくなってしまうのかと申せば、本気で実行する気はなくても、とりあえず「いい印象」を与えることができるからでしょう。「いい人」の自己イメージを印象づけることで、他者から好意を持たれたい、という煩悩は、多かれ少なかれ、誰もが持っています。

けれども、「行きたいなんて本当は思ってもいないくせに、言葉の軽い人だ」と見抜く人には、むしろ負のイメージと苦痛を与えます。さらに、嘘をつくことは自分の心をモヤモヤさせますし、かといって断れずに引き受けても苦しいもの。

「いい人」をやめて、思い切って素直に断るのが、互いの心の衛生にとって良いこともあるのです。

どちらが得かを迷うのは「損」

たかだか待ち合わせ場所ひとつ決めるだけでも、心が迷いに乱されますと、なかなか決められなくなるもので、私も優柔不断なままに「どこがいいかなぁ」なんて考え、ふっと気づくと十五分くらい経っていた、なんてことがあるものです、トホホー。

(写真:iStock.com/metamorworks)

たとえば、こんな具合。「前回は自分が遠出したので、今度はこちらに来てほしい」「いや待てよ、来てもらうと、おもてなししなければならず、気疲れするから、両者の中間にしよう」「でも、中間の駅周辺に落ち着ける店を知らない。センスのないやつだと思われたらどうしよう」「じゃあ、やっぱり来てもらおう」「いや……」。

このように複数の思考で心が混乱する理由は、私たちが「どの選択肢がより得か」を、計算したがる欲望にあります。けれども問題なのは、こうして考えを堂々めぐりさせるとき、私たちは精神(と時間)を消耗して疲れてしまうということです。

つまり、「どちらが得か」で迷うこと自体、心にとっては損だと申せましょう。迷うのは疲れることだと、うっすらなりとも知っているからこそ、私たちは無尽蔵に選択肢が増えるのを嫌うのではないでしょうか。たとえば、ある商品の風味を十何種類も用意して選べるよりも、二、三種類からさっと決められるほうが人気が出る、というような事例もあるようです。

とは申しましても、優柔不断な私たちは、うっかり迷いに入り込んでしまうもの。そんなとき思い出すとよいのは、迷っているからには、いずれかの選択肢が決定的に優れているわけではないということです。つまり「より得なほう」を選べても、実はたいした差ではない。

「ちっぽけな得を求めて、ケチな欲望に心乱れる卑小な自分なのだなあ」。そう気づいて、「得」じゃなくてもよいからさっと決めてしまいましょう

関連書籍

小池龍之介『しない生活 煩悩を静める108のお稽古』

メールの返信が遅いだけで「嫌われているのでは」と不安になる。友達が誉められただけで「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。人はこのように目の前の現実に勝手に「妄想」をつけくわえ、自分で自分を苦しめるもの。この妄想こそが、仏道の説く「煩悩」です。煩悩に苛まれるとき役に立つのは、立ち止まって自分の内面を丁寧に見つめること。辛さから逃れようとして何か「する」のでなく、ただ内省により心を静める「しない」生活を、ブッダの言葉をひもときながらお稽古しましょう。

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メールの返信が遅いだけで、「嫌われているのでは」と不安になる。友達がほめられただけで、「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。つい私たちは、ちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしがちです。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかご紹介しましょう。

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小池龍之介

1978年生まれ。山口県出身。東京大学教養学部卒業。元僧侶。ウェブサイト「家出空間」主宰。2019年に還俗し、現在は「月読お稽古場」道場主。著書に『しない生活』(幻冬舎新書)、『沈黙入門』『もう、怒らない』(ともに幻冬舎文庫)、『考えない練習』『苦しまない練習』(ともに小学館文庫)、『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『平常心のレッスン』(朝日新書)、『“ありのまま" の自分に気づく』(角川SSC新書)などがある。

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